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シンドラーのエレベーター事故 文化の違い?

日本式にお辞儀して深謝したが。すでに遅きに失したシンドラー

(Keystone)

6月3日、東京都港区の公共住宅で起こったエレベーターの故障による死亡事故が、日本で大きく報道されている。製造元は、ルツェルン州にある人口1万1000人の村エビコンに本社を置くシンドラーだ。

本社から責任者が日本に出向き行った記者会見で、初期の対応が悪かったことをシンドラーも認め、謝罪した。対応、謝罪の仕方などでスイスの企業が日本で起こした「ズレ」とはなんだったのか。

 日本では、スイス企業への不信感がある。ライブドアの資金がスイスの銀行に預けられていた。薬品のチバ・ガイギーのスモン病問題もあった。そして今回、スイスの会社が作ったエレベーターで、死亡事故が起こったといったことが原因だ。

スイスでの事故は?

 昨年から今年5月までに、スイスで起こったエレベーター事故の中で、報道された4件を次に挙げる。いずれも製造社の名前は公表されていない。2005年9月16日、エレベーターの中に2人が閉じ込められたが、救助された。次の日も同じエレベーターで同様の事故が起こった。9月22日、荷物をエレベーターで運んでいた人が、死亡。荷物がエレベーターのシャフトに引っかかったまま下降し続け、ブレーキが利かずに落ちたため起こった。10月6日、22キログラムのセメント袋を工業用エレベーターで運んでいた男性が死亡。セメント袋が作業員に崩れかかり、倒れた作業員とセメント袋の重さでエレベーターの壁が開き、作業員は外に押し出され、転落死した。

 2000年にトゥーン市で起こった事故は、現在も裁判中だ。集合住宅のエレベーターに4階から乗った男性が玄関のある階で降りようとしたが、エレベーターが止まらず、地下室に落下した。男性は背骨を折るなどの重傷。男性は集合住宅の所有者に対し、告訴した。地方裁判所は、エレベーターに不具合はなくメンテナンスも十分で、事故は「避けられないリスク」から起こったものと被告の無罪を言い渡した。このため原告は最高裁判所まで上訴。最高裁判所は2005年5月25日、エレベーターが止まるべきところで止まらなかったのは装置に欠陥があったためと判決を下し、メンテナンスが十分であったか再度調査するよう命じた。ただし製造者に対する訴えはない。

メディアでの取り上げ方

 今回のシンドラーのエレベーター事故に対する当地スイスのメディアでの扱いは控えめである。「日本シンドラーはソーリーと言った」(アールガウ紙)、「シンドラー謝罪」(ノイエ・ルツェルナー・ツァイトゥング紙、ターゲスアンツァイガー紙、ラ・リベルテ紙)、「マネージャーが頭を下げる」(デル・ブント紙)など、主に謝罪したことをニュースとして取り上げている。

 ドイツ語の日刊紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥングはさらに詳しく「シンドラーのイメージは大きく崩れた。こうした事故の際に立ちはだかる問題が2つある。1つは日本では人の生命にかかわる技術については他の国と比べて、非常に厳しく完璧さを求められること。もう1つはグローバル化にあっても依然ある文化の大きな違い。記者会見で頭を下げ日本式に謝罪したことをシンドラーの米国の顧問弁護士は、会社が過ちを認めたことになると戦慄(ホラー)を持って受け止めた」と書いた。

スイス側の事情

 エレベーターでは世界で第2位とはいえ、日本ではまだ、小さい会社。リスクマネージメントが行き渡たらなかったのではないか(スイス経済省関係者)という問題もあるようだ。日本ではメンテナンスの会社を買収するなどして、世界第1位のオッティス社(米)や3位のティーセン社(独)などとの激しい競争の中、日本市場の拡大を狙っている矢先だった。

 事故発生直後、本部のリカルド・ビッフィ広報部長に尋ねたところ「日本のメディアの圧力である」と開口一番。世界ではエレベーターで第2位の大手が、日本市場のシェアーがわずか1%。日本は外国企業に排他的と言わんばかりのコメントだった。

 さらに「メンテナンスの会社はアパートの管理会社と契約しており、シンドラーとは契約していない。しかし、原因を追究し、今後の参考にしたい」とビッフィ氏は言った。調査で責任の所在を見極め、エレベーターの構造上の欠陥があれば、今回の事故から学ぶという態度は理路整然としている。ただ、その理路整然さが、犠牲になった高校生と遺族に対する人間的な思いやりに欠けると、事故直後の日本では、受け止められたのだろう。シンドラー社が日本に進出して50年。これまでの蓄積は役に立たなかったのか。日本市場を重視しているならば、日本の文化、習慣、業界の仕組みなどを今後、再度勉強し直す必要があるようだ。

 また日本も、枠組みだけの市場解放だけではなく、日常の生活の中での異文化に対する理解も必要だ。日本の市場がいまだに外国企業に開放されていないと外国人ビジネスマンの間で言われるが、日本で仕事をする彼らの日常の経験を通しての発言である。

 6月14日、再度シンドラーに問い合わせたところ、ビッフィ氏の代理による電子メールで「今回起こった悲惨な事故について、日本の警視庁による捜査が終了するまで、事故の原因、状況については一切のコメントを控える」との答えが返ってきた。

swissinfo、佐藤夕美(さとうゆうみ)

キーワード

シンドラー ホールディング
創業1874年 
エレベーターでは世界2位
日本には1954年進出。
日本エレベーター社に30%の資本参加。その後、完全買収。
日本でのシェアー約1%、05年売上80億7500万円

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