アジア発の謎の感染症 、重症急性呼吸器症候群の正体追求にWHOがあと一歩
世界保健機構(WHO)は19日にジュネーブ本部で記者会見を行い、ドイツの研究所がアジア発の感染症の病原体をパラミクソウイルス科の一種だと検出し、香港でも同様の結果が出ているため、世界11箇所の研究所での確認に急いでいると報告した。
19日現在、世界を震撼させているこの重症急性呼吸器症候群(SARS)について香港(150人)、ベトナム(56人)、シンガポール(31)、カナダ(8人)や台湾(3人)などの11カ国から計264人の感染を疑われる患者の報告があり、うち死亡者は9人となっている。この他、中国広東省では305人の感染者、うち5人死亡との報告があるがまだSARSだと断定されていない。
対応
WHOによると、患者は呼吸困難、発熱、咳きなど肺炎に似た症状を現すが抗生物質が効かず、急速に重症化すると呼吸困難に陥り死亡することがある。感染から発症までの潜伏期間は2日から7日とされ、重症患者が回復した例はない。WHOは15日に注意を呼びかけるために「緊急旅行勧告」を発表し、この早い対応が功を帰して「第2次感染」を防ぐことができたと報告。現在、世界9カ国、11箇所の研究所で原因究明に全力を尽くしていると述べた。
中国でのケースとの関連は?
WHOによると正体不明の感染症は昨年の11月に始まり、中国政府からは2月半ばに305人の感染があったと報告を受けたが、以来、新たな数字は分かっていない。国際チームがここ数日で中国に到着する予定で、感染症との関連を研究する。現在のところ、同じ感染症かどうかの確認はされていないものの、地理的、期間的に一致するためその可能性は大きい。
WHOスタッフの感染
北京で働いていたWHOスタッフの医師がベトナムのハノイでの最初のケースに関わり感染し、現在タイで入院しているが状態は安定している。関連性が証明されていない中国以外では隔離政策により感染を抑制する方向に向かっているが、ウイルスが特定されていないためまだ、適切な治療法は分かっていない。
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