国連人権委員会が休会に
3月13日からジュネーブで6週間開催されるはずだった、国連人権委員会は開幕と同時に構成国53カ国が「1週間休会し、3月20日からスタートする」ことに全会一致で決定した。
議長のマヌエル・ロドリゲス・クアドロス・ペルー大使は記者会見で「ニューヨークで今後人権委員会に代わるはずの人権理事会創設の議論が行なわれている最中という特別な状況下、人権委員会の開幕を延期するという決定は矛盾がなく、責任のあるものだ」と説明した。
実際、ニューヨークの国連本部で人権理事会(Human Rights Council)の創設が決まるか否かで第62回国連人権委員会(UN Commission on Human Rights)の議事内容が大きく変わる。もし、創設が決まらなければ現行どおりの議事予定で、1週間短い5週間で行なわれるが、創設が決定された場合は、人権理事会に移行する事務手続きの協議など会議内容が大幅に変わる。このためニューヨークの決定を待たなければ始められない状況に立たされていた。
しかし、今週中に行なわれる協議で理事会創設の成立と不成立の双方のシナリオを含めた議事予定を決めるため「何があっても3月20日の10時から開幕する」とロドリゲス議長。「創設が決まらなかった場合でも我々の使命は遂行します」と強調した。
国連人権委員会の今後
国連人権委員会は日本では北朝鮮批難決議案や、人権状況を審査する特別報告官が北朝鮮の拉致被害者家族を訪問したことで知られている。しかし、近年、各国の人権侵害を糾弾する非難決議案を中国やロシアなどの大国が免れていることや人権侵害国として名高いリビアが議長国になったりしたことで「形骸化」が指摘され、国連のコフィ・アナン事務総長も国連改革の柱においている。
今週中に決着?
現在、人権理事会創設にあたって、ヤン・エリアソン議長が各国間の調整をまとめた議長の最終決議案に米国が反対しているため、国連総会での採決に持ち込めないでいる。このため、13日の開幕までに終了するはずだった採決を延期することに決定した。
インタープレスサービス通信によると、今後の交渉の成り行きはエリアソン議長とアナン事務総長、米国のライス国務長官との闇交渉によるとしている。エリアソン議長によれば、今週中に判決が下るはずだ。
軋轢
米国が人権理事会の構成国の数や選出方法について反対する理由として、将来の人権理事会が国連人権委員会の二の舞を踏むことを危惧している。つまり、人権理事会の構成国に人権侵害国が入ることだ。これと同じ立場をとっているのがUNウオッチ(UN Watch)や国境なき記者団などのNGOだ。
これに反して、多くのNGOがエリアソン議長の決議案を「国連の人権保護制度を強化する良い基礎となる」としてアムネスティー・インターナショナルやヒューマン・ライト・ウォッチなどが支持している。スイスを始め、EU諸国、ラテンアメリカ諸国などもこれを支持している。
スイスは自らが提案した人権理事会の創設がジュネーブでされることを切望している。しかし、人権理事会が創設されなかった場合、人権の首都ジュネーブのイメージにも傷がつくだろうと危惧している。何故なら、国連人権委員会の信用性はすでに失われてしまっているからだ。
swissinfo、フレデリック・ビュルナン、 屋山明乃(ややまあけの)
– 人権理事会創設のアイデアは初めて2004年の3月、スイスのミシュリン・カルミ・レ外相が発表したものでスイスの国際法専門家、ウォルター・ケーリン氏が考案した。
– 国連改革の一環として創設を目指している人権理事会は1946年に創設された国連人権委員会に代わるものとして、ニューヨークの国連本部で話し合いが行なわれている。
– 国連人権委員会の開幕が1週間遅れることで、第62回国連人権委員会の会期は通常の6週間でなく、5週間で行なわれることになる。
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