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国連は短期契約職員を搾取している:ジュネーブの労組が批判

国連の職員搾取か、資金拠出国の国連いじめか Keystone

ジュネーブの労働組合ニューウッズは、国連欧州本部(ジュネーブ)には社会保険など何の保障もない短期契約職員や臨時職員が4000人もいて、国連はこれらの人々を搾取していると批判した。

ジュネーブの国連および各国連機関には、臨時職員または短期契約で働いている人が4000人いる。これは国連欧州本部の職員の25%にあたり、ある国連機関では全職員の40%が短期契約の職員だった。これらの臨時職員は、短期のプロジェクトに従事するため短期契約となっているというが、ニューウッズによると、契約は何度も更新され、これらの人々は「臨時職員」「短期契約職員」の身分のままで長期にわたって国連に拘束されているという。正規職員とちがい、これらの人々は家族をジュネーブに呼び寄せる事もできず、病気やケガの保障もなく、社会保険や失業保障もない。国連正規職員が受けられる家賃補助や学費補助の特典もない。二つの国連機関で働いたことのある女性の証言によると、2週間から11ヵ月の短期契約を14回更新し6年間勤務したという。ジャック・ヴィネ・ニューウッズ代表は、何度も契約を更新し何年も臨時職員の身分に甘んじている人々を「臨時職員」と称すること自体が過ちであると批判し、「ノーベル賞受賞と労働基準・人権侵害を同時に行う国連の驚くべき実態」と告発した。ヴィネ代表は、これらの「長期臨時職員」は、契約が更新されずスイスから国外退去させられるのではないかという恐怖感を常に抱きながら暮らしているという。

雇用問題における驚くべき実態が露呈され、国連および各国連機関は面目まるつぶれだ。世界の労働基準を監査する国際労働機関(ILO)は自機関内の対策に着手し、1年半で短期職員120人から27人にまで削減した。ILOのアラン・ワイルド人事部長は「問題なのは短期契約そのものではなく、長期にわたって契約者が短期契約から抜けだせなくなる『短期契約の侵害』だ。」という。ILOでは短期契約の更新は最長2年までと限定する新規制を導入した。「自らを律さなければILOは労働基準を促進することはできない。」というワイルド部長は、ILOは他の国連機関にも短期契約に対する認識を喚起していくと語った。「短期プロジェクト要員に短期契約を用いることは問題ない。が、正職員を雇用するかわりに臨時職員の短期契約を何度も更新して長期的に拘束するというのは問題だ。」。

国家の枠組を超えた国際機関である国連は、どこの国の労働法規も適用されない。したがって、国連の職員は、各機関が関わるサービスの国際情勢によってのみ保護されている。他の国連機関も、臨時職員問題を認識してはいるが、打開策がないという。「国連予算の40%を拠出しているドナー諸国は我々の人件費に目を光らせている。我々にはどうしようもない。拠出金を断わってポリオワクチン提供を止めるか、拠出金を受けて短期契約職員を雇い人件費を削減するか、どちらを選べばいいのか。」というのは、世界保健機関(WHO)のBaquerot理事だ。WHOでは、夏までに短期契約職員を半減し、残留する短期職員の待遇改善を図るという。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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