スイス・米国、顧客の投資情報の開示めぐる膠着に終止符

スイスの銀行に資産を預ける米顧客の情報共有をめぐり、米国・スイス間の膠着状態に終止符が打たれた。米規制当局は、スイスの金融機関に保管される米国民の資産をより詳細に把握できるようになる。

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この合意は、米国に支店を置くスイス企業に対し米証券取引委員会(SEC)が検査を進めるなかで成立した。小規模資産管理会社から大投資銀行のフォントーベル銀行まで少なくとも8社が検査の対象になっており、スイスで何度か立ち入り検査も実施されたという。

SECは、検査は非公開であり、「(検査の)存在について肯定も否定もしない」と述べた。
フォントーベルはコメントを拒否した。
脱税目的でスイスの口座に資産を隠匿してきた米国顧客に関する情報をめぐり、スイスと米国は長年複雑な関係にある。2013年に情報共有に関する合意に達したが、その後もスイス企業は数十億ドルの罰金を命じられてきた。
SECは10日、米富裕層を対象とするスイスの投資顧問企業の営業申請について、一時停止していた承認手続きを再開すると発表外部リンクした。
事情に詳しい関係者によると、SECが2020年に承認手続きを停止したのは、同社がSECに求められたデータを提供できず、SEC自身の現地での検査能力にも懸念があったためだという。
SECのポール・アトキンス委員長は「これらの申請は長年放置されており、手続きを再開すべき時期はとうに過ぎている。米国資本市場へのアクセス拡大に期待している」と述べた。
SECによると、手続き再開は米・スイス両国の金融規制当局間の交渉の結果だ。新たな合意により、米規制当局はスイス企業の顧客情報を直接入手できることになる。
事態が動いた背景には、ドナルド・トランプ政権のもたらす不確実性が高まるなか、米国内外の富裕層の間で資産をスイスに移したいという需要が急増していることがある。

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スイス企業はこの機をとらえるため、SEC登録済み企業を買収するなど市場参入の方策を模索している。
スイスでの検査は昨年半ばに始まり、年明け後も続いた。関係者の1人は「これほど多数の会社が検査対象となり、場合によっては実際に現地に来て書類を検査するのは異例だ」と語った。
米在住者向けのスイス資産運用業界に詳しいアン・リープゴット氏は「突然の発表に驚いた。SEC認可を受けたスイス資産運用会社に対する検査によって、規制当局が長年求めていた情報を入手できたため、もはや承認を見合わせる必要がなくなったのかもしれない」と語った。
Copyright The Financial Times Limited 2025
英語からの翻訳:ムートゥ朋子、校正:大野瑠衣子

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