浮かれずに脱皮し続けて スイス時計協会パシュ会長
30数年前、スイスの時計業界は苦渋の底にあった。日本製デジタル時計が世界市場を席巻し、市場シェアが激減したためだ。
その後、「アクセサリー感覚」で腕にする低価格時計、スウォッチの登場でスイスの時計業界は起死回生する。だが、ドル安や偽物流通と、業界には新たな問題が降りかかる。スイス時計協会のジョン・ダニエル・パシュ会長に今後の展望について聞いた。
——2005年はどんな年になりそうですか。
2004年11月の輸出額は過去最高を記録した。2004年の輸出総額も過去最高になるのではないか。それをさらに更新できるかはまだわからないが、2005年もいい年になると期待している。現在のところ、2005年の需要は前年比で6〜7%増えると見ている。
だが、懸念材料もある。まずドル安だ。
スイス時計の輸出市場の大半はアジアも含めてドル建て。ドルが下がったからと言って、為替差損をそのまま商品に転嫁させて価格を上げる訳にもいかないし、頭が痛いところだ。
——業界が直面している模倣品問題についてはどうですか。
スイス製の時計を模倣した偽物はどの市場にも出回るもの。だから、本物で消費者の信頼を獲得し続けることを常に念頭に置いている。この点ではそれなりの成果は出せていると思う。
一方で、こうした偽物流通を少なくするよう業界としての働きかけも大切だ。
大きな問題は偽物流通が加速している中国。当地の関係当局に取締りを強化するよう求めているが、状況が改善するにはさらに時間がかかると見ている。
——時計業界が生き残るには何が必要ですか。
イノベーション(革新)で脱皮し続けることと、市場で何が起きているのか常にアンテナを張っていること。
70年代、80年代に私たちが直面した危機は、当時出現した新技術を事前に察知できず、スイス時計神話にあぐらをかいていたことに起因する。
あの教訓があったからこそ這い上がれたと自負している。
スイスにはたくさんのブランド時計メーカーがあり、互いに切磋琢磨しあっている。こうした健全な自由競争も業界全体にはプラスに働いている。
また、ブランド力に頼るだけではダメで、品質を保ち続け、顧客へのアフターケアサービスも充実させることが大切だ。
swissinfo クリス・ルイス 安達聡子(あだちさとこ)意訳
スイスの時計業界:
70年代に登場した日本製デジタル時計旋風のあおりを受け、スイス製高級時計は市場シェアを大幅に失った。
「アクセサリー感覚」の低価格時計スウォッチの登場でスイスの時計業界は復活する。
スイス時計協会が発表した2004年11月のスイス時計輸出額は100億フラン(約8,900億円)で、月ベースでは過去最高を記録。
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