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米同時多発テロで経済先行き不透明

11日の米同時多発テロで、欧州株式市場はパニック売りとなった。投資家らが比較的安全と見た金と国債にカネが流入したため、金相場と公債は急騰した。

世界最大の金融市場が閉鎖され、経済的な混乱は世界の全市場に波及した。アナリストらによると、米国の最初のダメージ抑制手段は利下げだと見る。「米政府は消費者と企業家の信頼を取り戻さなければならない。そのためには、緊急利下げを行うだろう。」とカントレード・プライベート・バンクの首席エコノミスト、マルクス・アレンスパー氏は言う。アレンスパー氏は、市場も社会も米政府がテロの真相を究明し経済的な混乱にどう対処していくのか明白なメッセージを出す事を期待しており、利下げは一時的な解決策に過ぎないことを強調した。

アレンスパー氏は、経済的な信頼は、11日のテロだけでなく、米国が軍事的報復を取る可能性があることでも失われるという。「あなたが企業家なら、このような場合に最初にすることは、投資、採用、資本計画を棚上げすることだ。事態が政治的に解決されるまで、資本消費は控えられるだろう。」という。

12日、東京市場ではドルが対円1%近く値を戻したものの、アナリストらは、ドル安が続くと見る。「マネーは臆病なものだ。何かこのような事が起こった場合、外国人投資家はすぐに米国から資本を引き上げる。」と住友銀行のカワムラハジメ氏はいう。米同時多発テロの世界経済の影響に関して、多くのアナリストは消費の冷え込みを予測する。「テロは米経済へ大打撃を与えるだろう。メジャーリーグの試合は全てキャンセルされ、ディズニーランドも閉鎖された。消費者心理は落ち込むだろう。」と見るのは、三和銀行ニューヨーク支店のエコノミスト、鈴木トシユキ氏。が、前述のアレンスパー氏は、今回のテロが世界同時不況への幕開けとなるとは思わないという。「石油供給が打撃を受けた90年の湾岸戦争時と今回のテロとでは、大きな違いがある。今回はサウジアラビアが供給増大を確約した。90年は大規模な軍事衝突が行われた。が、今回は戦争に突入する可能性は少ない。」と語る。

各国の中央銀行は、必要ならば金融市場への流動性供給をすると表明している。欧州中央銀行(ECB)はすでに臨時費を放し、スイス国立銀行(SNB)も流動性供給の用意があると表明している。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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