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「わたしは『車椅子の人』ではなく学生だった」

連邦工科大学ローザンヌ校が新築した素晴らしい外観のラーニングセンター。障害者も利用しやすいようにあとから改築されなければならなかった zVg

障害者は以前に比べて大学に進学しやすくなった。しかし、障害者基本法が施行されたとはいえ、まだすべてのバリアが取り除かれたわけではない。

このコンテンツは 2010/02/28 15:25

弁護士で元国民議会議員のマルク・F・ズター氏は、1972年から車椅子でベルン大学に通い、司法を学んだ。

自由に出入り

車椅子を担いで階段を上り下りし、講義室まで運んでくれた学友たちがいなかったら大学へは通えなかったと、ズター氏は当時を振り返る。だがその一方で、彼が障害者のより良い融和のために尽くそうと思ったのは、このような不便な思いをしてきたからだ。

「障害者基本法は、1995年にわたしが議会イニシアチブを提出したことがきっかけで生まれました。包括的な下準備を行い、同じように障害を持った法律家たちの助けを得て提出したものです」

この提案でズター氏は、車椅子の利用者だけでなく視聴覚などに障害を持つ人々がより生活しやすくなるような環境を作ろうとした。
「建物、設備、サービス施設や公共施設など、すべての人のために作られた場所へ自由に出入りできるようにしたかったのです」

1999年に発効した連邦憲法の中の障害者基本条項、第8条第2項と第4項の内容にもズター氏の提案が取り入れられた。
「もう一歩進んで訴権も組み入れたかったのですが、投票で否決されてしまいました」

「この憲法の規定のおかげで、障害者はもう自分たちの正当な要求を弁護しなくてもよくなりました。また、今日の社会は、実現できないことがあればそれを立証する責任を負っており、その点でも見通しが変わってきました。わたしたちは何も無理なことを要求しているわけではないのです」

総合的な結論を出すのは不可能

障害者の不利な立場を是正するための連邦法、障害者基本法が発効したのは2004年1月。これとともに、車椅子の大学生の前に立ちはだかるバリアは取り除かれるはずだった。
「障害者基本法導入から6年がたちましたが、その成果を全国的にまとめるのは無理です。なぜなら、障害者の機会平等の成否は州の政策にかかっているからです」
と言うのは、専門機関「障害の機会平等 ( Égalité Handicap ) 」の機会平等委員を務める車椅子利用者の法学者、オルガ・マンフレディ氏だ。

マンフレディ氏は、チューリヒ大学を非常に進歩的だと評価する。ここの大学規約には機会平等が盛り込まれているからだ。同大学にはまた、専門の相談窓口もある。
「障害のせいで教授から特別扱いをされた記憶はありません。わたしは学生であって、車椅子利用者ではなかったのです」

意識の欠如

だが、いつ、どこでもそうとは限らない。「障害の機会平等」のガブリエラ・ブラッター氏は、連邦工科大学ローザンヌ校 ( ETHL/EPFL ) が建てた新校舎の例を引き合いに出す。
「建築コンペでは外観が非常に美しい建物が選ばれましたが、残念ながら建物の部分部分をつなぐスロープが車椅子利用者にはとても急過ぎました」

そのため、完成後に苦情を申し立てなければならなくなった。ブラッター氏は
「合意に達するまで厳しい交渉が続きました」
と語る。
「本来なら、建築確認申請を提出した時点で、職務上、障害者に対する適性を検査するべきでした。しかし、これは今でも時折忘れられてしまうことがあるのです」

適合の難しさ

車椅子利用者に対してはほとんどの人が理解を示す一方で、精神的な障害を持つ人々が抱える問題に関してはまだまだ理解度が低い。マンフレディ氏は
「医師の診断書を添えても、どうにもならないこともあります」
と言う。

ブラッター氏も次のように補足する。
「視覚障害者も自分一人で自由に講義室へ行くことができなければなりません。聴覚障害者に対してはいわゆるインダクション・ネック・ループシステムを準備し、講師の声が補聴器や人工内耳 ( CI ) に伝わるようにするべきです」

さらに、さまざまな形で利用される教材も種々の障害に適合させなければならない。
「この問題に直面しているのは特に、言語障害、視覚障害、聴覚障害を持っている人々です」
とブラッター氏。視覚障害者は普通の講義テキストを読むことができないため、コンピューターで操作できるように学友にスキャンしてもらったりコピーしてもらわなくてはならないことも不満の一つだ。

ネックは試験

ところで、話すことができない唖 ( おし ) の人はどうやって口答試験を受けるのだろうか。「そのような人は試験を筆記で受けられるようにすべきです」
とマンフレディ氏は言う。

また、視覚障害者や全盲の人に対してはほかの人よりも試験の時間を長くし、さらに文章を読み上げてくれる自分のコンピューターを持ち込めるようにする必要がある。その際には、その音声がほかの学生の妨げにならないよう、障害者が別室で試験を受けられるようにしなければならない。
「これらの実現に向けて、障害者はまだ闘っている最中です」

だが、ズター氏にしてみれば、最大の問題は高等教育を受ける前にすでにある。
「大学や専門大学までどうやって進むのでしょう。問題はその前の段階なのです」

大学進学を促進するためには、まず国公立の学校や義務教育、中等教育への進学などにおいてさらなる改善が必要だとズター氏は主張する。
「なぜなら、重い障害と闘っている人々のほとんどは特別学校やホーム、あるいは保護下に置かれた作業場にいるからです。大学進学を遂げた人はもうすでに最大の難関を突破しているのです」

エティエン・シュトレーベル 、swissinfo.ch
( 独語からの翻訳、小山千早 )

統計

バーゼル大学社会福祉相談課のガウデンツ・ヘンツィ氏によると、2005年、バーゼル大学の学生のおよそ1割が慢性的な疾患を病んでいた。

うち2%は歩行、視覚、あるいは聴覚障害などを持っていた。

この数字は今日も変わらず、またほかの大学にも当てはまる。

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進歩

アールガウ州の成人向け大学入学資格取得学校ではパイロットプロジェクトが始まり、現在、複数のろう者が手話で講義を受けている。

ろう者には手話通訳が2人ついており、交代で講義を同時通訳している。

「通常」、ろう者は講義を読唇 ( どくしん ) しなければならず、多大な労力を要する。

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機会均等

1999年、障害者と非障害者の機会均等が連邦憲法に導入された。

2004年1月、障害者の不利な立場をなくすための連邦障害者基本法が制定された。

この法律は障害者を社会生活に参加しやすくするため、とりわけ自力で社会との接触を保ち、成人教育を受け、就職しやすくするための条件を整えるもの。

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