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WTO次期事務局長は誰に?グローバルな課題へのスイスの視点

ブラジル出身のロベルト・アゼベトWTO事務局長が任期終了前に辞任する。次期事務局長は機能不全に陥っているWTOを危機から救い出せるのか? Keystone / Salvatore Di Nolfi
このコンテンツは 2020/07/25 08:30

史上最大の危機に直面している世界貿易機関(WTO、本部ジュネーブ)は、新たな指導者を必要としている。スイスは次期事務局長に、コンセンサスを構築し改革を推進できる人物を期待していると、スイスのディディエ・シャンボヴェーWTO大使は話す。

任期終了前に8月末で辞任するブラジルのロベルト・アゼベト現事務局長の後任候補者の最終リストが8日、決まった。

シャンボヴェー大使は、女性3人、男性5人の候補者(囲み記事参照)のうちスイスが誰を推薦するかまだ決まっていないという。候補者によるそれぞれの立場表明、質疑応答を踏まえ、スイスは他の加盟国164カ国とともに候補者を評価していく。

シャンボヴェー大使は、「困難な作業となるWTO改革を実行し、加盟国の意見に耳を傾け、コンセンサスを構築することのできる経営能力のある人材が必要だ」と話す。

またswissinfo.chの取材に対し、理想的な候補者は「政治的影響力」を持っている必要もあると話した。

WTO次期事務局長は誰に?

ロベルト・アゼベト現WTO事務局長の後任には8人が立候補している。女性は、ナイジェリアの元財務相ンゴジ・オコンジョ・イウェアラ氏、ケニアの前WTO大使アミナ・モハメド氏、韓国の通商交渉本部長ユ・ミョンヒ氏の3人。男性はメキシコの外務次官で元WTO事務局次長ヘスス・セアデ・クリ氏、エジプトの元WTO高官アブデル・ハミド・マムドゥ氏、モルドバの元外務大臣チューダー・ウリヤノフスキ氏、サウジアラビアの元経済相ムハンマド・マジアド・アルツワジ氏、英国の前国際貿易相リアム・フォクス氏の5人。

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信頼の回復

候補者は15~17日の一般理事会で演説や質疑応答を行った後、選挙運動期間に移る。加盟国は合意形成を目指して協議を進め、最終的に候補者1人を選定する。選挙運動期間は9月7日までだが、それまでに加盟国が新たな事務局長を選定できない場合、暫定事務局長が出される可能性もある。

リーダーシップのプロセスはどれほど重要なのか?ジュネーブ国際開発高等研究所(IHEID)で国際貿易法を専門とするヨースト・ポーウェリン氏は、「一方では、事務局長はそれほど大きな権限を持っていない」という。

「だが同時に、最近は誰もが、あらゆることにおいてコンセンサスを得られるかを知りたがっている。これは何か新しいこと、信頼を再構築するための第一歩になるかもしれない」

対立と改革

WTOが直面しているのは批判と改革への要求だけではない。トランプ大統領率いる米国は、WTO上級委員会(最高裁に相当)で新たな委員の指名を拒否することで、WTOの重要な機能である紛争解決処理を事実上麻痺させている。米国は上級委員会の「行き過ぎで」「無視した」WTOルールに不満を持っており、中国との取引では米国が不利な扱いを受けてきたと憤っている。貿易紛争を裁く7人の上級委員のうち現在残っているのは1人。上級委員会が機能するには最低でも3人の上級委員が必要だ。

欧州連合(EU)や中国を含む一部の加盟国は、暫定的な貿易紛争解決機能を設置した。他の加盟国と違いスイスには解決されるべき紛争案件がほとんどないにもかかわらず、スイスも参加している。これはスイスが多国間主義を重視していることの表れだとポーウェリン氏はいう。

「スイスは強力なWTOから多くの利益を得ることができる」。WTOをジュネーブに維持することも有益だという。「スイスにとってそれは最優先だ。IHEIDはスイス政府から資金援助を受けて、ジュネーブ貿易プラットフォームを立ち上げたばかり。国際貿易におけるジュネーブの重要性をアピールするのが一つの目的だ」(ポーウェリン氏)。

「スイスにとっての鍵」

シャンボヴェーWTO大使は、WTOの課題は今日の米国の姿勢だけではないという。

シャンボヴェー大使によると、スイスのWTO改革の優先課題は「電子商取引を含む新たなテクノロジーを考慮して」WTOルールをアップデートすることや、魚の乱獲や地球資源の枯渇につながる補助金問題への取り組み、「完全に機能する紛争処理機関の再構築」などだ。また、「全ての国が同じ柔軟性のある恩恵を受けるのではなく、開発レベルに応じて異なった待遇を受けるべきだ」として、開発途上国に特別に対応する新たなアプローチも必要だという。

WTOが適切に機能することは、国際貿易に大きく依存しグローバル化した経済を持つ小国スイスにとって不可欠だと強調する。

「スイスにとって、WTOが適切に機能し、開かれた貿易システムを維持できることは非常に重要。それはスイス経済にとって重要なことだ」

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