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スイスはロシアに制裁を与えるか?

Mann mit Schusswaffe
2022年2月19日、ウクライナの首都キエフで行われた訓練で市民に銃の使い方を指南するジョージアの義勇軍 Copyright 2022 The Associated Press. All Rights Reserved.

スイスは24日、ロシアのウクライナ侵攻を受け、欧州連合(EU)によるロシア人の資産凍結にスイスも追随すると決めた。だが「紛争当事国の仲介役」としての役割を重視するスイスが、今までの様子見姿勢から一歩踏み出して独自の制裁を発動することはあるのだろうか?

西側諸国はウクライナに侵攻したロシアを一斉に非難した。欧州連合(EU)はロシアに対し新たな制裁を発動。ドイツのオラフ・ショルツ首相はパイプライン「ノルドストリーム2」計画の停止を発表した。国連はロシアのウクライナ東部への派兵を国連憲章違反だと非難し、25日には安全保障理事会を開いて非難決議を採択する方針だ。

スイス連邦外務省はウクライナの親ロ派が占拠するルガンスク州・ドネツク州一帯の独立をロシアが一方的に承認したことを糾弾する。ロシアの行動は国際法違反だとして、スイスはロシア大使を召喚した。

だがスイスはロシアに対する独自の制裁に踏み込むのだろうか?スイスは2014年のクリミア併合も非難したが、対ロ制裁には加わらなかった。連邦内閣はその理由として、仲介役としての立場を傷つけたくないと説明した。スイスは当時、欧州安全保障協力機構(OSCE)の議長を務めていた。

今回は状況が異なる。米国のアントニー・ブリンケン外務相とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は24日にジュネーブで改めて会談を行う予定だったが、フランスが米ロ会談を両国に提案。スイスはお株を奪われた形になった。

可能だが義務ではない

法律上は次のような整理になる。スイスは禁輸法上、制裁に参加できるが義務ではない。制裁発動の決定権は連邦内閣にある。スイスの利益を守るため、制裁に参加しないと決定することもできる。EUの制裁にも、非加盟国であるスイスに参加義務はなく、自主的な判断となる。

例外が1つだけある。スイスは02年の国連加盟以来、国連安全保障理事会の制裁決議は実行する義務がある。だがロシアは安保理の常任理事国として拒否権を持っているため、今回は国連が制裁を加えることはない。

ノルドストリーム2の運営会社は、ツーク州に本拠がある。パイプラインの禁止は、同社の経営に打撃を与える可能性がある。ただドイツは今のところ認証を停止しているにとどまる。

だが米欧の制裁を回避する迂回地としてスイスが悪用されないよう、スイスが何らかの措置を講じることも想定される。2014年にも取られたこうした措置は、政治的主張に等しい経済制裁よりも控えめだ。

連邦内閣は24日、スイスは渡航・金融分野で欧州連合(EU)の制裁を支援すると発表した。独自の制裁は当面見送る方針だ。

銀行口座の凍結?

英国人のロシア専門家ティム・テイラー氏によると、ロシア諜報機関の局長やウラジーミル・プーチン大統領の警備員など「クレムリン(ロシア政府)や(新興財閥の)オリガルヒ、およびその盟友を最も激しく攻撃」する制裁が最も効果的だ。

スイスがこうした戦略を取るとすれば、「スイスにあるロシアの大手銀行・金融機関に対する制裁措置」を検討する必要がある。法的根拠さえあれば、なかでも「プーチン氏や閣僚、支援者、オリガルヒ」の資産を凍結することだ。テイラー氏はロシアの大企業への制裁も効果的だとみる。

特にスイスの資源企業はロシアのロシアと強く結びついている。トラフィグラとヴィトルはロシアの国営石油企業ロスネフチのプロジェクトに参画し、同2社やガンバーはロシア産石油貿易に関わっている。

ただしテイラー氏は「スイスのいかなる制裁に対してもロシア政府が報復してくる」ことは明白だと忠告する。

Leandra Bias
政治学者のレアンドラ・ビアス氏はオックスフォード大学でロシア・東欧学を学び、「権威主義体制におけるフェミニスト批評の(不可能な)可能性」の研究で博士号を取得。スイス平和財団「スイス・ピース」でジェンダーを担当する。 (c) Fotograf – Pestuka Productionstudio

swissinfo.chは24日の連邦内閣の決定に先立って、スイス平和財団「スイス・ピース」の政治学者レアンドラ・ビアス氏に問題点を聞いた。

swissinfo.ch:スイスはいつものようにEUの出方を見守っている。

レアンドラ・ビアス:少なくともスイスはすぐに声明を発表した。これは他の事例より強い行動だ。だがそれ以外に驚くことは少ない。スイスは依然として独自の制裁を課していない。連邦内閣がその気になれば法律的には可能なことだが、中立国という立場上、できるだけ様子見する構えだ。それは仲介役としての役割を確実に引き受ける態勢を整えておくため。それがスイスの付加価値だからだ。

swissinfo.ch:しかし今回はフランスが仲介役の立場を奪った。

ビアス:現時点ではフランスがこの役割を果たしているとは言えない。マクロン大統領は24日のブリンケン外相とラブロフ外相の会談(中止となった)を設け、オラフ・ショルツ独首相がジョー・バイデン米大統領と米国で会談したように、ロシアを訪問してプーチン氏と会談した。フランスはドイツとともにウクライナとロシアを同じ席に着かせた四者会談「ノルマンディー・フォーマット」の一員として重要だったが、それが今内部破裂を起こした格好だ。

ノルマンディー・フォーマットではスイスが舞台裏で仲介役を果たした。目には見えなかったかもしれないが。スイスはOSCEでも重要な役割を果たした。重要な職務に就くスイス人も中にはいたのだ。その意味で私はスイスを軽はずみに(仲介役から)除すようなことはしない。まだ候補に残っている。

swissinfo.ch:平和外交上、国際社会が国際法を引き合いに出してロシアの行動を非難することはどれほどの意味を持つのか?

ビアス:我々が国際法を尊重し、違反を黙って見過ごさないこと、そうして初めて国際秩序が存在しうる。起きていることを軽視せずに非難することは非常に重要だ。そうでなければ、力づくで欲しいものを奪い時代に逆戻りすることになる。

(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)

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