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在宅勤務やテレワーク コロナ禍後も定着するか?

テレワーク
誰もが自宅で働ける環境を持っているわけではない Keystone / Sascha Steinbach

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、在宅勤務が普及した。ただこの勤務形態が本当に社会に根付いたのか、それがどんな結果をもたらすかは今後の動向次第と言えそうだ。

在宅勤務、スマートワーキング、テレワーク。これらの用語はパンデミックが始まってからの1年半ですっかり浸透し、日常生活の中で一般的に使われてきた。コロナ変異株の感染が広がった今年1月中旬から5月31日まで、スイス連邦政府が「可能な限りの在宅勤務」を義務付けたことでも、一般化は加速した。

テレワーク自体は、実は何十年も前から存在していた。だがそれを普及させたのは今回のパンデミックだ。スイス・イタリア語圏応用科学大学(SUPSI)経済・健康・社会学部の仕事・福祉・社会センターで労働の変革とソーシャル・イノベーションを専門とするニコラ・ポン・ビニョン教授は、テレワークのモデルは労働社会学では長い間、研究の対象だったと語る。

疫学的観点や患者数が減少している点を鑑みれば、在宅勤務モデルはもはや必要ないように見える。だが、在宅勤務は今後も定着するのだろうか?国際調査・コンサルティング会社Gartnerの調査によると、世界各国で調査を行った企業の人事担当者の90%が、コロナ禍が終息した後も、従業員に対し少なくとも一部の在宅勤務を認めると回答した。また48%の社員が、少なくとも一部の時間は自宅で仕事をすると答えた。カスタマーサービスや技術・ITサポートなどのサービス分野は80%以上と最も高かった。

最も影響を受けたセクター

連邦統計局によると、スイスで在宅勤務する従業員の数は、2019年の24.6%から20年には34.1%に増加した。特に情報通信産業が顕著で、19年には58.4%の従業員が(少なくとも時折)在宅勤務をしていたが、20年にはその割合が76.3%にまで上昇した。

金融・保険業(34%から61.4%)、科学・技術職(39.3%から54.7%)、行政職(22.4%から42%)でも同様の結果がみられた。在宅勤務がしにくい建設業や医療、ホテル、レストランなどでは比率は低いままだ。

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危険性も潜む

コロナ禍で、在宅勤務は多くの職業にとって唯一の選択肢に変わった。しかし、これが今後も続くのか、またどう発展していくかをを理解するためには、いくつかの問題を考慮する必要がある。それは各企業や労働者だけでなく、それぞれの背景や状況によっても異なる。

ポン・ビニョン教授は「雇用者が従業員に対してより『フレキシブルさ』を提供したり要求したりすることは、多くの場合、従業員自身の脆弱性を高めることを意味する」と指摘し「そのため、労働形態の柔軟性(在宅勤務など)と、契約条件の柔軟性を区別する必要がある」と付言する。「テレワークができることで、得られるメリットは多くある。だがそうしたメリットは、労働者に自律性がなく、雇用の安定性や在宅勤務に必要な条件を持ち合わせていない場合は、見かけ上のものに過ぎない可能性がある」

仕事
すべての仕事が自宅でできるわけではない Keystone / Mahmoud Khaled

在宅勤務の普及は事実、不安定性の増大にもつながりかねない、と同氏は話す。「雇用主は『自宅でできる仕事なら、従業員を雇って社会保険料を払う必要はない。同じ仕事を、時給制で外注してもいい』と考えることもありうる」。同氏は「こうした仕事のアウトソーシングは、起業を考えている人には魅力的かもしれないが、労働者にとっては不安が増すことを意味する」と話す。

失業率が高い国や、既に危機的な社会状況の国では、この危険が増す。このため在宅勤務の質は、労働者の契約条件に大きく左右される。在宅勤務の将来は、ハイブリッドで不均質なものになりそうだ。ポン・ビニョン氏は3つのシナリオを提示する。

  • 全員がオフィスに戻る:雇用主の視点から見ると、これは社員が在宅勤務すると「生産性」が下がる、という懸念があるからだ。同僚と対面コミュニケーションを取ることで得られる学習効果がなくなることも、テレワークの欠点とされる。
  • 可能な限り、社員全員が在宅勤務する:この選択肢は仕事が効率的に行われれば、双方に大きな利益をもたらす。特にチューリヒやロンドンなど、オフィスの維持費が高額な都市ではその傾向が強い。企業はコストを大幅に削減できる余地が生まれる。
  • ハイブリッドシステム:職場・在宅勤務を交互に行う。このモデルを機能させるためには、同僚間のインフォーマルな交流、仕事上の交流、創造性の開発など、それぞれのスペースが何のために重要で効率的なのかを明確にしなければならない。その他のメリット・デメリットも考慮する必要がある。例えば、対人で行う会議は、オンラインに比べて時間がかかったり、収拾がつかなくなることがままある。

多くの国は、国外の企業で働く人に対し、居住許可と税制優遇を認める法律を作った。このためのインセンティブさえある。

イタリアは昨年から、いわゆる「リモートワーカー」の非課税所得の割合を50%から70%に増やした。税務上の住所をイタリアに移すと、この恩恵を受けられる。この優遇課税は最大5年間付与され、同国南部または島(サルデーニャなど)に定住すると非課税額は最大で90%になる。

ギリシャも21年中に同国に移住する人の税金を半分に削減すると発表した。主な目的は、経済危機の10年(09年~19年)に故郷を去った80万人のギリシャ人の一部を「帰還させる」ことだ。乱用を防ぐためのメカニズムも整えた。

スペインも目指すものは一緒だが、「非営利居住ビザ」という別のアプローチを取った。非欧州連合(EU)市民に対し、就労はできない代わりにスペイン居住を認める、というビザだ。

月額2500ドル(約27万5千円)以上の収入があれば、コスタリカでの居住許可を簡単に申請できる。ただ就労は認められない。アンティグア・バーブーダとバルバドスは、年収5万ドル以上の人に居住許可を発行する。

スイスの多くの州は、裕福な外国人に対し定額課税を提供する。スイスで非就労・居住する人が対象で、通常の収入と資産に基づいた課税ではなく(生活)消費に基づいて課税される。しかし、この税法は賛否が分かれている。チューリヒ州の有権者は国民投票で、この定額課税を廃止した。

ポン・ビニョン氏は「問題は、労働の世界は民主的な世界ではないということ」だと指摘する。「大きな変化となると、決定を下すのは通常、雇用主だ。これは法改正にも当てはまる」

同氏は「最初に述べたように、多くの面で検討が必要だ。仕事の種類や社員の立場はもちろん、社員と管理職の会話の質も問われる。結局のところは、従業員のニーズに応えようとする雇用主の意欲が非常に重要だ」と話す。

様々な調査や予測では「柔軟な働き方」としての在宅勤務が今後、これまで以上に重要な役割を果たすとみられる。雇用や仕事に対する考え方には、すでにある種の革命が起きている。しかし、より踏み込んだ結論が出るまでには、時間とさらなる経験が必要となりそうだ。

(独語からの翻訳・宇田薫)


Gerhard Lob

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