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スイスの資金洗浄対策、問題点を専門家が指摘

スイス反資金洗浄法の改正は犯罪者にとって恐れるほどのものではないと専門家のカティア・ヴィラーさんは指摘する © Keystone / Christian Beutler

スイス連邦議会は、金融犯罪について新たに弁護士の責任を問う反資金洗浄法の改正案を否決した。議員は法改正を骨抜きにしてしまったと銀行法金融法の専門家カティア・ヴィラーさんは嘆く。

このコンテンツは 2021/03/17 07:00

反資金洗浄法の改正によって、スイスは国際基準を満たすはずだった。しかし、長年にわたる議論の結果、連邦議会が10日に最終合意した改正法は国際的な要求に応えていない。

カティア・ヴィラーさん。法学博士。ジュネーブ大学銀行金融法センター講師、同大学非常勤講師 Jorg Brockmann

マネーロンダリング(資金洗浄)などを監視する国際機関、金融活動作業部会(FATF)は2005年他のサイトへにはすでに、弁護士や財務顧問を法律で規制するようスイスに勧告していた。しかし、16年経った今でも、連邦議会の議員は、連邦政府が提案した法整備を拒否し続けている。

確かに改正法は規制を強化する。銀行などの金融仲介機関に、顧客の本人確認、給付の書類による裏付け、給付の背景と目的の明確化が義務付けられる。また、情報は定期的に検査されなければならない。それにもかかわらず、連邦議会は現行の実務を確認したに過ぎないと嘆くのは、ジュネーブ大学銀行金融法センター他のサイトへの講師で同大学非常勤講師のカティア・ヴィラー他のサイトへさんだ。

swissinfo.ch:弁護士や税務顧問が反資金洗浄法の適用対象から外れたことで、同法の有効性は損なわれるか?

カティア・ヴィラー:実際のところ、(法制度の)不備だ。国際的にはだいぶ前に補完された。連邦政府の改正案が反資金洗浄法で規制しようとした居住法人(スイスで管理業務のみを行う法人)の設立や管理に関する活動は、資金洗浄の恐れがあるとみなされた。このような活動が法律で規制されないのはおかしい。

「この法改正は大騒ぎしたわりには成果が小さかった」
カティア・ヴィラー、ジュネーブ大学銀行金融法センター講師・同大学非常勤講師

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swissinfo.ch:連邦議会が可決した法改正には他にも欠陥があるか?

ヴィラー:貴金属取引業者の条件の厳格化についても連邦議会は否決した。政府案は、反資金洗浄法の規制対象とはならない現金決済額の上限を現行の10万フラン(約1174万円)から1万5千フランに引き下げようとしていた。これは欧州連合(EU)とほぼ同じ水準だ。

ところが連邦議会は現状維持を選んだ。しかし、今時、金塊を買うためにこれほど高額の金銭を持ち歩く人はいないと思う。それに、議員らが自説に固執する理由が分からない。

swissinfo.ch:結果的に反資金洗浄法は議論の中でかなり緩和された。それでも、スイスの資金洗浄対策は強化されるのか?

ヴィラー:そうとも言えない。この法改正は大騒ぎしたわりには成果が小さかった。承認された修正はすでに行われている慣行を法律に規定するだけだ。唯一の基本的な改善点は、慈善・宗教・文化・社会上の目的で、外国で資金を集めたり分配したりする団体に関することだ。これらの団体にはより一層の透明性が義務付けられる。ただし、これは周辺事項に過ぎない。

swissinfo.ch:スイスに勧告を出した金融活動作業部会(FATF)をはじめとする国際的アクターは、改善要求を繰り返すだろうか?

ヴィラー:国際社会は引き続き居住法人の設立と管理に関する活動を法律で規制するよう要求してくるだろう。議員は計算を誤ったと思う。スイスにとって交渉の余地がより一層少なくなった時点で、資金洗浄対策は可決されることになるだろう。だから、将来採択される改正法は政府案より厳格になる可能性がある。そもそも、スイスが資金洗浄対策を否決し、少し後になって可決せざるを得なくなるというパターンは初めてのことではないはずだ。

swissinfo.ch:スイスの金融市場を巻き込んだ資金洗浄の新たなスキャンダルの予感を感じるか?

ヴィラー:残念ながら、これからもスキャンダルは起きるし、スイスに限ったことではない。あらゆる主要な金融市場が資金洗浄の危険にさらされている。新しい事件が発覚するたびに、どうして事件は起きたのかと考えるだろう。何よりも問題なのは、スイスが外国に発信している「資金洗浄との戦いにおいて、根拠の無い理由に基づく法律の厳格化にスイスは断固反対する」というメッセージだ。これは短期的な政策でしかない。いずれ問題は再燃する。

swissinfo.ch:スイスの反資金洗浄法制を改善するうえで、手本にすべき国はあるか?

ヴィラー:EUの指針は非常に詳細だ。しかし、政府案も均整がよく取れていた。政府案は有効なツールになったはずだ。しかし、問題は法整備だけではない。法律の適用にも問題がある。例えば、ブラジルのペトロブラスを巡る不正事件では法的手段はあったが、正しく適用されなかった。十分に注意が払われなかった。見て見ぬふりをしたのかもしれない。

(仏語からの翻訳・江藤真理)

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