飛行機事故があるたびに、飛行機は一体、どれほど安全なのかという疑問が浮上してくる。専門家の答えは「今も昔も、常に安全」というのだが･･･。

欧州連合（EU）内では飛行機の安全性をチェックするSAFA（Safty Assessment of Foreign Aircraft）プログラムがある。スイスもEUとの協定体制にあり、SAFAプログラムによるチェックを行っている。

8月には大きな飛行機事故が４件発生し、340人が犠牲となった。格安チケットで客を呼び寄せる航空会社も最近多くあり、整備が疎かになってはいないだろうかと心配の声が聞こえる。最近になって危険度は増したように見えるが実は、空運史上でも今ほど安全なことはなかったといってよい。たとえば昨年の空の事故の犠牲者は、450人と記録的に少なかった。

飛行機は引き続き安全

交通手段の中でも飛行機は、最も安全であることに変わりはない。徒歩、自動車、電車、船で移動する方が、実は危険度は高いのだ。ＥＵ諸国では交通事故死亡者数が2004年に初めて5万人を切ったほど、死者数では空の旅とは比較できないほど多い。

連邦民間航空局(BAZL)のアントン・コーラー広報担当官は「近年の飛行機は以前と同じように安全だ。いや、より安全だ。価格競争により激安のフライトが多くなっているものの、安全面がおろそかになっているということはない」と太鼓判を押す。というのも「スイス、ＥＵ、米国のディスカウント･フライト会社も安全面では同じ条件を満たすことが義務付けられているからだ」という。

抜き打ちチェック

8月14日、空調機の故障で気圧が下がったためアテネ付近上空で墜落したキプロスのヘリオス航空についてコーラー氏は「欠陥機ではなかった。SAFAのチェックにも通っている」と言う。SAFAプログラムとは、ＥＵが作ったの飛行機の安全項目に照らし合わせ、欧州諸国内に着陸した飛行機を抜き打ちでチェックするプログラム。スイスでは年間およそ200機がチェックされる。欧州諸国全体では昨年、4500機がチェックの対象となった。

SAFAのほか、スイス独自の安全対策も行われている。これは、機体が登録されている国が責任を持ってチェックするもので、スイスではスイスインターナショナルエアラインズ、バレール、エーデルワイス、ヘルベティックなどのスイスの航空会社のほか、スイス国内で離着陸する飛行機が対象となる。国外機については、その国の許可を受けているか、保険は掛けられているか、また、安全管理体制が敷かれているかといった項目がチェックされる。チェックにパスすると5年間、スイスで離着陸が可能となる。

すべての飛行機がパスするわけではない。現在、18の航空会社が不認可となっており、スイスの空港には立ち寄れない。このようなブラックリストがフランスに続きスイスでも発表された。スイスではフラッシュ・エアラインズ（エジプト）とエア・ヴァン・エアラインズ（アルメニア）の２社が挙げられた。個人情報保護の観点から今まで発表されなかったが、旅客の安全の方が大切だと判断されたためだ。

ＥＵで新しい規定を

欧州航空安全庁（EASA）は航空安全の国際標準化を提言しているほか、ＥＵ域内では、ESASが機体のチェックを、各国に指令として出すシステム作りの方向に動いている。また、飛行機製造会社の監査や大型旅客機を含む新機体の製造許可を出すようにして、米連邦航空局（FAA/Federal Aviation Agency）に対抗できる機関としてのEASAが作り上げられようとしている。

スイスはＥＵに加盟していないため、EASAにも加盟していないが、実は、両者は情報交換などの面で協力体制にあり、運営方針についてスイスの意見も取り入れられており、スイスは加盟国とほぼ同じような待遇となっている。

swissinfo、クリスティアン・ラーアウラウブ 佐藤夕美（さとうゆうみ）意訳

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