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保安対策の3部作

保安の問題ほど、議論が絶えず、意見が分かれるテーマは今日少ない。世界中で政治家やマスメディアがこのテーマを取り上げている。西半球の選挙キャンペーンでは、保安が主要なテーマとなっている。

スイス人写真家マルク・ルノーさんは、ニューヨークの国際写真センターで勉強をしていた2002年以来、その心理的次元に焦点を当てている。アメリカ同時多発テロ事件後、ニューヨークが重々しい不安に満ちた雰囲気に変わっていったことをきっかけに、保安をテーマにした撮影プロジェクトを開始。最終的に3部作の写真集を作り上げた。

アメリカのストリートフォトグラフィーの影響を受け、ルノーさんはニューヨークで道と建物の境界線、つまり危険が阻止されるべき場所を撮影。そこで働く警備員たちを、中判カメラに収めた。

スイスに戻ったルノーさんは、ベルン、バーセル、チューリヒの3都市を結んだ三角形に焦点を当て、そこの保安の裏側を探った。麻薬中毒者たちがピストルで自殺するのを防ぐのはアメリカでは警備員の役割だが、ここでは青い照明が設置されている。

最後の第3部では、スイスでも起こりうる大災害を仮定した、いろいろな部隊の訓練がテーマである。ルノーさんはこのシリーズで、警察、軍、消防隊、民間救援隊が緻密に設定された状況の中で訓練する様子を撮影した。パノラマフォーマットで撮られた写真には、これからスペクタクルなショーが始まるという緊張感が感じられる。青い照明に照らされて、奇妙でいかにも作り物らしいテスト用の人形が見える。ケチャップのような赤い塗料で染められ、まるで出来の悪いホラー映画のようだ。第1部と第2部の場合と同様、ここで行われている訓練が、実際の災害現場で役立つのかという疑問はぬぐいきれない。

写真:マルク・ルノー、文:パウリーネ・マルティン

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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