12月中旬から営業停止が続くスイス国内のレストラン。外食産業は新型コロナウイルスの影響を最も受けた産業の1つだ
Keystone / Alessandro Crinari
スイス連邦内閣は13日、新型コロナウイルス(変異株)の感染拡大を受け、18日から現行の制限措置を強化しセミロックダウンを講じると発表した。生活必需品以外の商店の営業を停止し、在宅勤務を義務付ける。レストラン、スポーツ施設の閉鎖は延長する。
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ギー・パルムラン連邦大統領は同日の会見で、感染力の高い変異株が新たな感染者の急増につながる恐れがあるとして、「(人との)接触を大幅に減らす」ためにこれらの措置を決めたと述べた。
パルムラン氏は「容易な決定ではなかった。だが絶対に必要だ」と強調した。会見にはウエリ・マウラ―財務相とアラン・ベルセ内務相も出席した。
パルムラン氏は感染の第3波を防ぐため、全ての側面からの「更なる努力」の必要性を訴え、「必要なのは共に危機を乗り越えることだ」と政府の政策を批判する人達へ理解を求めた。
セミロックダウンは18日月曜日から、生活必需品以外の商店の営業を停止し、在宅勤務を義務付ける。私的なデモ活動、集会の人数は上限5人とし(子供含む)、職場では適切な対人距離を取っている場合でもマスク着用が必須。営業可能な小売店やキオスク、ガソリンスタンドは夜間・日祝日も営業可能になる。
銀行、美容院、郵便局、携帯電話ショップなどは営業可能だが、午後7時~午前6時は営業停止とする。スキー場は定められた感染予防措置を順守していれば営業できる。
期間は2月末まで
昨年12月に始まった新たな制限措置は1月22日までの予定だったが、政府は現状を鑑み期間を5週間延長し、2月末までとした。既に営業を停止しているレストラン、バー、スポーツ施設も2月末まで閉鎖する。
保健行政を管轄するベルセ内相は「(12月に)措置を強化したが、現時点で(感染者数の)明確な下降傾向はみられない」と理由を語った。1日当たりの新規感染者数は昨年秋に1万人を超え、その後約3千人に落ち着いたが、ここ数週間は横ばいが続く。
ベルセ氏は「対策を講じるかどうかは問題ではない。いつ実施するかだ」とし、今何もしなければ、後でさらに厳しい制限措置が必要になるかもしれないと話した。
政府は、春の第1波の時のような休校措置には踏み切らなかったが、選択肢として除外はしないと述べた。政府は教育を管轄する各州に対し、学校での最善の感染予防措置を講じるよう求めている。
ここ数週間、新規感染者数は減少傾向にある。政府は、英国と南アフリカで最初に報告された非常に感染力の高い変異株を懸念していると述べた。アイルランドや英国では感染者が急増している。初期の試算では、変異株の感染力は通常のものよりも50〜70%高いとされる。
12月20日、スイスは英国と南アフリカからの入国を禁止し、フライトの運航も停止した。政府は11日、山間部のヴェンゲンで感染が急増している問題で、1人の英国人観光客が感染源の可能性があるとして、同地で予定されていたラウバーホルン・スキーワールドカップ(W杯)のダウンヒルスキーレースを取りやめた。
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1月6日、政府は、現行の制限措置を2月末まで延長する提案を発表。州と協議し、13日に最終決定すると述べた。
連邦内務省保健庁は12日、感染者数は横ばいだが、その水準は「高すぎる」とした。1人の感染者から何人にうつるかを示す実効再生産数は1.02となっている。入院者数と死亡者数はわずかに減少したが、集中治療室のベッド占有率は約74%に上っている。
経済支援
政府は13日、制限措置の影響を受ける経済セクターに追加支援を講じると述べた。 政府の措置により、昨年11月1日から少なくとも40日間、営業を停止した企業は困難なケースとみなされる。レストラン、スポーツ施設、店舗がここに含まれる。企業はまた、2021年に売上の損失分を請求できるようになる。
レストラン・ホテル業界は、12月に営業停止措置が始まって以降、さらなる支援を求めている。同セクターの企業団体は10日、国内のホテル・レストラン事業の半数が、即時の財政支援を受けなければ3月末までに倒産すると訴えた。
マウラー財務相によると、レストラン、ホテル、小売部門を中心とした約10万社(見込み)が、緊急財政援助を申請する可能性がある。マウラー氏は援助申請の総額がどれくらいになるかは、まだはっきりしないと語った。
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