スイスの政治

2020年9月のスイス国民投票 5つの案件

新型コロナウイルス危機後初となる2020年9月27日の国民投票は、重要なテーマが満載だ。戦闘機購入から父親の育休など5件の提案の是非が問われる。

このコンテンツは 2020/09/19 06:00
Corinna Staffe (イラスト)

国民投票にかけられる提案は、父親の育児休業、戦闘機、「穏健な移民政策のためのイニシアチブ(国民発議)」、狩猟法改正、子育て世帯への税控除の5件。移民制限イニシアチブ、狩猟法改正、子育て世帯への税控除は、5月17日の国民投票にかけられる予定だったが、コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のため、政府が実施を延期した。

最も注目されている案件は、別名「制限イニシアチブ」とも呼ばれる「穏健な移民政策のためのイニシアチブ」だ。可決されれば、移民政策の方向性が根本的に変わることになる。保守系右派・国民党(SVP)が提起したイニシアチブは、欧州連合(EU)との間で結んだ人の自由な移動に関する協定の破棄を求めている。

国外の注目を集めるもう1つの案件は、スイス空軍の新しい戦闘機購入計画だ。政府と議会が承認した計60億フラン(約6600億円)の計画に対し、平和主義・左派勢力が反対。必要な署名を集めレファレンダムを提起し、国民投票に持ち込んだ。最終的な判断は有権者にゆだねられた。

入札しているのはフランスの会社ダッソー(ラファール)、欧州のエアバス(ユーロファイター)、米ボーイング(F/A-18・スーパーホーネット)、ロッキード・マーティン(F-35A)の4社。国際的な注目を集めているのは、国外の企業が参入しているためだ。

3つ目は、時代遅れとも揶揄されるスイスの家族政策についてだ。国民投票では、父親の2週間の育児休業導入を認めるかどうかを有権者が判断する。スイスには父親の育児休業を保障する法律が存在せず、こうした国は欧州でも極めて少ない。多くの父親が実質的に取ることができる育児休業は、子供が生まれたときの1日だけだ。

子育て世帯の税控除引き上げについても是非が問われる。連邦議会では中産階級政党の過半数が、子育て世代と中産階級に利益をもたらすとして、この政府案を支持した。一方、これに反対する左派政党がレファレンダムを提起し、国民投票に持ち込んだ。反対派は、同法案では高額所得者、つまり税控除をそもそも必要としない人にしか利益が及ばないと主張する。

スイスに生息するオオカミは一部の国民に不安を与え、スイス議会でもここ最近、活発に議論が行われている。国民投票では、狩猟法を改正し、オオカミなどの捕食者駆除に対する条件緩和をすべきか否かが問われる。法改正の支持派は住民の安全向上につながると訴えるが、反対派は種の保護に脅威をもたらすと反論している。


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