自由の制限は1年以上続く?スイスで長期化不安
スイスでは新型コロナウイルスの影響で国民への行動制限が長期間に及んでいる。すでに緩和は始まったが、国内では個人の自由の侵害を懸念する声が強まっている。
7日に公表された世論調査では、コロナ危機に対する考え方がだんだん3つの言語圏で似通ってきたことが分かった。
世論調査会社ソトモ外部リンクのミヒャエル・ヘルマン代表は「長期的に個人の自由が制限されるのではないかという強い不安が生じている」と話した。
ヘルマン氏は、個人の自由がさらに1年以上制限されると予想する回答者が増えていると指摘した。
この結果は、もっと楽観的だった4月の前回調査とは対照的だ。前回の調査では、ロックダウン(都市封鎖)が初夏には解除されるとの期待を抱く人が3割に上っていた。
コロナ危機がスイス経済にもたらす打撃への不安も高止まりしている。一方、感染による健康リスクへの不安は順位が下がった。
特大休暇を満喫?
コロナ危機に関する世論調査はスイス政府がロックダウンを決めた3月に始まり、今回が3回目。調査では人々がロックダウンにうまく対処している様子が浮かび上がった。
「要因の一つに、全面的な外出禁止令が出なかったことがあるのは間違いない。周辺国と異なりスイスでは外出が可能で、調査では実際に出歩いていることが分かった」(ヘルマン氏)
ヘルマン氏は、米国ではコロナ危機が世界恐慌のように扱われている一方、スイス人はどちらかと言えば特大休暇のように感じているようだ、と指摘する。
同氏は、コロナ危機が今後さらに深刻化する可能性はあるものの、スイスでは言語圏に関わらず多くの人が経済への影響を完全にはまだ意識していないとも話した。
これまでのところ、失業保険や社会保障制度の恩恵を受けている人が多い。
ロックダウン解除
回答者の多くは、連邦政府によるロックダウン解除計画を支持している。11日に予定される解除の第2弾では、全ての商店が営業を始め、小中学校などの義務教育が再開、公共交通機関が通常運行に戻る。
ただ入国制限は続き、1000人を超える大規模イベントも少なくとも8月末までは禁止だ。長期の国外旅行や、大衆の集まる音楽・スポーツイベントはしばらく絶望的だ。
言語圏の違い
ヘルマン氏によると、当初は言語圏によって回答に大きな違いがみられたが、今回は差が縮まった。特にドイツ語圏とフランス語圏の違いが小さくなった。
一方、欧州で感染が最も深刻だったイタリアに近いイタリア語圏では、規制に好意的でより緩やかな解除計画を求めている。
買い物客へのマスク着用、義務教育やレストラン・バーの再開に関しては、言語圏による違いが目立ち、スイスの連邦構造をよく反映している。教育や保健行政に関しては、26州に大きな裁量権がある。
連邦政府に対する信頼感は、実質的に変化がなかった。
前2回の世論調査に比べると、政府の方針に対する批判的見解はフランス語圏でわずかに小さくなった。
だがぎりぎり過半数は、コロナ危機中は政府が特別な権力を維持することを支持した。これは政府が議会や有権者の承認を経ずに緊急措置を講じる―といった権限を意味し、直接民主制の代表国とされるスイスにおいて、意外な結果と言える。
世論調査の詳細
オンライン調査で15歳以上の3万2485人から回答を得た。調査期間は5月2~5日。標準誤差は±1.1%。
調査はswissinfo.chの親会社であるスイス公共放送協会(SRG SSR)の委託を受け、世論調査会社ソトモが実施した。コロナをテーマにした世論調査は3月、4月に続き3回目。
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(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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