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高騰中の原油価格に挑む工業界

科学者に期待がかかる石油代替エネルギーの研究 Keystone

スイスの工業界には、高騰し続ける原油価格への依存を減らすための革新が必要だと、先日開かれた工業関連団体「スイスメム」の会議で述べられた。今年の原油価格は1バレル100ドル ( 約1万500円 ) をはるかに上回り、専門家によれば、年末までには200ドル ( 約2万1100円 ) に達するという。この原油価格の高騰で工業生産高は大きな打撃を被り、インフレが加速している。

スイス国内の機械、電気、金属工業を代表する団体「スイスメム ( SWISSMEM )」が主催した今年の「工業の日」は、急上昇する燃料価格が課題だ。

代替エネルギー源の必要性

 この会議で、ドリス・ロイタルト経済相は、エネルギー効率をより高め、太陽電力や水力のような代替エネルギー源の分野で革新を推し進める時が来たと述べた。
「以前スイスが水力技術でパイオニア国になったように、オープンで革新的な風潮がありますから、研究を重ね、石油への依存を減らすことは可能です。さらには、( エネルギー源としての ) 油性物質を完全に無くすことも可能です」

 「今、行動に移さなければ、明日にでもわたしたちは大きな問題を抱えることになるでしょう。石油と鉄鋼で成り立っているこの西洋社会は、突然その拠り所を失ってしまうのですから」
 とロイタルト経済相は警告する。

 ここ最近でガソリン価格が1リットル2フラン ( 約208円 ) を初めて記録したが、ロイタルト経済相はパニックを起こす必要はないと言う。
「今ここで、新しいプロセスやメソード、新しい機械設備を開発できた者が、巨大マーケットを開くことになるでしょう。スイスには正しいノウハウを持った専門家がいますし、ふさわしい技術力を備えた企業があります」

工業界の見解

 科学者、ビジネス界、政治家が一丸となってエネルギー問題やそれに関連する環境問題を解決すべきだと、スイスメムの会長ヨハン・シュナイダー・アンマン氏は言う。
「競争力のある安全で経済的な燃料供給は、未来に関わる、特に未来の産業に関わる、重要な要素です」

 シュナイダー・アンマン氏は、スイス企業数社に課された二酸化炭素 ( CO2 ) 排出税に対しては常に反対し、気候変動の責任を工業界のみに負わせるべきではないと政治家や一般市民に強く申し立てた。
「パニックは望ましくありません。一般大衆に訴える扇情的で不安を掻き立てる危険な主張を優先したり、すでに国民の中に見られるような、政府の見解を批判せずにうのみにするような姿勢を取るように圧力がけられてはなりません」
 とシュナイダー・アンマン氏は言う。

 今回の会議で、スイスメムはエネルギー政策を発表し、老朽化の進む原子力発電所の撤去を求めている。
「スイス国内に現存する原発所の早期的な代替措置計画と最短期間の代替措置を要求する」
 と政策文書に明記されている。

新原子力発電所

 先月6月初め、スイスの電力会社「アーレ ( Atel )」は、ソロトゥルン州に予定されている新しい原発の建設許可を申請したが、建設の是非が住民投票にかけられることはほぼ間違いない。

 スイスメムの政策書は、企業が負担する排出税に対するシュナイダー・アンマン氏の非難も反映している。
「 ( 排出税により ) スイス企業の活動が不活発になってはいけない。企業はその革新力や技術的解決方法を持って、実質的には環境保護に貢献できるからだ」
 と記されている。

swissinfo、マシュー・アレン チューリヒにて 中村友紀 ( なかむら ゆき ) 訳

スイス国内の機械、電気、金属工業のシンクタンク、ロビー団体として1883年に設立される。会員のための職業訓練も提供している。

スイスメムの工業3部門は、2007年のスイス国内総生産 ( GDP ) のおよそ19.3%を占め、年間歳入は合計970億フラン ( 約10兆円 ) 。

売上高の80%は輸出による。機械、電気、金属工業は、スイスの輸出産業の40%近くを占める。

この3部門の従業員数はスイス国内で約33万9000人。国外ではさらに42万8000人。

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