スイスのメディアが報じた日本のニュース
今週(10月6日〜12日)スイスの主要報道機関が伝えた日本関連のニュースから3件をピックアップ。要約して紹介します。
「日銀の『ウィドウ・メーカー・トレード』」「日本の林業者がアールガウの森を視察」「ラグビー日本代表、アルゼンチンに敗退」「鈴木宗男議員が離党」「F1ジャーナリスト、日本でチョコレートを販売」「旧統一教会に解散命令」「ファストリ最高益」「東芝、12月20日に上場廃止」―といったトピックスが取り上げられました。
この中から今回は「日銀の『ウィドウ・メーカー・トレード』」「日本の林業者がアールガウの森を視察」「F1ジャーナリスト、日本でチョコレートを販売」をご紹介します。
「ウィドウ・メーカー・トレード」ついに勝利か
日本国債暴落に賭けて空売りしてきた投資家はことごとく損失を出してきたが、今やついにこの「ウィドウ・メーカー・トレード」が功を奏しそうな気配だ――経済紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトは9日、世界的に著名な米経済学者ケネス・ロゴフ氏の寄稿を掲載しました。
日銀の低金利政策は長続きせずいつかは金利が急騰(国債価格は急落)するとみて空売り(ショート)するトレードは、投資家の命を奪いウィドウ(英語で寡婦の意)を生み出すほどリスクの高い投機だと揶揄されてきました。
ロゴフ氏は、「世界的に実質金利が急激に上昇している一方、日本ではインフレ率の上昇にもかかわらず実質金利が低下している。日本が世界の金融市場に深く統合されていることを踏まえると、この状態を長期的に維持することはできない」と指摘しました。
成長率の底上げのために防衛費の増額や女性の出産意欲を削ぐ企業慣習の改善、移民の受け入れ増といった改革を提案。一方で「日本の没落を止めるための政策措置は、金利正常化の必要性を加速させるだけだろう」と警告しました。
次に深刻な金融危機が発生し金利が急騰すれば、膨大な国家債務の返済コストを押し上げ「重大なリスクを引き起こす可能性がある」と結んでいます。
(出典:フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンク/ドイツ語。原典はプロジェクト・シンジケート外部リンク/英語)
気候変動に立ち向かう林業者
林業学校「奈良県フォレスターアカデミー外部リンク」の学生が1週間のスイス研修に訪れました。9日にベルンの州立林業公社を、11日にアールガウ州エルリンスバッハにあるジュラ林業公社を訪問。その様子をアールガウ新聞などが報じました。
奈良県では土砂崩れの発生が増えています。その解決策として、スイスをモデルに「永続林」の育成を目指す試みがあります。視察で案内役を務めたジュラ林業公社のマルティン・プラットナー氏によると、永続林とは、その場所に適した樹種を異なる世代がうまく混在するように植えた森林です。「6年後にまた生えてくるだけの木材を伐採することが最も重要」だそうです。
奈良県フォレスターアカデミーはスイスの林業をモデルに2021年に設立された林業学校で、リュス林業学校(ベルン州)の校長だったアラン・コーチャー氏が同校の名誉会長を務めています。
エルリンスバッハを視察したシマダシュウジさん(33)は、50年ごとに大伐採して植林する日本の伝統的林業を変えたいと考えています。同紙の取材に「気候変動は私たちに林業を変えることを迫っています」と話しました。(出典:アールガウ新聞外部リンク/ドイツ語)
F1ジャーナリストが日本でチョコレート販売
過去40年で650以上のレースを取材してきたF1ジャーナリストのリュック・ドメンジョス氏は大のチョコレート愛好家。1日に200グラム、1000カロリー相当のチョコレートを食べると言います。そのチョコレート好きが乗じて、日本でスイスチョコレートの販売ビジネスを始めました。
2008年、書籍販売の低迷から多角化を考えるうち、日本の友人と話している時にこのアイデアを思い付いたと言います。「私は日本のF1専門誌にも寄稿していて、日本人はチョコレートとスイスが好きなのは知っていたが、日本ではこうした商品を売っている人がいないことに気づいた。ベルギーとフランスのチョコレートはあったが、スイス製はなかった」
その後、日本の新たな側面を発見したと言います。スイス・フランス語圏出身のドメンジョス氏は「日本人と仕事をするのはドイツ系スイス人を相手にするのと少し似ているが、より複雑だ。それらははるかに手続き的で、はるかに気難しいが、最終的にうまくいくときはうまくいく」。4年間東京に住んで、日本語も学びました。
苦労したのは店舗の候補地探しだと言います。「日本人はいつも同じ経路を通りたがるので、他の国よりも場所が重要だ。彼らが迂回してくることはなく、自分のほうから彼らの道に入らなければならない」。最終的には東京のシャンゼリゼ・銀座に小さな店舗を構え、ローザンヌで前日製造し空輸した新鮮なチョコレートを販売しています。(出典:24時間新聞外部リンク/フランス語)
今週のスイスのニュース
今週、最も注目されたスイスのニュースは「スイス、ハマスのイスラエル攻撃を非難」(記事/日本語)でした。他に「レダラッハ創業の宗教学校での児童虐待、調査は『必要ない』」(記事/日本語)、「受信料減額案、スイス国民の6割が支持」(記事/日本語)も良く読まれました。
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次回の「スイスのメディアが報じた日本のニュース」は10月20日(金)に掲載する予定です。
編集:宇田薫
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