スイスのワイン、世界へ売り込め
スイスワインを世界に向けて発信しようと、ワインの造り手が情熱を注いでいる。
ワインの輸入が生産量を上回るスイスでは、自国で生産するワインの大半を国内で消費してしまう。このため、輸出は生産量の1%と少ない。
だが、プロの評価は上々だ。2000年の世界ソムリエコンクールで優勝したフランス人のオリビエ・プシエ氏も「いいスイスワインはフランスのトップクラスといい勝負」と賞賛する。貿易自由化の拡大を背景に、スイスワインの造り手は世界市場を睨んで輸出拡大に力を入れる。
スイスワイン
西スイスのヴァレー州はスイス最大のワイン生産地域。山の急斜面を切り開いたぶどう畑に機械は入らないため、手作業が基本となる。土壌は石灰分を多く含み、古くからのぶどう品種を合わせると52種が栽培されているという。
「地元のぶどう品種を守りつづける頑固一徹なところがいい」とプシエ氏は話す。「ぶどうが持つ本来の個性が際立っていて、メルローはバニラ風味、シャルドネはロースト香というような紋切り型でないのがいいよね」。
同州でワインを造るマリー・テレーズ・シャパさんも力強く頷く。「ワインはぶどうを収穫した地域、その年の天候と、畑の全てを映し出すものですからね」。
ワインの値段も8フラン(約690円)から55フラン(約4,700円)以上と幅広い。「スイスワインは他と比べると、多少割高かもしれない。だけど、フランスの高級ワインのような高値のものは見当たらないよ」とプシエ氏は笑う。
変わる環境
スイス国内のワイン市場を取り巻く環境は大きく変わりつつある。貿易自由化の拡大で国内市場が開放され、フランス産だけでなく、米国や南米など新興国産のおいしくて安い輸入ワインが増えた。
こうした環境の変化は、国内のワインの造り手にはっぱをかける。
フランスを代表するワインガイド「アシェット」2005年版では、190本のスイスワインが選ばれ、そのうち17%は最高の3つ星を獲得した。ワイン王国フランスでも3つ星は選ばれたワインの2%にしかならない。
現状では、スイスワインの年間輸出量は100万リットル程度と生産量の約1%にとどまる。スイスワイナリー協会は、輸出の余地がまだあるとして目標10%を掲げ、輸出を大きなうねりにしたい考えだ。
swissinfo ピエール・フランソワ・ベッソン 安達聡子(あだちさとこ)意訳
ワインの基礎知識:
世界で生産されるワインの量は約300億リットル。
フランスとイタリアが毎年ワイン生産量のトップを争い、生産量は両国あわせて世界の約4割を占める。
チリや南アフリカなど新興国産のワイン生産量は2割程度。
JTI基準に準拠
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