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リビア問題  失策の反省



ミシュリン・カルミ・レ外相 (右) 及び2009年のスイス大統領、ハンス・ルドルフ・メルツ前財務相(中央)は、その対応に特に問題があったと指摘された

ミシュリン・カルミ・レ外相 (右) 及び2009年のスイス大統領、ハンス・ルドルフ・メルツ前財務相(中央)は、その対応に特に問題があったと指摘された

(Reuters)

リビアに2年間拘束されていたスイス人の帰国で、今年6月に終止符が打たれたリビア問題。一大外交問題に発展したこの事件に対する政府側の対応を調査していた国民議会の特別委員会が、その結果を12月3日に発表した。

待ちに待たれたレポートには、政府側の対応に問題があったことの指摘や、今後同様な事件が起きた場合に取るべき対応策の勧告などが盛り込まれている。 

事件は2008年に起きた

 事件は2008年7月15日に遡(さかのぼ)る。当時ジュネーブに滞在中のリビアの最高指導者ムアンマル・カダフィ大佐の息子ハニバル・カダフィ氏とその夫人が、使用人の恐喝、傷害罪で州警察に逮捕された。逮捕後2日で夫妻は釈放されたが、リビア側は名誉を傷つけられたとして、直ちにスイスのビジネスマン2人を拘束し、スイスへの石油輸出の停止などの報復措置に出た。

 次いで、リビア側はスイス政府やジュネーブ警察からの謝罪や拘束中のスイス人への保釈金などを要求し一大外交問題に発展。その後問題はますます複雑化し、2009年秋になっても2人のスイス人は帰国できず、スイス側は2010年になって、カダフィ大佐も含むリビアの要人の、シェンゲン協定加盟国内への入国禁止のブラックリストを作成。リビア側もこうした国からのリビアへの入国を拒否した。

 スペインやイタリアなどの仲介もあって、最終的には2010年2月に1人目のスイス人が次いで6月に2人目が無事帰国。事件は発生2年目にしてようやく終止符が打たれた。 

事件後1年たってようやく認識

 今回のレポートは、この2年間にもわたった複雑な外交問題で、特に問題だったのは政府の認識の遅さと、ミシュリン・カルミ・レ外相及び2009年のスイス大統領、ハンス・ルドルフ・メルツ前財務相の対応だったと指摘する。

 閣僚の7人は、事件発生後1年たった2009年夏にようやく、この事件についての詳細を知らされ重要性に気付き始めたという。そのため、拘束されていた2人の釈放に関する政治的レベルでの決定は1年間にわたり一切なかった。レポートは、せめて大統領だけでも、事件後から詳細を知らされているべきだったと批判する。
 
 また、カルミ・レ外相は、スイス人釈放の努力を外務省のスタッフが行っている事実を認識してはいたが、自らが細部にまで立ち入る必要はないと判断していた。これも釈放を長引かせた原因の一つだとレポートは指摘する。

 さらに、2009年8月20日、事態の重大さをようやく理解したメルツ大統領(当時)は、前日の19日に閣僚会議の場でトリポリには行かないと断言しておきながら、翌日に独断でリビアに向かい謝罪。これは、全閣僚に知らせる義務を無視し、合議制の伝統に合致していないとレポートは批判する。 

過ちを繰り返さないため勧告

 こうした指摘に続いて、レポートは今後同じような過ちを繰り返さないためのさまざまな勧告を行っている。

 例えば連邦外務省 ( EDA/DFAE )には、外交特権に関する複雑な問題の場合、誰に、いつ相談するかといったガイドラインを作成すること。政府には、今回のような危機的事件の場合は合議制に基づく対策を立てること。また複数の省にまたがる問題の場合は、各省の分担などを明確に定義すること。さらに大統領をサポートするために、期限決めで外部の専門家を任命すること。問題の担当省 ( 今回は外務省)は、ほかの省やスタッフに十分かつ正しい方法で情報を提供することなどを奨励している。

 また今回、メディアに政策に関するかなりの情報が漏れたことを危惧し、関係担当省は、事件発生後直ちに担当大臣やスタッフなどの間から情報が外部に流れないような処置を取るよう勧告している。また政府は、このための特別対策を取るよう求められている。 

事件の経緯

2008年
7月15日 リビアの最高指導者ムアンマル・ガダフィ大佐の息子ハニバル・ガダフィ氏と妊娠中の夫人がジュネーブで逮捕される。容疑は使用人に対する傷害、恐喝など。
7月17日 逮捕後2日で夫妻は釈放される。
7月19日 リビア政府、2人のスイス人を逮捕。容疑は入国・滞在規範違反。
7月22日 ミシュリン・カルミ・レ外相、電話でリビア政府に抗議。
7月23日 リビア政府、スイスへの石油輸出を停止すると脅す。
7月25日 スイス外務省が2国間関係の「非常事態」と発表。
7月26日 リビア政府がスイス政府に対し、謝罪と今回の事件についての事情説明を要求。
7月28日 スイス、リビア両政府の直接交渉が行われる。
7月29日 保釈金が支払われ、2人のスイス人は解放される。しかし帰国は許可されなかった。
8月13日、ガダフィ大佐の息子ハニバル・ガダフィ氏の使用人2人の弁護士が告訴を取り下げないと発表。
9月2日、使用人2人が告訴を取り下げる。
9月3日、ジュネーブ州の検事総長ダニエル・ザペリ氏が事件に終止符を打つ。

2009年
8月20日 ハンス・ルドルフ・メルツ大統領 トリポリで謝罪。
8月30日 ハニバル・ガダフィ夫妻逮捕事件の合法性を問う裁判の裁判官として、スイスがイギリス人エリザベス・ヴィルムシュースト氏を任命。
9月2日 リビア側はパンナム機爆破事件のリビア側弁護士サアド・ガーバー氏を任命。
9月24日 国連総会でメルツ大統領、ガダフィ大佐と会見。
10月18日 スイス政府は6人の派遣団をトリポリに送るが、拘束者2人は帰国せず。10月20日 この日は2国間の協定で正常化に向けての条件を整える期限日だった。
10月22日 メルツ大統領とカルミ・レ外相は記者会見を行い、リビアに対する非難のトーンを強めた。しかし具体的な問題解決策は提示されなかった。
11 月、軟禁中のスイス人2人が、スイス大使館に保護される。2カ月間スイス人2人の行方が分からなかったことにリビアが説明を行わなかったとして、スイスはリビア人のスイス入国に制限を加えると発表。

2010年
2月15日、最高指導者ムアンマル・カダフィ大佐を含むリビアの要人188人の入国を拒否するブラックリストをスイス側が作成したことに抗議し、リビアはスイスが加盟しているシェンゲン協定に加盟する各国国民のリビアへの入国を拒否すると発表した。
2月22日 人質の1人、ラシド・ハムダニ氏はトリポリのスイス大使館から、チュニジアへ向かい、マックス・ゲルディ氏は4カ月の禁錮を言い渡され、刑務所へ向かったとの報道。
6月14日、ほぼ2年間にわたる拘束後、マックス・ゲルディ氏がスイスに帰国。事件に終止符がうたれた。

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