外銀の参入が続く金融最前線の国スイス

ブラジルのイタウ銀行はスイス進出に強い興味を持っている AFP

金融危機の影響やUBS銀行の問題によって生じたイメージの損傷にも関わらず、新興国の金融機関にとってスイスは依然として魅力的な国に映る。

このコンテンツは 2010/06/20 15:25

「ブリックス/ブラジル、ロシア、インド、中国 ( BRICs ) 」など高度経済成長を続ける国々の銀行が増えている。それらの銀行にとって、欧州、特にスイスの金融市場における子会社設立は優先事項の一つだ。

相次ぐ新規参入

「『中国銀行 ( Bank of China ) 』に続き、中国のほかの銀行もスイスに子会社設立を考えています。最近はメキシコの銀行もスイスに興味を示しています。また、インドの銀行もスイスに子会社開設を望んでいます。こうした傾向は確かにあります」
と在スイス外国銀行協会のマルタン・マウラー氏は認めた。

例えばブラジルの大銀行「イタウ ( Itaú ) 銀行」は典型的な例だが「ユニバンコ ( Unibanco ) 」の買収以来、従業員数10万人以上の中南米最大の銀行となった。同行は、まもなくチューリヒ、続いてジュネーブに子会社を開設することになっている。しかしイタウ銀行は、スイスインフォの取材を現在のところ拒否している。

資産運用

しかし「バンコ・イタウ・スイス ( Banco Itaú・Suisse S.A. ) 」は、すでに自社のウェブサイトでチューリヒのリマット川沿いにあるオフィスの住所を公表し、「スイスの銀行免許取得の最終段階にある」と明記している。同銀行は、資産運用のための「卓越したスイス的な」金融商品一式を完備している。

プライベートバンク業務や資産運用業務は、まさに外資系の銀行がスイスでその存在を確立するための特定分野だ。これは最近ジュネーブにスイス初の子会社を設立したばかりの中国銀行にとっても同様だ。

「ジュネーブ州経済促進局」の局長ダニエル・ロフレール氏は、外資系の銀行がすでに約60行も存在するカルバンの街ジュネーブに、インドの銀行も子会社開設の興味を示していることを認めた。
「経済成長期にある国の銀行は、最前線の国々での商品開発を望んでいます」

外資系の銀行の魅力は、ヨーロッパの顧客には自国の金融商品を薦める一方、従来からの自国の顧客には「スイス的な」金融サービスを提供する点にある。

スイスの好印象

「誰が何を言ったり書いたりしようとも、スイスについて外国人は良いイメージを持っています」
と「スイス中国銀行 ( Bank of China ・Suisse) 」の理事会のメンバーでローザンヌの弁護士フランソワ・キャラール氏は金融の国スイスの魅力を語った。
「新興国の銀行にとって、実現すべきビジネスや面白い投資がヨーロッパやスイスにはあります。子会社をスイスに設立し、スイスの銀行と協力していくことがそれらの銀行の利益となるのです」

ロフレール氏は、金融市場と金融環境の不安定性もまたこの動向の原因になっていると考える。
「スイスには、金融界にとって非常に重要な、特に経済・金融危機に面した時、非常に重要となる政治の確実な安定という利点があります」

互恵関係

専門家すべての意見は
「BRICsやほかの新興国の銀行に門戸を開放することは、チューリヒ、ジュネーブ、ルガノのスイス金融3都市にとって利益のみを提供することになる」
と一致する。

スイス国内における銀行間の競争の可能性については
「それらの外資系の銀行には、ローンなど平均的なスイス人の顧客が興味を示すような金融商品はありません。外資系の銀行は、むしろ本国からの海外居住者を対象にしていると考えています」
とマウラー氏は語った。

またロフレール氏も
「もしスイスの銀行と競争が起きたとしても、金融市場が強化されるだけでしょう」
と付け加えた。また、BRICsにはヨーロッパ、特にスイスの金融市場に流出した自国の資産をその手元に取り戻したいという意欲があると専門家は指摘する。

さらに外資系の銀行の子会社開設は、互恵関係の原則に則り、スイスの銀行の子会社をそれらの国々に開設するという逆方向の動きを促進することになる。
「もちろんです! 互恵性を考慮し、外国の銀行を歓迎するべき理由はそこにあります」
とキャラール氏は語った。

法の下での平等

「スイス金融監督局 ( Finma ) 」は、「外国の銀行を歓迎する」と発言するのみにとどまり、それ以上のコメントを避けている。

しかし、スイスの銀行免許の取得には長い時間がかかる可能性がある。
「申請者の銀行が下準備を十分に行い、弁護士の大群を投入し、手続きが非常に速く進んだ場合は6カ月です。より複雑な場合は数年かかります」
とスイス金融監督局の広報担当アラン・ビクセル氏は認めた。

「申請却下は珍しくはありません。スイスの銀行も外国の銀行も、同じ基準を満たし、同じ法律に従わなければなりません」
とビクセル氏は静かに語った。

外資による買収

新興国の銀行の参入の結果、スイス経済にいくらかの影響が出る可能性がある。
「特に『中国資本』のような外国資本によるスイス企業の買収を手伝うことになるという結果を考えています」
とローザンヌの弁護士キャラール氏は予測する。そして同氏はさらに
「このシナリオによって脅かされる人々が存在する可能性は承知しています。しかし個人的には、将来スイス経済もこうした種類の非常に自然な推移を辿ることになると考えています」

ニコラ・デラ・ピエトラ 、swissinfo.ch
( 仏語からの翻訳、笠原浩美 )

スイスにある外資系の銀行

スイスにある外資系の銀行154行は、スイスの銀行の総数の45%を占める ( 2008年の統計 ) 。それらの外資系の銀行の70%以上がヨーロッパの銀行。
推計によると、スイスで営業している外資系の銀行の運用資産総額は、2008年には約9500億フラン ( 約76兆8000億円 ) 、前年の2007年は1兆フラン ( 約80兆8700億円 ) だった。
それら外資系の銀行の営業活動は資産運用業務に集中している。
中国、インド、ブラジルの3大新興国の経済成長率は、西欧諸国の経済成長率の平均をしのぐ。
力強い経済成長を続ける新興国は、2008年の世界的な経済危機とその影響に対して強い抵抗力を示した。
「途上国」という名称は、政治的により適切と判断された「新興国」に変更されたが、正確な経済的定義から見た場合どちらも適合しない。

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「スイス金融監督局 ( Finma ) 」

スイスの銀行免許認可手続きは、金融市場の監督業務における予防的規制を目的とした主要手段の一つ。
スイス金融監督局は、「規制の柱は、不正な商業慣習、不透明な株主組織、完璧な活動を約束しない責任者など有効とされたものすべてを系統的に却下すること」と説明する。
監督に関する法律に従い、認可の条件は該当機関とその目的に応じて設定される。
一般的には、主に組織構成、財政、人事についての基準が適用される。
申請者の準備の程度によって、銀行ライセンス取得の手続きは6カ月から数年を要する。

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