スイスの視点を10言語で

スイスでもブルカ禁止の声が上がる

インターラーケンを散策する観光客。スイスでは全身を覆った女性はまだほとんど見かけない Keystone

イスラム教徒の女性が全身を覆う衣服ブルカの着用禁止を求める声が、スイスでも大きくなってきた。論争を煽っているのは保守派だ。

口火を切ったのはスイス民主党 ( SD/DS ) 党員でアールガウ州議会議員を務めるルネ・クンツ氏だ。

スイスでは問題なし

 アールガウ州議会は5月4日、クンツ氏が提出したスイス全国の公共の場でブルカの着用禁止を求める州イニシアチブ草案練り上げの動議を89票対33票の大差で可決した。反対を表明したのは社会民主党 ( SP/PS ) と緑の党 ( GPS/Les Verts ) のみだった。間もなく、同様の動議についてベルンとソロトゥルンの州議会でも討議される予定だ。

 しかし、実際にブルカはスイスでも問題になっているのだろうか。「なっていない」と断言するのはベルンのイスラム研究家ラインハルト・シュルツェ氏だ。シュルツェ氏はスイス通信社 ( SDA/ATS ) に対し、スイスではブルカを着用している人をまだ見かけたことがないと語る。

 「ブルカをめぐる議論はイスラム教のスキャンダル化であり、マスコミの一部が憂慮すべき影響を及ぼしている。イスラム教のある面を表面的な記事にすることはできるが、一般市民はそれによって簡単に現実とかけ離れた判断を下してしまう」

抑圧メカニズムの歯止めか、自由の制限か

 アールガウ州議会では、ブルカは「女性に対する男性優越の権力の象徴である」と咎められた。キリスト教民主党 ( CVP/PDC ) のローズマリー・ツァプフル元国民議会議員もこの見方には賛成だ。しかし
「ブルカは女性が強いられている差別の中の目に見える一部でしかない」
 とも言う。

 現在、女性関連団体の上部団体「アリアンスF ( Alliance F ) 」の会長を務めるツァプフル氏は
「その背後には、強制結婚や女性器切除などもっと重大な抑圧のメカニズムがあり、深刻な人権侵害が存在する」
 とみる。

 「ブルカ禁止でこれを阻止できるわけではないが、シグナルを送り『ここまで!』と言うことはできる。自分の意思でブルカを着用している女性に規制がかかってしまうが、それは仕方がない」

 だが人権擁護団体「アムネスティ・インターナショナル ( Amnesty International ) 」は、ブルカ禁止は妥当でもなければ女性の権利に一歩近づくわけでもないと、このような姿勢を激しく批判する。
「全面禁止は、自由意志でベールやブルカを着用している女性の宗教実践の権利、表現の自由を制限するものだ」

swissinfo.ch、外電

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部