スイスの投票用紙。近い将来、より若い世代が手にすることになるのだろうか?
© Keystone / Christian Beutler
スイスで選挙権の年齢を現行の18歳から16歳に引き下げる案が連邦議会を通過した。実現には国民投票が必要だ。
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スイス国民議会(下院)は16日、賛成99票、反対90票、棄権3票で投票年齢の引き下げ案を可決した。
支持した左派政党は、選挙権年齢の引き下げは若者と教育制度への信頼に関わる問題で、若者に政治や市民生活により強く参画するよう奨励する効果があると主張した。
これに対して右派政党は、スイスの成人年齢が18歳であることを踏まえると、混乱を招くと反論した。例えば16~17歳の若者は投票はできるのに立候補できないことになる。
下院は2020年秋に、ジベル・アースラン議員(緑の党)の選挙年齢引き下げ案を可決。全州議会(上院)も可決したが、法案化を担当した下院の国家政策委員会が否決を推奨して本会議に送り返した。今回、再び下院で可決されたことで、同委員会が憲法改正案の作成に入る。憲法改正案は強制的レファレンダム(国民投票)の対象になる。
州レベルも試行錯誤
州レベルでは投票年齢引き下げの試みがあるが、これまでに成功した例は少ない。ヌーシャテル州とウーリ州は引き下げ案を否決した。16歳以上に州レベルの投票権を認めているのは、ランツゲマインデ(青空議会)で有名なグラールス州のみだ。
一方、少なくとも5つの州で引き下げに向けた動きが進む。
チューリヒ州は議会が昨年10月に引き下げ案を可決し、今年5月の住民投票にかけられる。ベルン州やジュネーブ州でも続く見通しだ。
隣国オーストリアは10年前に投票年齢を16歳に引き下げた。16~17歳の投票率が上の世代を上回るという成功例となった。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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