19日、ベルンで開かれたデモ集会の参加者。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がオンラインで演説した
© Keystone / Peter Klaunzer
スイスの首都ベルンで19日、ウクライナでの戦争に反対するデモ集会があり、数千人が参加した。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がキエフからライブストリーミングで演説した。
このコンテンツが公開されたのは、
反戦デモ集会「ウクライナと連帯し、今すぐ戦争を止めろ!(Solidarity with Ukraine, Stop the War Now!)」にはスイスのイグナツィオ・カシス連邦大統領も参加した。
ゼレンスキー氏は、スイスがロシアの新興財閥(オリガルヒ)により厳しく対応するよう求めた。オリガルヒが戦争で自国に加担しながらスイスの「美しい場所」で不動産を所有し、のうのうと暮らしていると非難。「これらの特権を彼らから奪うのは公平なことだろう」と訴えた。
ゼレンスキー氏はこれまでスイスを何度も訪れ、その生活水準の高さと自由に感銘を受けたと振り返り、「ウクライナ人にもスイス人のような生活をしてほしいと思っている」と述べた。更に「この悪との戦いの中で、あなたたちもウクライナ人のようになってほしい。そうすれば銀行に関する疑念がなくなる。あなたがたの銀行、この戦争を始めた人々全員の資金が保管されている場所だ」と語った。
同氏はまた「これは苦痛を伴い、困難なことだ」とした上で「これは悪との戦いでもある。彼らのすべての資産と口座を凍結することが必要だ。大きな戦いだが、あなたたちにはそれができる」と呼び掛けた。
中立の伝統を堅持するスイスは欧州連合(EU)に加盟していないが、スイス連邦政府はEUの対ロシア制裁措置を全て踏襲した。
ロイター通信によると、スイス国内の銀行が保有するロシア人顧客の資産は総額2千億フラン(約25兆円)に上ることがスイス銀行協会(SBA)の資産で分かっている。
>ロシア人顧客、スイスの銀行に最大2千億フランの保有資産
このほか、ゼレンスキー氏は「子供たちが殺されているにもかかわらず」スイスの食品大手ネスレがロシア撤退を拒んでいることや、「核の脅迫」を含むロシア政府の欧州への威嚇(いかく)行為を非難した。
「we are one」
ゼレンスキー氏の演説に先立ち、駐スイス・ウクライナ大使がウクライナ人の窮状に対するスイス・欧州諸国の幅広い支援に感謝の意を伝えた。
また、現地にいる自国民や難民への支援活動にも触れ「私たちは1つ(we are one)」と強調した。
その後、ゼレンスキー氏の声がスピーカーから聞こえてくると、デモ参加者から「we are one」の声が上がった。
平和と自由を夢見る
集会に出席したカシス大統領は「親愛なるウォロディミル、これだけ多くの人々が、あなたの国民が孤独でないことを示しにきた。ここにはスイス人、世界各国の人々、そして多くのウクライナ人がいる」と呼び掛けた。またウクライナ人に対する発言の中で「あなたたちを歓迎する」と語った。
カシス氏は更に「私たちは、皆さんが民主主義、自由、平和のために戦う勇気に感銘を受けている。私たちは皆、皆さんがロシアに対抗するために団結していることにも感銘を受けている。しかし何よりも、自由という基本的価値観を守る皆さんの姿に感動している。自由は私たちの基本的価値観でもある」と語った。
それに対しゼレンスキー氏は流ちょうなドイツ語で、スイス国民に向け「私たちの自由と平和のための戦いを支援してくれていることに感謝する」と語った。
「スイスのように、幸福に、平和に、自由に暮らせるようになることが私たち全員の夢だ。あなた方にとっては当たり前のことだが、私たちはこれを成し遂げるために戦わなければならない。私たちはこの道を歩んでいたが、2月24日を機に全てが変わった。私たちウクライナ人にとってだけではない。欧州全体にとっても、だ」
(英語からの翻訳・編集 大野瑠衣子)
おすすめの記事
見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。
もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
おすすめの記事
ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
このコンテンツが公開されたのは、
英国と大陸欧州をつなぐ高速鉄道ユーロスターは、スイス・ジュネーブとロンドンを結ぶ初の直通列車の運行を計画している。
もっと読む ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
おすすめの記事
スイス政府、金融規制改革の最終案を発表
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦内閣は6日、クレディ・スイス危機を踏まえた金融規制改革の最終案を発表した。自己資本規制を強化し、金融監督局の権限も強化する。
もっと読む スイス政府、金融規制改革の最終案を発表
おすすめの記事
スイスの元外交官50人、ガザめぐる政府の「沈黙」を非難
このコンテンツが公開されたのは、
パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルの「戦争犯罪」に関して、スイスの元外交官55人がスイス外相に共同書簡を送り、スイスの「沈黙と消極性」を非難した。政府に対して直ちに措置を講じるよう求めた。
もっと読む スイスの元外交官50人、ガザめぐる政府の「沈黙」を非難
おすすめの記事
スイスで放射能測定の合同演習
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは2~6日、国際チームがヘリコプターで空中の放射能測定を行っている。緊急時に広い範囲の放射能を迅速にチェックする予行演習だ。
もっと読む スイスで放射能測定の合同演習
おすすめの記事
自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が死亡
このコンテンツが公開されたのは、
自殺カプセル「サルコ」を運営する自殺ほう助団体「ラストリゾート」共同設立者のフロリアン・ウィレ氏(47)が、先月5日にドイツで死去していたことが分かった。
もっと読む 自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が死亡
おすすめの記事
スイス南部で氷河が崩壊 土石流がふもとの村を飲み込む
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部レッチェンタール(ヴァレー州)で28日午後、大きな氷河が崩壊し、大規模な土砂崩れがふもとのブラッテン村を襲った。多数の家屋が倒壊し、1人が行方不明。
もっと読む スイス南部で氷河が崩壊 土石流がふもとの村を飲み込む
おすすめの記事
クレディ・スイス株で大損した株主、政府への賠償請求認められず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦最高裁判所は23日、スイス政府の「誤った情報」によりクレディ・スイス株で損失を被ったとして損害賠償を求めた夫婦の訴えを棄却した。
もっと読む クレディ・スイス株で大損した株主、政府への賠償請求認められず
おすすめの記事
移動式ホール「アーク・ノヴァ」がスイスに初帰国
このコンテンツが公開されたのは、
東日本大震災の被災者を勇気づけようと建設された移動式コンサートホール「アーク・ノヴァ」がこの秋、親元のスイスに初めて登場する。
もっと読む 移動式ホール「アーク・ノヴァ」がスイスに初帰国
おすすめの記事
スイス、メートル法準拠から150年
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは150年前にメートル条約に調印し、メートルやキログラムを導入した。それまでスイスの測定単位は地域や使途によって大きく異なっていた。
もっと読む スイス、メートル法準拠から150年
続きを読む
おすすめの記事
スイス、対ロ制裁対象を拡大
このコンテンツが公開されたのは、
ウクライナでの戦争を受け、スイス連邦政府は16日、ロシアの個人や企業・団体に対する制裁対象を拡大したと発表した。
もっと読む スイス、対ロ制裁対象を拡大
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。