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軍支給の銃器による死亡事件で銃器規制論が再燃



今年、2011年には軍用の銃器による死亡事件が3件起こった

今年、2011年には軍用の銃器による死亡事件が3件起こった

(Keystone)

スイスは国民皆兵制。兵役終了後も自宅に銃器を保管することができる。しかし今月、立て続けに軍支給の銃器を使った射殺事件が起きた。これが火種となり、軍用銃器の保管規制を厳しくしようとする声が高まっている。

スイス軍が支給する銃器によって命を落としたのは21歳と23歳の若者だった。

 最初の事件の加害者は脅迫および、器物損壊罪の前科があった。次に起きたのは事故で、冗談で友人の胸に弾丸が入った銃を突き付け、引き金を引いた。そのとき加害者は自分が本物の銃器を手にしているということを知らなかったという。

 

 これらの事件後、管轄の州警察と司法当局はスイス軍と共に調査グループを結成した。危険人物と見なされた兵士が保有する銃器の没収を目的とし、現役の兵士の調査も含め、犯罪捜査における情報交換の方法を明確にするためだ。

 さらに、軍用銃器のみを所有する人が銃器取り扱い店や射撃協会で銃弾を購入できないようにすること、一方で軍が保有する銃弾の在庫管理とその安全性を高めることも話し合われている。

 スイスの現役兵は軍用の銃器を家庭で保管することが認められているが、銃弾の保管は通常許可されていない。警察は今回の2件の事件において、どのようにして銃弾が入手されたかを明らかにしていない。

 

 しかし、軍用の銃器を家庭で保管することを禁止するイニシアチブが成立し、スイス国民は今年2月に行われた国民投票でこれを否決したばかりだ。このことからみても今すぐに大きな変化が起こる見込みは少ない。

緊急対策はなく

 11月半ば、国民議会の安全保障政策委員会(SIK/CPS)は、訴訟事件が起き手続きが終了した後になって初めて、州司法警察が危険人物と見なされているスイス兵に関する重要な情報をスイス軍に渡していることを明らかにした。

 しかし、安全保障政策委員会は今すぐに緊急措置を取ることは困難だという認識のもとに、来年の年明けに州当局と連邦データ保護委員会のメンバーとこのテーマについて話し合うことを決定した。

 「スイス軍が2010年の夏以降、銃器乱用の危険を減らすことを目的に、対策を行っていることを連邦国防省(VBS/DDPS)を通じて連絡を受けている。最近の悲劇的な事件は2度と起きるべきではないというのが委員会のメンバー全員の一致した意見だ」と安全保障政策委員会は発表している。

 スイス軍の広報担当官、ダニエル・ライスト氏は、情報交換の活性化や弾薬購入の制限に向けた法改正が必要になるかどうかは政治家が決定することだと言う。「最終的にスイス人は国民投票を行い、大多数が自宅で銃器を保管するべきだと意思表示した。これはスイス軍の問題だ。我々は、この件に非常に注目しており、犠牲者に同情している。しかし、銃器の管理に責任を持つように促し、銃器を保有するとはどういうことなのかを人々に教えること以外、死亡事件を減らす手立てはほかにない」

 もし、今回の2件の事件でスイス軍の銃弾が使用されたのであれば、それは明らかに盗まれたものだとライスト氏は指摘する。

プライバシー重視か安全性重視か

 基本的人権に関わるNGOの広報担当であり、弁護士のヴィクトル・ギョルフィー氏は、軍と州警察当局との間でさらなる情報交換を行えるようにするには、法律の改正が必要になると言う。

 法律が改正されるには、まず一般に犯罪に関与している可能性のある人のプライバシー保護よりも、警察と軍が情報を交換することが重視されるようにならなければならない。

 「疑問に思うことは、警察は実際にどのような情報を得ているのか、その情報はどれだけ信頼できるのかということだ。また、ある人物が犯罪容疑をかけられている時点で警察は軍にその人物の情報を渡すのか、それとも容疑者に有罪判決が下った後に初めて情報を渡すのか。その際、どれだけ詳細にわたった情報を軍に渡すのかが問われてくる」とギョルフィー氏は言う。

 ライスト氏も警察がどの件に関して軍に情報を渡すべきかを明確にすることは「極めて困難だ」と強調する。「個人およびそのプライバシーを保護することと、社会にとって危険な人物を察知するという二つの事柄の間に線引きをしなければならないが、それは非常に難しいことだ」

 また、この境界を決定するのはそれぞれの解釈の自由で、警察と軍の情報交換の範囲が、犯罪行為に関係しているが、告訴はされていないという人にまで及ぶことは避けられないとギョルフィー氏は推測する。

「ある特定の人物が銃器を所有すべきかどうかを判断することは非常に難しい。その人がある犯罪に関わっていたか、有罪判決を受けたことがあるかいうことはある一面にすぎない。犯罪にこれまで関与したことがなくても危険な人物がいる可能性もある。事件が起きた後では遅いのだ」

軍支給の銃器による事故 2011年

5月24日、ベルン州、シャフハウゼン

39歳の警官が強制退去を行っている最中に射殺され、同僚の警官も負傷した。銃で撃った男は軍に罷免させられていたにもかかわらず、銃を保有したままだった。

11月4日、ヴァレー/ヴァリス州、サンレオナール(St Leonard)

21歳の女性がボーイフレンドと言い争った際に、軍の銃器で射殺された。男性は脅迫および、器物損壊罪の前科があった。

11月13日、ヌーシャテル州、ブードリー(Boudry)

2人の男性と1人の女性が銃の模造品で遊んでいたときに、男性1人が軍支給の銃器を持ち寄り、銃弾を装填(てん)した。女性はその銃器を模造品だと思い込み、もう1人の男性の胸に当て、引き金を引いたため、23歳の男性が死亡した。

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スイスの銃器事情

スイスに流通している軽量の銃器の数は120万丁以上と推測されている。

スイスでは毎年300件以上の自殺などを含む死亡事故に軍の銃器が関与しているといわれている。

今年2月には、銃器の使用に関する厳しい免許制度を導入し、自動小銃やポンプ連射式散弾銃の購入禁止を求めることを目的に銃器入手・保管を禁止する国民投票が行われた。

また、州別のシステムではなく、一括した銃の登録システムの構築や自宅での銃器保管の禁止が求められた。

このイニシアチブは2007年に数多くのNGOによって立ち上げられ、中道左派の社会民主党(SP/PS)が支持していた。

銃器保管禁止に対する国民投票の最終結果

賛成:43.7%

反対:56.3%

投票率:48.8%

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(英語からの翻訳、白崎泰子) , swissinfo.ch


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