2022年夏、ベルン州で燃料を補給するスイス軍の戦闘機
© Keystone /peter Schneider
スイス政府は25日、財政赤字を回避するための2024年度予算の削減案を発表した。昨夏に決めた防衛費の増額幅を大きくカットする内容に、議会からは反発の声が出ている。
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昨夏に連邦議会が決めた当初予算案は約20億フラン(約2800億円)の追加支出があり、政府は財政赤字への懸念を強めている。
追加支出の1つに、2030 年までに軍事費を年56億フランから70億フランに段階的に引き上げる目標に伴う支出増がある。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、スイスは軍事費を少なくとも国内総生産(GDP)の1%に引き上げることを目指している。
政府が25日に発表した予算修正案外部リンクは、軍事費の増加分を2024年は3億フラン、2025年は5億フラン、2026 年は最大8億フラン削減する内容だ。それでも現在に比べ軍事費は年3%増える。
2~3月に詳細案
国民党(SVP/UDC)のヴェルナー・ザルツマン議員は26日、ドイツ語圏のスイス公共ラジオ(SRF)で政府の決定は「摩擦が最も小さい道を選んだだけで、議会の決定を完全に無視している」と批判した。
上院安全保障政策委員会の委員長を務めるザルツマン氏は、政府の予算削減案は軍の近代化計画を遅らせ、今後数年間の調達計画を全面的に見直さなければならなくなると指摘。別の予算を削減するべきだと主張した。
政府が2月と3月に予算削減案の詳細を発表し、その後連邦議会で審議する。
政府の予算削減案は、2024年から欧州連合(EU) の研究開発支援プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」に対する年間6億フランの拠出の取りやめも盛り込んだ。2021年にEUとの枠組み条約交渉が決裂したため、スイスはホライズンに参加できなくなった。スイス政府はホライズン不参加の影響を緩和するための予算は確保し、研究資金が減ることはないとしている。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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