新たな紛争と向き合う世界

12日払暁の光の中、黒煙を背景に建つ自由の女神像 Keystone

冷戦終結から10年あまり。民間旅客機をハイジャックして体当たり攻撃をするという米同時多発テロが起きた9月11日は、世界が今まで想像もしなかったような形の紛争に屈服した日となった。連邦工科大学のスピルマン教授に、紛争の変化とこれからの安全保障のあり方についての意見をきいた。

このコンテンツは 2001/09/14 04:51

9月11日にニューヨークとワシントンで起きた事件が世界に浸透するにつれ、人々は「紛争」の体質が変わったことを認識しつつある。防衛問題の権威である連邦工科大学(ETH )チューリッヒのクルト・スピルマン教授は、「現代社会が脆弱であることは認識していたが、今回のようなテロ事件は前例がなかった。これは、現代の武装紛争は、もはや国家間紛争という形を取らないことを示している。」と、世界は新たな脅威への対処に慣れなければならないと語る。スピルマン教授は、今回のテロ事件では、少人数で壊滅的な大打撃を与えた点を指摘し、「少人数でも彼等は自らを犠牲にする覚悟ができていた。そして、強力な兵器を前にした大勢の一般市民は、今回の場合は何千、何万ものアメリカ国民だが、このようなテロリストを前にしてなす術も無い。」という。

スピルマン教授は、人類史上常に想定されていた国家間紛争は、今や我々の安全保障に対する新たな脅威によって取って変わられたという。「実際、15年前にこのような事件が起きたら、人々は世界大戦規模の戦争の始まりだと考えたことだろう。が、今は違う。はっきりしていることは、テロ国家といわれる自らを要塞化した国家にとって、この地球は小さすぎるということだ。我々は集団的安全保障システムを確立しなければならない。彼等に対抗するためには、集団的安全保障か、全く手を打たないかどちらかだ。」。

集団的安全保障の確立への重要な第1歩は、何がテロを鼓舞するのかを探る事だとスピルマン教授は言う。「我々は今まで真剣にテロリスト達の、イスラム原理主義者達の心理を探究したことはない。自己犠牲を顧みないほどの深い憎悪の背後に何があるのか、知る必要がある。」。そして、「テロに脅かされない社会を築くためには、抜本的なの変革が必要だ。」と、テロ防止対策の確立までには長いプロセスが必要なことをスピルマン教授は指摘する。開かれた社会、自由社会の認める移動の自由と言論の自由こそが、まさにテロに対する弱点だ。スピルマン教授は、国家は国民の権利と安全保障強化のバランスを取る必要があると言う。「テロリストは自由社会の弱点を利用している。今後は、自由社会での国民管理の増強を見ることになるだろう。」。

が、米国での大惨事にも関わらず、人々の生活に根本的な変化はないだろうとスピルマン教授はいう。「空港や国境の警戒は、当然強化されるだろう。が、日常生活に大きな変化はないはずだ。我々は開かれた社会を維持したいと思っているし、そうすることが正しいことなのだ。隣国を互いに疑いあうような時代に逆戻りしたいとは、誰も思っていない。」とスピルマン教授は結んだ。

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