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フリーライダー、ひざまでの雪をけ散らして

アラスカで、新たなチャレンジに臨んだペレ氏

「世紀のフリーライドスキーヤー」と呼ばれる、スイスのドミニック・ペレ氏。スポーツマン、ビジネスマン、そしてチャリティー企画者としてのその活躍ぶりを聞いた。

44歳のペレ氏はフリーライドスキーヤーとしては古参の1人。最近、ローザンヌのオリンピック博物館で写真展も開催した。

 ペレ氏はスイスにおよそ30人いる、フリーライダーの1人。ひざまで埋まる雪をけ散らし、崖をジャンプし、キャリアを築き上げてきた。過去20年間、フリーライドスキーとスノーボードはヨーロッパ、アメリカ、日本で大ブームになり、その関係のDVD や映画も大いに売り上げを伸ばした。それは、ペレ氏のようにスポーツ、ビジネス両面で活躍する人に、またとない機会を作った。

Swissinfo : フリーライダーのパイオニアの1人でありながら、過去ずっとトップの座を守り続けてこられました。その秘訣は? 

ペレ : スキーと山に対する情熱のお陰だと思います。それにこのスポーツには人を全身全霊で打ち込ませるところがある。始めた当初は、肉体的な面に力が入りますが、年齢を重ねるにつれ、精神的な面に重きを置き始めます。その結果、過去にやろうとしなかった難しいことができるようになりました。

しかし、ハイレベルのスキー技術を維持することは大切です。そうしないとスポンサーから見放される。そしてまた創造的でなくてはならないと思います。

また、自分に正直であろうとしています。フリーライドスキーは非常に個人主義的なスポーツ。目的は、新雪に自分の滑った跡を残すことですから。山の頂上にグループで行ってみんなで滑るなどということは考えられないことです。

swissinfo : これまでにフリーライドスキーの映画を20本製作し、主演しておられます。しかし、どれも同じように見えますが。

ペレ : どれもスキーに関してですから、同じように見えますが、スタイルは毎回違っています。初期の映画は、スポーツそのものに関してのメッセージを、最近は自由や、実現したい夢に関するメッセージを伝えようとしています。

僕は、誰も足を踏み入れたことがないような場所に行くのが好きです。そして時間を飛び越えたような、美しい写真を使って、このスポーツに対する僕の情熱や、自由さを伝えたいと思っています。

よく音楽に例えるのですが、フリーライドスキーには直感的で即興的なラップ、ジャズ、ロックに似た面があります。これらがきちんと構成されたクラシックと対立するように、フリーライドスキーは普通の競技スキーに対立すると思います。

映画を通じて、僕が行ったところにまた行って欲しいと訴えているのではありません。それはばかげたことですから。ただ人々に視野を広げ、夢を持って欲しいと思っているのです。

swissinfo : フリーライドスキーがブームになって山での事故が増えているのでは?  

ペレ : フリーライドスキーに人気が集まるのは、もっと自由を求めるから。普通のゲレンデでのスキーにうんざりしているのです。

しかし、どこでもいいからと山を「消費」してはいけないと思います。大切なことは、「安全性の感覚と賢さ」です。この2つを手に入れるには時間がかかりますが。

結局、山が安全か否かを決めてくれます。「天候が悪いから、明日か来週来よう、そうでなければ、来年がある」という態度を学ぶことです。お金を使って来たからぜひ滑りたいという態度が事故を引き起こすのです。ほとんどの事故は、本当の自然の危険ではなく、ばかげた行為が引き起こすのです。

swissinfo : 24時間のチャリティーフリーライドスキーを企画されましたが、どのような経緯で実現されたのですか?

ペレ : 対人地雷の犠牲者である子供たちについての放送を、ラジオで聞いてショックを受けました。私にも子供が2人いますので。

150のチームが参加するチャリティーフリーライドスキーは、今年で7回目。過去6回のコンクールで、80万フラン ( 約7800万円 ) を集め、すべてを対人地雷の犠牲者である子供を援助する機関に渡しました。

冬の間中、両足をレジャーに使うスキーヤーたちに、せめて1回の週末を、両足を必要としている子供たちのために提供して欲しいと訴えています。

swissinfo、聞き手 サイモン・ブラッドレイ 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳

ドミニック・ペレ氏のアラスカでの「フリーライドスキー写真展」は、ローザンヌのオリンピック博物館で2007年11月7日から2008年1月19日まで。

2008年の第7回チャリティーフリーライドスキーは、1時間延びて「25時間フリーライド」と呼ばれ、2008年1月19日~20日まで、クシュタード ( Gstaad ) で行われる。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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