報道の自由の未来が今、岐路に立たされている
情報への権利が世界的に揺らいでいるなか、報道の自由をどう守るか。国境なき記者団のティボー・ブルタン事務局長はどう考えるのか。
国境なき記者団(RSF)は数年前から、状況が悪化するさまを見てきた。しかし今の変化は特に憂慮すべきものだ。報道の自由は、メディア関係者に対する残忍な弾圧、国際法の無視、報道機関に対する司法上の嫌がらせによって脅かされているだけではない。世界のあらゆる地域に影響を及ぼしている経済的、技術的、政治的圧力によって、報道の自由は崩壊しつつある。
現在の報道の自由度ランキングによると、今日、人類の半数以上が、メディア関係者が自由に活動できない国々に住んでいる。ヨーロッパとそれ以外の地域との格差は拡大している。しかし、旧大陸の民主主義諸国も、それほど深刻ではないものの似たような混乱を経験しており、同じ傾向をたどっているといえる。このような傾向は簡単に避けられるようなものではないように見える。
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スイスの安全保障とメディアの役割
国境なき医師団は、政治家がメディアを通さずに国民へ直接発信し、記者や報道の信頼性をおとしめる動きが広がっているとして強い懸念を示した。こうした手法は長い間、独裁・抑圧的な政権の常套手段だったが、ドナルド・トランプのような人物たちが政権を握ったことで、報道機関に敵対的なアプローチが広がった。報道の自由が、それを保証すべき者たちによって脅かされているのだ。国境なき記者団の世界報道自由度ランキングの政治分野の指標は2024年に7.6ポイントの低下と、最も大きく低下した。
国境なき記者団は2025年、経済的圧力が報道機関を弱体化させていると指摘した。メディアの寡占が進んでいること、質の低い記事やセンセーショナルな報道に流れやすくなっていること、デジタルプラットフォームへの依存、不透明または不十分な公的補助金の利用などが挙げられる。またジャーナリストの大量解雇と貧困化も問題で、それによって本来の仕事では稼げず、広報などの仕事で収入を補おうとする記者が増えている。
世界のこうした厳しい状況の中で、スイスは比較的例外的な存在のようだ。数年前から国境なき記者団の報道自由度ランキングのトップ 10 入りしているスイスは、多元的なメディア環境、制度への強い信頼、活発な公共空間という恩恵を受けている。しかし、だからといって特定の弱点を覆い隠してはならない。
特に、調査報道を守る法的枠組みが、スイスではまだ完全に整っていない。銀行法47条で規定されている銀行秘密は、特にスイス経済の中心的な経済分野において、公共の利益となる情報の開示を依然妨げている。またスイスの法律では、記事の差し止めを事前に裁判で求めることが可能で、こうした手法が近年、メディアに対して使われるケースが増えている。これはいわゆるSLAPP 訴訟(相手方に対する嫌がらせや第三者への萎縮効果などが第一目的で起こす訴訟のこと)といわれる。
「報道の自由は優先事項の一つであるべき」
スイスのメディアも寡占化の影響を免れることはできない。そのリスクは現実に起きている。メディアの喪失は、多様な政治共同体における意見、声、事実、そして最終的には民主主義の一部そのものの喪失を意味する。この点において、公共メディアに敵対するキャンペーンは、情報の多様性を代表する放送局に深刻な打撃を与える可能性がある。
テクノロジーによって引き起こされた混乱は、報道の自由に対する脅威ともとらえられるべきだ。なぜなら、ソーシャルネットワークや検索エンジンの出現により報道機関の広告収入は大幅に減少し、その認知度も低下しているからだ。人工知能(AI)がジャーナリズムの核心であるコンテンツ制作に影響を与えている今、経営陣や編集部は、これらのテクノロジーの責任ある利用を促進する必要がある。同時に、この進歩を一辺倒に拒否したり、逆に盲目的に支持したりすることも避けなければならない。
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「中立放棄」「まるで戦場」 スイスの偽情報が広まる理由
しかし、報道の自由の支援は単なる国内問題ではない。スイスはその歴史と外交上の存在から、国際的に重要な役割を担っている。ジュネーブは亡命中のジャーナリスト、人権活動家、外交官、国際機関が一堂に会する、世界でも数少ない場所のひとつだ。
スイスは国連人権理事会の開催地であり、国際協力プログラムに資金を提供し、人道支援活動を支援し、情報へのアクセスがしばしば武器となる紛争において仲介役としての立場を確立している。この影響力は最大限に活用されるべきで、報道の自由は優先課題のひとつであるべきだ。スイスの中立性は、決してジャーナリストの運命に対する無関心を意味してきたわけではない。そのことを、スイス連邦に感謝したい。
「私たちはどんな世界に住みたいか?」
なぜなら、報道の自由はスイスに限らず、他のどの国でも当然の権利ではないからだ。それは育み、支え、守られなければならない。つまり、公共の利益となる情報提供を阻害する法律を改正し、メディア資金の透明性と公平性を確保し、ジャーナリズムを搾取するデジタルプラットフォームを規制し、市民とジャーナリスト間の対話を再開する必要がある。
ジャーナリズムが国民に事実の理解を手助けするーー。そうであるとしたら、報道の自由は信頼できる情報を得るすべての人の権利ではないだろうか?
言葉の最も高貴な意味で、極めて政治的なこの問いは、シンプルだ。私たちはどんな世界に生きたいのか?噂が調査に取って代わる世界、事実が意見に貶められる統治不能な社会、メディアが脅迫に屈し、本来統制すべき権力に依存するような世界で生きたいのか?
それとも、誰もが自由に情報にアクセスし、課題を理解し、知識を通して自らを力づけ、自らの意見を形成し、活発な議論に参加し、事実を十分に理解した上で投票できる世界に住みたいか?スイスは、その地位、価値観、そして制度を踏まえ、後者の選択肢を守ることに貢献することができる。もしできないのなら、スイスは多くを得る一方、多くを失うことになるだろう。
この記事は筆者個人の見解であり、スイスインフォの意見を代表するものではありません。
独語からのGoogle翻訳:宇田薫
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