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音楽業界、ネットの違法ファイル交換で提訴、加速化へ

音楽業界による違法ファイル交換の提訴が加速化 swissinfo.ch

CDの売上げが落ち込むなか、音楽業界はそれを、インターネットから曲を無料でダウンロードする違法行為が横行しているせいとして、訴訟や告発に乗り出した。

スイスの現行制度では、著作権法の違反者は10万フラン(約830万円)の罰金、最悪の場合には最長3年間の懲役が科せられるとしている。

音楽業界は、近年のCD販売不振の「元凶」がネット上で音楽ファイルを無料交換しているためという見方に固執している。一方、CDの売れ行きは景気や流行を反映するものだという指摘もあり、「聴き手本位」で売る企業努力が音楽業界に欠けているのではないかという厳しい声もある。

厳しさ増す音楽業界

 国際レコード産業連盟(IFPI, 本部ロンドン)は先月、デンマーク、ドイツ、イタリア、カナダに在住する247人に対して、音楽の違法ファイル交換を行ったとして提訴した。IFPIは他の国においても同様の訴訟を起こす考えだ。

 IFPIはレコード業界の利害を代表する国際団体。IFPIによると、昨年の世界の音楽ソフトの売上高は前年比7.6%減の320億ドル(約3兆4,500億円)となっている。減少は4年連続。スイスでは同15%も落ち込んだ。

 IFPIが訴訟などの強硬手段をとる背景には、違法な無料ファイル交換が音楽業界の経営環境をさらに厳しくしているという見方があるためだ。

 米音楽ソフト販売大手タワーレコードの親会社MTS(カリフォルニア州)は2月に会社更生手続きを申請したほか、英音楽大手のEMIも先月、専属アーティストとの契約打ち切りや、音楽部門で2割に相当する従業員1,500人削減などを柱にするリストラ策を発表している。

対立する意見

 一方、米国の経済学者が公表した音楽の違法ファイル交換と、業界の売上減少との関係を分析した論文が波紋を広げている。

 米国のハーバード大学とノースカロライナ大学の共同研究は、音楽の違法ファイル交換が音楽業界の売上減にほとんど影響が与えていないと報告。売上減少は、音楽ジャンルのバラェティーが減っていることや、レコード会社の戦略に対する消費者の反感が原因だと結論づけている。

 IFPIスイス支部のペーター・フォセラー取締役は、「違法なファイル交換に手を打たなければ、先細りする音楽収入を食い止めることはできず、音楽を生み出す環境が厳しくなれば、結果的に消費者の利益を損なうことにもなる」と反論している。


 スイス国際放送 ラムジィー・ザリフェ   安達聡子(あだちさとこ)意訳

国際レコード産業連盟(IFPI)は先月、音楽の違法ファイル交換を行ったとして欧米各国に在住する247人を提訴。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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