1974年に導入された「チョコレート補助金」が実際に世界貿易機関(WTO)で訴えられたことはない
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1974年に導入された通称「チョコレート補助金」が2019年から廃止されることになった。スイスの食品輸出業者に、牛乳や穀物の内外価格差を補填する補助金だ。
同補助金は、チョコレートを始めとする加工食品の輸出業者に、原料に国産品を使う場合の不利益をなくすための措置。ネスレやリンツ&シュプルングリも、この補助金を受けてスイス産の牛乳や穀物を使ったチョコレートやシリアルを輸出している。年間の拠出額は1億フラン(約114億円)に上る。
連邦政府が補助金の廃止を決めたのは今年9月。世界貿易期間(WTO)が2015年、20年までに農業輸出に関連する補助金を撤廃すると宣言したことを受けた。連邦政府は食品加工企業への補助に替わって、国内の牛乳・穀物製造者に対する特別な補助金を設けることを検討している。
また食品加工企業への代替措置として、関税法を改正し特定の乳製品やシリアルを輸入する手続きを簡素化する。
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WTOで迫られるスイスの「チョコレート法」改正
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収益の半分以上を国外で得るスイスは、国際貿易の制限的措置の撤廃や削減に肩入れする一方で、自国の農家を関税や多額の補助金によって保護している。これまでスイスの保守的な動きが世界貿易機関(WTO)に訴えられてこなかったのは、WTOの要求を巧みに回避してきたためだ。現在スイス政府が2019年に向けて準備している「チョコレート法」の代替案についても同様だ。
スイスほど政府が自国の農業を支援している国は少ない。そのために時折WTOの批判を受ける。食品輸出業者への補助金について規定する「チョコレート法」(農業製品の輸入・輸出に関する連邦法)もその一つ。例えば、チョコレートの原料となる国産牛乳の価格は国外に比べて高い。そうなるとチョコレートの販売価格も上がる。そこで、国内外の原料価格差を補整し、国際的に通用する製品価格を最終的に設定できるよう、国は原料用の牛乳と穀物について食品輸出業者に毎年約1億フラン(約114億円)の補助金を投じてきた。しかし、将来的に輸出の助成を全面的に禁じるWTOの農業協定に則り、スイスは2020年末までにチョコレート法の修正を強いられている。
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