スイスで先月、保健当局者が誘拐・脅迫された。警察との銃撃戦の末に射殺された容疑者が反ワクチン派だったと報じられ、被害者本人が火消しする騒動に発展した。
このコンテンツが公開されたのは、
誘拐されたのはスイス連邦ワクチン委員会のクリストフ・ベルガー委員長。3月31日、ドイツ国籍の男(38)に一時拘束され、金銭を要求された。
警察の発表によると、その6日後、チューリヒ近郊のヴァリゼレンで警察がこの男を逮捕しようとした際、男が突然発砲。その場にいた仲間の女性(28)が撃たれた。警察も男に発砲した。2人はいずれもその後死亡が確認された。警察は現場の状況から拳銃を使用せざるを得なかったと説明している。
スイスで銃撃戦が生じるのは珍しく、メディアが大きく取り上げた。裁判所は被害者の名前を公表していなかったが、今月8日、一部メディアが被害者はベルガー氏だと報じた。また、男がワクチン陰謀論者とつながりがあったとの報道も広がった。
ベルガー氏は10日に声明を発表し、自身が被害者であることを明らかにした。
声明によると、男はベルガー氏を1時間にわたり拘束。ベルガー氏に「かなりの」金額を要求し、従わない場合は暴行を加えると脅迫したという。「容疑者の焦点は経済利得に絞られていた。私がワクチン委員会の委員長であることには言及しなかった」。ベルガー氏は男から解放された直後に警察に通報したという。
ベルガー氏は「ワクチン接種の問題が過去2年、大きな感情的・社会的緊張をもたらした」ことを認識していると強調した。警察の捜査中であるため、事件の詳細については公表しないよう助言されたという。
警察はこの事件に関与したとして、34歳のスイス人の男を逮捕。誘拐の詳しい動機について調べている。この男もワクチン陰謀論者だと報じられている。また警察の発砲が適切だったかどうかについても捜査が行われている。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
おすすめの記事
キリスト絵画を的に射撃したスイス議員、辞職
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの自由緑の党(GPL/PVL)チューリヒ支部に所属するサニヤ・アメティ氏(32)は9日、党の役職を辞すると発表した。自身のインスタグラムでキリストと聖母マリアを描いた絵画を的に射撃の練習をする写真を投稿し、大きな批判を浴びていた。
もっと読む キリスト絵画を的に射撃したスイス議員、辞職
おすすめの記事
スイス検察、国民投票の不正疑惑を捜査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス検察当局は、国民投票の提起に必要な署名が偽造されたとの疑惑を捜査している。収集代行業者が過去の署名を使い回したり、金銭を見返りに署名を集めた可能性がある。
もっと読む スイス検察、国民投票の不正疑惑を捜査
おすすめの記事
1000人超でアルプホルン演奏 スイスで世界記録を更新
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのニトヴァルデン準州クレヴェンアルプで31日、1000人以上のアルプホルン奏者が集まり、「アルプホルンを合奏する人数」の世界記録を更新した。
もっと読む 1000人超でアルプホルン演奏 スイスで世界記録を更新
おすすめの記事
社会民主党、収入約16億円で全政党トップ 政治資金報告書
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦監査院(SFAO)が30日、2023年の政治資金報告書を発表した。
もっと読む 社会民主党、収入約16億円で全政党トップ 政治資金報告書
おすすめの記事
スイス政府、原発の新設解禁に前向き
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は28日、「すべての人にいつでも電気を:ブラックアウト(全域停電)を止めよ」と題するイニシアチブ(国民発議)に反対を表明した。ただ、新たな原子力発電所建設の解禁には原則として支持する考えを示した。
もっと読む スイス政府、原発の新設解禁に前向き
おすすめの記事
マッターホルンの麓町ツェルマット、日帰り客に入場料を検討
このコンテンツが公開されたのは、
スイスを代表する名峰マッターホルンの麓町ツェルマットは、日帰り観光客の多さに悩んでいる。 現在、入場料の徴収を検討中だ。
もっと読む マッターホルンの麓町ツェルマット、日帰り客に入場料を検討
おすすめの記事
パリ協定遠く…スイス全州で気候変動対策不十分 WWF調査
このコンテンツが公開されたのは、
世界自然保護基金(WWF)スイスは27日、スイスの全ての州でパリ協定の目標達成に向けた十分な取り組みが行われていないとの分析結果を発表した。
もっと読む パリ協定遠く…スイス全州で気候変動対策不十分 WWF調査
おすすめの記事
スーダン停戦交渉、和平合意なく終了
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ジュネーブ地方で10日にわたって行われたスーダン内戦の停戦協議が23日、停戦合意に達することなく終了した。
もっと読む スーダン停戦交渉、和平合意なく終了
おすすめの記事
スイス観光地ブリエンツの土砂災害 予想より被害深刻で鉄道路線に影響
このコンテンツが公開されたのは、
12日にスイス・ベルン州を襲った嵐の影響で土砂崩れなどの被害を受けた人気観光地ブリエンツ村の一部では、依然として閉鎖が続いている。
もっと読む スイス観光地ブリエンツの土砂災害 予想より被害深刻で鉄道路線に影響
おすすめの記事
マッターホルンで登山者の滑落死相次ぐ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの名峰マッターホルンで16 日、登山者が下山中に800m下の氷河に滑落し死亡した。同じ山では14日にも、別の登山者2人が滑落死した。
もっと読む マッターホルンで登山者の滑落死相次ぐ
続きを読む
おすすめの記事
コロナデモは正当化されるのか?
このコンテンツが公開されたのは、
今のところ、公共スペースで5人を超える集まりは禁止されており、政治的なデモも対象だ。だが5月に入り、3週末連続で自由の制限に抗議するデモが、少人数ながら大きな声を上げた。 彼らは一体何を求めているのか? 一つには、人々の…
もっと読む コロナデモは正当化されるのか?
おすすめの記事
コロナワクチン 抵抗強いスイスでどう推進するか?
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスのワクチン開発が複数の企業で最終段階に入っている。次のステップは国民の大半を説得し、ワクチン接種に同意してもらうことだ。しかし予防接種への抵抗が世界で最も強い国の1つであるスイスでは、非常にハードルの高い問題になりそうだ。
もっと読む コロナワクチン 抵抗強いスイスでどう推進するか?
おすすめの記事
コロナワクチン義務付けへの反対運動が発足
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスの予防接種(ワクチン)の開発が進む中、スイスでは接種を強制されない権利を保証するためのイニシアチブ(国民発議)が立ち上がった。
もっと読む コロナワクチン義務付けへの反対運動が発足
おすすめの記事
スイスを襲う「ワクチン疲れ」
このコンテンツが公開されたのは、
ワクチンは十分にある。足りないのはワクチン接種への意欲―スイスでは他の先進国同様、新型コロナウイルスのワクチン接種率が伸び悩んでいる。
もっと読む スイスを襲う「ワクチン疲れ」
おすすめの記事
ワクチン接種証明書は差別につながるか?
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスのワクチン接種証明書を巡り、欧州で前例のない差別につながるという意見や、証明書が人権を保護し、適切な手段だと反論する。倫理学者はこの問題をどう見ているのか。
もっと読む ワクチン接種証明書は差別につながるか?
おすすめの記事
従業員にワクチン接種義務、スイスでも可能?
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が増加する中、スイス政府はワクチン接種を呼びかけるキャンペーンに力を上げている。はたして、雇用主が従業員にワクチン接種を求めることは法的に可能だろうか?答えは簡単に出せそうにない。
もっと読む 従業員にワクチン接種義務、スイスでも可能?
おすすめの記事
ワクチンの公平な分配、WTOで議論 道のり遠く
このコンテンツが公開されたのは、
世界貿易機関(WTO)は、新型コロナウイルスのワクチンがすべての国ですべての人に行き届くようにするための世界的な「ロードマップ」について議論を開始した。WTO新事務局長は、議論が具体的な行動につながることを期待する。
もっと読む ワクチンの公平な分配、WTOで議論 道のり遠く
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。