米フェイスブックの仮想通貨プロジェクト「リブラ」は提携企業のうち7社が脱退を表明し、大きな打撃を受けた。プロジェクトの音頭をとるリブラ協会(本社・ジュネーブ)は憲章の策定や経営陣の刷新で、規制当局からの圧力に抗おうとしている。
このコンテンツが公開されたのは、
リブラは買い物の支払いや消費者どうしの送金方法に革命を起こそうとしている。従来の通貨に換金できる仮想通貨を創り、効率的に世界のあちこちへ送ることのできる仕組みだ。
リブラは従来の金融インフラを介するのではなく、決済やオンラインショッピング、技術、NGOの分野で活躍する企業・団体と協力関係を結んでいる。
だが米国を中心とする規制当局は、リブラは広範囲に流通する可能性が高いことから、各国の金融政策がうまく機能しなくなることを懸念している。リブラを管轄するスイスはリブラ運営に当たっての規制要件を概説したが、米上院議員は提携企業数社に対し撤退するよう圧力をかけた。
リブラとの提携を解消すると表明したのはペイパルとビザ、マスターカード、イーベイ、ストライプ、メルカド・パゴ、ブッキング・コムの7社。新進気鋭の決済システムにとって、これら主要企業の脱退は大きな損失となり、リブラが予定通り来年発行できるのかどうか、疑問が生じている。
強い逆風
それでもリブラ協会外部リンクは14日、残り21社の提携企業とプロジェクトを続行すると発表した。今後も関係を築きたいと考える企業だ。
「協会はより良い決済ネットワークを構築し、重要な金融サービスを利用しやすくし、それらを最も必要とする世界数十億人にかかる手数料を下げたいと考えている」と述べた外部リンク。「協会として、参画企業は引き続き世界の規制当局との重要な任務に当たる」
リブラ協会のバートランド・ペレス専務取締役は先月、スイスインフォの取材にリブラは金融システムに脅威を与えていないと語った。協会は仮想通貨ビジネスにオープンな政策をとるスイスに設立された。
14日にはリブラ協会憲章の署名のほか、評議会の設立や理事会・執行チームの役員が選出・任命され、リブラがプロジェクトを断念していないことを物語る。だが発進前のリブラには強い逆風が吹いているとみられている。
おすすめの記事
おすすめの記事
フェイスブックの仮想通貨「リブラ」が政府・中央銀行にかける圧力
このコンテンツが公開されたのは、
米フェイスブックが独自の仮想通貨「リブラ」を発行する計画を発表した6月、政府に公式の電子通貨発行を押し付ける意図はなかったと言っていい。
もっと読む フェイスブックの仮想通貨「リブラ」が政府・中央銀行にかける圧力
おすすめの記事
スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦運輸省民間航空局(BAZL/OFAC)が3日発表した2023年の航空安全報告書によると、民間・小型航空機の事故件数は9995件と、前年から24%増加した。
もっと読む スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
おすすめの記事
「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦裁判所(最高裁)は先月26日、チューリヒ地方裁判所の判事の1人に対し、気候活動家に関する裁判への関与を禁じる判決を下した。この判事が過去の裁判で活動家への団結心を見せたとして、考え方に偏りがあると結論付けた。
もっと読む 「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
おすすめの記事
スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は25日、2023年の名目賃金は1.7%上昇したと発表した。インフレ(年平均2.1%)に相殺され、実質賃金は0.4%低下した。
もっと読む スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
おすすめの記事
製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの大手製薬ノバルティスは22日、2025年で任期満了となるヨルク・ラインハルト取締役会長の後任に、ジョバンニ・カフォリオ氏を選出すると発表した。
もっと読む 製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出
おすすめの記事
スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着
このコンテンツが公開されたのは、
エジプト考古省は21日、約30年前に盗まれ国外に流出したラムセス2世像の頭部破片が同国に到着したと発表した。
もっと読む スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着
おすすめの記事
スイス議会、G7のロシア資産追及チームへの参加を否決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国民議会(下院)は17日、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)の資産を追及する主要7カ国(G7)の国際作業部会には参加しないことを決めた。
もっと読む スイス議会、G7のロシア資産追及チームへの参加を否決
おすすめの記事
米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
このコンテンツが公開されたのは、
米政府高官は14日、イランによるイスラエル攻撃の前後に、米国は利益代表国であるスイスを通じてイランと接触していたと述べた。
もっと読む 米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
おすすめの記事
チューリヒ春祭りの雪男、強風で燃えず 歴史上初
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒの春祭り「セクセロイテン」が15日開かれた。巨大な「雪男」を燃やして夏の天気を占う恒例行事は強風により中止となった。
もっと読む チューリヒ春祭りの雪男、強風で燃えず 歴史上初
おすすめの記事
スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス政府は10日、「大きすぎて潰せない(TBTF)」銀行に関する規制改革案を発表した。UBSと他の「システム上重要な銀行」3行は、破綻時のスイス経済への影響を抑えるためにより厳しい資本要件を課される必要があると述べた。
もっと読む スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ
おすすめの記事
新種のイカの化石、名前は発音が難しいスイスドイツ語に
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州の約2億4200万年前の地層から新種のイカの化石が見つかり、「Chuchichäschtli(クッヒカーシュトリ、スイスドイツ語で『食器棚』)」と名付けられた。
もっと読む 新種のイカの化石、名前は発音が難しいスイスドイツ語に
続きを読む
おすすめの記事
多国籍企業にとってジュネーブの魅力は薄れつつあるのか?
このコンテンツが公開されたのは、
ジュネーブに拠点を置く米国や日本の多国籍企業が最近、相次いで人員削減計画を発表した。これはジュネーブの現在の景況や労働市場の流れを反映した動きなのだろうか?
もっと読む 多国籍企業にとってジュネーブの魅力は薄れつつあるのか?
おすすめの記事
スイス中銀、フェイスブック仮想通貨「リブラ」に懸念
このコンテンツが公開されたのは、
法定通貨に紐づいた仮想通貨は価格が安定するか?スイス国立銀行(中央銀行、SNB)の答えは「否」だ。米フェイスブックがジュネーブを拠点に展開する仮想通貨計画「リブラ」が、中銀と真っ向から対立する可能性が出てきた。
もっと読む スイス中銀、フェイスブック仮想通貨「リブラ」に懸念
おすすめの記事
世界初の仮想通貨銀行 透けて見えるスイスの意地
このコンテンツが公開されたのは、
スイス金融当局から銀行業の許可を得て、世界初の仮想通貨銀行への一歩を踏み出したSygnum。仮想通貨と従来型金融の世界をつなぐ架け橋になる、と創業者たちは業界の盛り上がりに期待を寄せる。暗号資産分野で世界の主導権を握りたいスイスにとっても大きな節目となりそうだ。
もっと読む 世界初の仮想通貨銀行 透けて見えるスイスの意地
おすすめの記事
フェイスブックの仮想通貨「リブラ」 真の狙いは?
このコンテンツが公開されたのは、
SNS大手の米フェイスブックが仮想通貨「リブラ」の発行計画を発表した。ターゲットは誰なのか、落とし穴はないのか?スイス・ジュネーブを拠点に新通貨を発行・管理する非営利団体「リブラ協会」に話を聞いた。
もっと読む フェイスブックの仮想通貨「リブラ」 真の狙いは?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。