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「世界一安全な通貨スイスフラン」神話に変化

スイスフランは世界一安全な通貨とされ、有事には買いが殺到した。が、ここ数年、マネーの緊急避難地としてのスイスフランの役割は減少していると、スイス国立銀行総裁はいう。

「かつてスイスフランは緊急避難通貨と見なされて来た。が、昨年9月の米同時多発テロ事件や、現行の中東情勢緊迫下の金融市場の動向を見るに、スイスフランの緊急避難地としての役割は数年前と比べて明らかに限定されてる。これは、スイスフランの米ドルやユーロなど主要通貨との為替レートが安定するということで、スイス経済にとっては望ましい。」と、ジャン=ピエール・ロート・スイス国立銀行(SNB)総裁はいう。ロート総裁は、スイスの外為市場では米ドルとユーロの2つが主要通貨だという。「スイスフランの市場は大変小さい。だから、もし手持ちのポートフォリオの再調整をしたかったり米ドルのリスクを振り分けたい場合には、ユーロに行く以外に手がない。スイスフランは、欧州通貨統合がまだ現実のものでなく市場が発展していなかった昔ほど、魅力のある通貨ではなくなった。」。またロート総裁は、SNBは今後スイスフランが急騰した際には、過去と同じように金利調整で対処すると語った。

さらにロート総裁は、現在SNBは、輸出業者からスイスフランの対ユーロ高を引き下げる何らかの手段を取るよう要請されているが、物価安定を最優先とする政策を続けて行くと次のように述べた。「外為市場安定のための短期的金融政策は、長期的な物価安定政策を犠牲にするものだ。そのような政策を取ることはできない。もちろん金融政策決定には外為市場も考慮している。が、短期的にスイス経済の競争力を人為的に強化するための外為操作はできない。」。

国内には、スイスフランとユーロのペグ制度導入を求める意見が強い。が、ロート総裁は、ペグ制はスイス経済の弱体化につながると否定的だ。「理想的な為替レートは、多くの要因に基づいて決まり常に変化する。スイスとユーロ圏のインフレ格差にもよる。スイスはユーロ圏よりもインフレ立が低い。」。さらに、固定為替相場は、スイスの金利をユーロ圏の水準まで約1.5%引き上げることになり、スイス経済の負担が大きくなるという。

ロート総裁は、2002年のスイスの経済成長率は約1%と予測する。「SNBではスイス経済は今年中に正常化し、物価安定とともに上昇するだろうと予測している。」とロート総裁は述べた。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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