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国防省 外国軍のスイス山岳訓練に法規制導入を

アルプス山中で軍の山岳訓練を行う国がいくつかある。国防省では毎年無許可・無申請でやって来る英海兵隊のアルプスでの活動を法的に規制するべきだという動きが出ている。サミュエル・シュミッド国防相は、かねてからスイス国内での外国軍の活動は公式合意協定によって規制するべきだ主張していた。

英海兵隊は70年代末からベルナー・オーバーラントのラウターブルンネンで山岳訓練を行うのが恒例となっている。彼等は非武装・私服で表向きは観光客としてやって来る。スイス国防省は英国から訓練の通知を受けた事は無い。

英国の他ベルギー、米国、オランダがスイス・アルプスで軍の山岳訓練を行っているが、うち国家間で軍の山岳訓練に関する合意協定を締結しているのはベルギーだけだ。米国とオランダはスイス軍の施設を利用するので公式許可を取らなければならないが、英海兵隊は登山、野営、ハイキング、マウンテンバイクなどスポーツをするだけであるとし公式許可申請も免れている。「英海兵隊はスイス軍とは接触せず、一般の観光客と同じ行動しか取らないので公式通知は必要がないと思い、何年もスイス国内で訓練をしてるにも関わらず一度も連絡がないのかもしれない。」とオズワルド・シグ国防省報道官はいう。が、英海兵隊はラウターブルンネンの訓練基地に「Operation Ice Flip」というコードネームまでつけており、この英国のエリート部隊がアルプスでただ休暇を楽しんでいるだけではないのは疑う余地もない。

アルプスでの英海兵隊の山岳訓練の件がスイスTVで報告されてから、スイスの中立政策侵害ではないかという懸念が持ち上がった。紛争当事者である外国の軍隊を永世中立国スイスの国土で訓練させて良いものか?連邦議会国防委員会のヨゼフ・ロイ議長は、英軍がスイスの治安を脅かしたことはなく、騒ぎ立てる必要はないと言う。が、ベルナー・オーバーラントで熟達されたスキルが英軍のアフガニスタン山中におけるアルカイダやタリバン兵士掃討作戦に役立っていることは明白だ。

英海兵隊の前司令官は、スイスでの訓練は9ヵ月の戦闘訓練プログラムの最終段階で、実戦に即した演習であると証言した。スイスTVのリポートによると、今年の訓練兵員は550人で例年の50人の11倍にあたる。が、ベルンの英国大使館は、スイス国内で訓練を行う英国の部隊はIce Flipの海兵隊だけでなくヴェルビエの「Operation White Knight」に行く部隊もあり、総数が550人なのだとswissinfoに語った。

スイス軍筋がswissinfoに語ったところによると、英海兵隊はアドベンチャー・ホリデーを楽しむ民間人と見なされ、いかなる規制や条約の侵害には該当しないという。英国大使館のパトリック・バングハム駐在武官も、演習といっても「民間人のアドベンチャートレーニング」のようなものだという。「確かに軍事訓練の要素を持つものではある。兵士らは高緯度での戦闘スキルを得、そして磨く。が、彼等が民間人だったら、全く同じ事をしてもスポーツ選手と呼ばれるだろう。」とバングハム武官は述べた。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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