The Swiss voice in the world since 1935

スイス原発、廃炉費用の試算が11億フラン増加

スイス連邦環境・運輸・エネルギー・通信省は12日、スイス国内の原子力発電所5基の廃炉関連費用が245億8100万フラン(約2兆7300億円)になるとの試算を発表外部リンクした。これまでの民間推計より11億フラン多い。費用を拠出する電力会社は反発している。

 スイスの原子力エネルギー法では、廃炉費用および放射性廃棄物の処理費は、原発を運営する電力会社も拠出しなければならないと定めている。拠出額を算出する基礎として、5年ごとに廃炉費用の試算を見直す。

 これまで基にしていたのは2016年に原発運営会社連盟「スイスニュークリア(swissnuclear)外部リンク」が行った試算で、総額218億フランだった。廃炉基金・放射性廃棄物処理基金(STENFO)外部リンクの委託を受けて専門家がこの試算を検証したところ、17年末に廃炉費用は13%多い235億フランになると分かった。この数字に対し、連邦環境・運輸・エネルギー・通信省が改めて検証したところ、245億8100万フランという結果になったという。

三つの相違点

 同省は12日付の声明で、専門家の検証を疑う根拠はないと説明したが、結果には大きな差が出た。政府とSETENFOの試算の相違は次の3点だ。

①    汚染物の廃棄場所

 STENFOは低・中・高レベル放射性廃棄物をすべて同じ場所に廃棄する複合型貯蔵施設を作れる可能性を40%と仮定して試算した。政府はこの可能性をゼロとみて算出した。地下埋蔵のための地層検査が十分進んでおらず、複合型貯蔵施設の是非を判断できないためだ。この結果、処理費用は約6億5100万フラン増えた。

②    地元への補償費用

 STENFOは廃棄物処理施設がある州・地域に、8億フランの補償費用を支払う可能性を50%と仮定した。政府はこの前提を許容できないとし、8億フラン全額を補償費用に含めた。このため廃棄物処理費用は4億フラン多い208億2百万フランになった。

③    原状回復費用

 発電所の跡地を更地に戻す費用も廃炉費用に含む。法令では「緑化」まで定めているが、STENFOは放射性物質を出さない構造物が一部残る「茶色化」の可能性を20%見込んでいた。政府は「それは適切ではない」として、廃炉費用を4600万フラン多い37億7900万フランと算出した。

反応はさまざま

 スイスニュークリアは政府の試算に対し「理解に苦しむ」とするコメント外部リンクを発表した。政府試算は補償、複合型貯蔵施設、緑化の三つの分野において最も可能性の高い予測を「体系的に」当てはめたに過ぎず、リスク評価は政治的で、技術的には根拠がないと批判した。

 一方、スイスエネルギー基金(SES)外部リンクは政府の試算を歓迎した。ただ、STEFANOが予備費を削減したことに政府が触れなかったことについては不満を呈した。予備費は、コスト超過の可能性を考慮し、また原発停止により発生する費用を賄うことを想定する。予備費の削減により、連邦政府や納税者が廃炉基金に追納しなければならなくなるリスクが高まるとSESは主張した。

 STENFOは30日以内に政府の試算に異議を申し立てることができる。最終的な試算は、廃炉・廃棄物処理法(SEFV)外部リンクが発効する19年中に確定する。

SDA-ATS

最も読まれた記事
在外スイス人

世界の読者と意見交換

ニュース

コーデリア・ベール

おすすめの記事

TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出

このコンテンツが公開されたのは、 米誌タイムズの「2025年最も影響力のある100人」に、弁護士コーデリア・ベール氏がスイス人女性では唯一ランクインした。ベール氏は気候訴訟で異例の勝訴判決を勝ち取った人物だ。

もっと読む TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出
卵の棚

おすすめの記事

ミグロ、スイス初の年中無休スーパーを開店へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス小売大手のミグロ(Migros)は14日、アッペンツェル・アウサーローデン準州ヘリザウにある1店舗を年中無休化すると発表した。

もっと読む ミグロ、スイス初の年中無休スーパーを開店へ
スイスのカリン・ケラー・ズッター大統領

おすすめの記事

スイス大統領、関税でトランプ氏と電話会談

このコンテンツが公開されたのは、 スイスのカリン・ケラー・ズッター連邦大統領は、米国の追加関税について、ドナルド・トランプ米大統領と電話会談した。

もっと読む スイス大統領、関税でトランプ氏と電話会談
スイスのケラー・ズッター大統領とパルムラン経済相

おすすめの記事

スイス、トランプ関税に報復せず

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府は3日、ドナルド・トランプ政権が同日発表した関税に対し、当面は対抗措置を取らないと表明した。

もっと読む スイス、トランプ関税に報復せず
BYDの車

おすすめの記事

スイスにBYDが上陸 年内に15店舗

このコンテンツが公開されたのは、 中国のEVメーカー比亜迪(BYD)が正式にスイス市場に進出する。年内に全国で15店舗を出店する計画だ。

もっと読む スイスにBYDが上陸 年内に15店舗
スイスFINMA

おすすめの記事

スイス金融当局が組織再編 リスク管理部門を新設

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの金融市場監督機構(FINMA、日本の金融庁に相当)は1日、監督体制を強化するため組織を再編したと発表した。クレディ・スイス危機への反省から、立ち入り検査機能を増強する。

もっと読む スイス金融当局が組織再編 リスク管理部門を新設
シモン・プリュス氏

おすすめの記事

スイスで凍結されたロシア資産、1.25兆円に 所有者の特定進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦経済管轄局(SECO)は1日、これまでに国内で凍結したロシア資産は74億フラン(約1兆2500億円)になったと発表した。資産の所有者の特定が進んだことで、昨年4月から1年で16億フラン増えた。

もっと読む スイスで凍結されたロシア資産、1.25兆円に 所有者の特定進む

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部