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スイスにインスピレーションを求める北朝鮮

1年限りの任期を務めるスイスの大統領と対照的な、「永遠の大統領」金日成

(Keystone)

スイスが秘密主義国家から非公式の来訪者を受け入れた。連邦制度を学ぶために、朝鮮民主主義人民共和国 ( 北朝鮮 ) の外交官3人がスイスに10日間滞在した。

フリブール大学の「連邦制度研究所 ( The Institute of Federalism ) 」 が3人の訪問団に対応した。4日間の研修の後、訪問団はスイス国内を旅行し、地元の政治家や州政府関係者と面会した。今回の訪問は3人の帰国後に新聞で報道された。

連邦制度で南北統一

 「彼らは連邦制度の複雑さに確かに驚いていました。すべてが分権化されてはいるものの、非常に効率性の高いシステムであることを理解したのです」
 と訪問団に随行した連邦制度研究所の上級研究者ニコラス・シュミット氏は語った。

 北朝鮮が連邦制度に興味を持っていると聞いて非常に驚く人は多いかもしれない。しかし1948年から1994年の間に最高権力者の地位にあった金日成が、北朝鮮と韓国の体制をそれぞれ維持したまま、連邦制度を用いて両国を統一することを語っていたことをシュミット氏は説明した。
「韓国と北朝鮮の背景があまりにも違うため、彼らはスイスの制度をそのまま持っていくには無理があることを理解しました。そこで彼らは、連邦制度の理念に興味を持ったのです」

 しかしシュミット氏は、異なるのは両国の背景だけではないと指摘する。一般的に、連邦制度は宗教や言語が異なる集団をまとめるために使われる。
「異なる社会経済システムを持った国々に共生をもたらすために連邦制度が使われるとしたら、これは前代未聞です」
 とシュミット氏は語る。

 さらに連邦制度は、まとめるべき集団の数が2つ以上ある方が効果的に機能する。そして連邦国家は法によって統治されなければならない。しかし自分たちが見聞したものからどういう結論を導き出すかは彼ら次第だとシュミット氏は語る。

訪問団の興味

 いずれにせよ、訪問団は連邦制度について明らかに強い興味を持っており、面談を行ったヴァレー/ヴァリス州の警察長官クリスチャン・ヴァロン氏は訪問団に感銘した。
「彼らは組織について非常に細かい質問をしました」

 訪問団にとって最も印象的だったのは、州単位で組織されているスイス警察の分権制のようだ。
「これは明らかに、北朝鮮のように中央集権化された国家にとって、非常に新鮮なものでしょう」

 またシュミット氏は、代表団を受け入れたスイス側が非常にオープンで、今回の出会いに興味を持ち、温かく歓迎してくれたのは驚きだったと語った。

 しかし北朝鮮という国の性質から言って、これは普通の訪問ではない。
「われわれは報道関係者に悩まされることは避けたいと考えていました。訪問団は質問に答えるためにスイスに来たのではありません。そして非常に重要なことは、言いもしなかったことを言ったかのように報道されてはならないことです。さもなければ彼らがピョンヤンに帰ってから問題になります」
 とシュミット氏は説明した。

スイスの協力

 今回の訪問は、連邦外務省開発協力局 ( DEZA/DDC ) による「対北朝鮮協力プログラム」の一環だ。孤立している国が国際社会に融和するための能力を開発することもこのプログラムの重要な一部だ。開発協力局はプログラムの成果を楽観視しており、
「ゆっくりとですが、変化は起きています」
 と開発協力局の広報ゲオルグ・ファラゴ氏は語る。

開発協力局は北朝鮮のために、農業研究、ビジネスの傾向、国際関係などのテーマを扱った講座を1年間にいくつか企画する。
「非常に閉ざされた国にとって、国内外で行われる研修講座は外の世界の様子を教えてくれます」
 とファラゴ氏は説明する。

 ベルン大学の「開発・環境研究所 ( The Centre for Development and Environment ) 」の上級研究科学者ユルク・クラウアー氏は、昨年このプログラムのために北朝鮮の「農業科学アカデミー ( The Academy of Agricultural Science ) 」で講義を行った。同氏の講義は、専門の「ジオプロセッシング」についてだった。衛星を通じて作物の収穫高についての情報を収集し、資源の活用の向上を助けようというものだ。

 しかしクラウワー氏の任務は技術面ばかりではない。重要なのは、同アカデミーの部署同士が情報の交換に慣れ、国際社会との間にネットワークを構築できるよう助けることだ。
「知識の普及に関しての彼らの姿勢はわれわれと全く異なります。彼らは自分たちのコミュニケーションに対する思考態度を変える必要があります」

論議

 スイスの協力が本当に北朝鮮を孤立から引き離し、その姿勢を変えるための基盤となるかどうかは論議の的だ。スイスの議員の中には、北朝鮮に対する協力は資源と時間の無駄と考える人もいる。
「北朝鮮は全体主義の独裁国家で、人権は無視されている。同国の核計画は国際協定を侮辱するものだ。現在同国は『慎重な開放』のサインを示してはいない。協力に賛同する意見が昔は正しかったとしても、もはやそうとは言えない」
 と2008年に提出された議会動議書は主張する。

 開発協力局のプログラムは2011年末に終了する。

swissinfo、ジュリア・スレーター 笠原浩美 ( かさはら ひろみ ) 訳

スイスと北朝鮮

スウェーデンと並びスイスは、朝鮮人民民主共和国 ( 北朝鮮 ) と大韓民国 ( 韓国 ) の休戦協定順守の確認をする監視委員会のメンバーを務める。
1990年代の飢饉 ( ききん) 発生時に、スイスは最初に人道援助を行った数少ない国の1つ。
またスイスは長期開発プログラムに人道援助を提供しているほとんど唯一の援助国。
連邦外務省開発協力局 ( DEZA/DDC ) がプログラムを運営している。
プログラムの多くが農業生産高の向上に向けられているが、北朝鮮を国際社会に融和させることも目的としている。
スイスの連邦制度を学ぶために入国した3人の代表は、北朝鮮の「非武装平和研究所 ( The Institute for Disarmament and Peace ) 」に所属。
北朝鮮への協力は議会から強く非難されてきたが、2011年で終了する。
金正日氏の後継者とみられている三男の金正雲氏は、10代の数年間をベルン郊外の学校で過ごした。

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