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スイスへの投資を促進 「ロケーション・スイス」

スイスへの投資を呼びかけるには、セミナーやメッセへの参加が不可欠。 Osec

スイスは今、日本の企業に向けてスイスへの投資を促進している。3月からは連邦経済省の管轄にあり国内投資を促進する「ロケーション・スイス」が在東京スイス大使館に新設された。5月末には日本でセミナーも開催される予定である。

スイスが日本にアピールできる面は何か。スイスは何を日本人の企業家に求めるのか。経済省経済管轄局(SECO)は近年、投資セミナーや日本で開催される専門家向けのメッセに参加するなどしてスイスを売り込んでいる。

スイス国立銀行によると2002年における外国からスイスへの資本の流入は総額で45億4,200万フラン(約3,860億円)にのぼった。地域別で見ると、EU諸国から34億6,900万フラン(約2,950億円)の流入、北米からは22億7,800万フラン(約1,936億円)の流入となった。逆に日本については2億5,500万フラン(約216億7,500万円)の資本がスイスから流出した。

ハイテク専門の中小企業へのプロモーション

 経済省経済管轄局(SECO)は、投資パートナーとして最近になって、アジア諸国に目を向けてきた。中でも日本はやっと景気の回復の兆しが現れて有望との判断があり、2年ほど前からスイスへの投資の勧誘活動に力を入れるようになった。SECOのイレンカ・クローネ氏は「日本はいまがちょうど旬。もちろん中国も注目しているが、まだ時期的に早すぎると思う」と語った。
 投資の勧誘はハイテク分野の中小企業をターゲットにしている。スイスに技術や製品のノウハウと雇用をもたらす投資が望ましい。税金の低さだけを理由に税金対策にスイスが利用されるのは好ましくないと考えている。

スイスに進出するメリット

 「『スイスは一般的に労働賃金が高い』と外国企業は思っているが、ローザンヌにある国際経営開発研究所(IMD)の世界競争ランキング見ると、必ずしもそうとは言えない」と前出のクローネ氏は、スイスに対するイメージを払拭しようと、機会があるごとに投資家に説明しているという。スイスの労働生産性(1人1時間あたりの国内総生産)は、34.58米ドルと日本の33.87ドルを上回り、5位である。1位は米国(40.57米ドル)、2位はデンマーク(37.58米ドル)、以下アイルランド、フランスと続く(いずれも2002年の統計)。
 またスイスは、研究開発に力を入れており、特許の数は人口10万人あたり1213.5件とルクセンブルクに次いで2位を誇り、ノーベル賞の物理、化学、心理学、医学部門の受賞も9件あるなど「労働者の質は非常に高い」と同氏。州によって税率は違うものの、一般に税金が低いこともスイスの魅力として挙げられる。
 EUに加盟していないスイスが唯一他のEU諸国に対して不利な点は、会社の役員の過半数がスイスの住むスイス人でなければならないという制限があることである。一方で、日本人の労働ビザが取得されやすいよう、各州の担当局と連絡を密にし、6週間以内には発行されるようSECOの投資誘致部門「ロケーション・スイス」が働きかけるようにしているという。

東京に新設された「ロケーション・スイス」

 東京にあるスイス大使館ではスイスと日本の経済交流を活発にするため、投資の促進を専門に扱う『ロケーション・スイス」を設け、今年3月から新しく、アンドレ・ツィメルマン氏を在日上席代表として招聘した。
 ツィメルマン氏は、スイスと日本の長い通商の歴史を挙げ、「アメリカが日本の最大の経済パートナーかもしれないが、スイスはスイスのやり方を他国に決して押し付けない。双方が同等のレベルで商談ができるパートナーシップがスイスと日本なら作られる」と相互が尊重できる関係が育つと確信しているという。
 5月24日と25日にはそれぞれ東京と大阪で、バイオテクノロジーとナノテクノロジーを専門とする日本の中小企業を対象とした投資セミナーを開催する。10人の講演者のほか、チューリヒ州、ジュネーブ州、バーゼル州など5州から経済促進の担当者も出席するセミナーでは、具体的な商談ができるような工夫がされたセミナーで、サクセスストーリーが生まれることが期待される。

スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

2002年 外国からのスイスへの資本の流入 総額で45億4,200万フラン(約3,860億円)
EU諸国から34億6,900万フランの流入(約2,950億円)
北米から22億7,800万フランの流入(約1,936億円)
日本については、2億5,500万フラン(約216億7,500万円)がスイスから撤退している。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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