The Swiss voice in the world since 1935
トップ・ストーリー
スイスの民主主義
ニュースレターへの登録
トップ・ストーリー
ディベート
すべての議論を見る

台湾、財政、金利上昇… スイスのメディアが報じた日本のニュース

買い物客でにぎわうまち
買い物客でにぎわう銀座の街。巨額の政府債務を抱えていても人々が安眠できる理由は? Keystone/SWI swissinfo.ch

スイスの主要報道機関が12月10日~16日に伝えた日本関連のニュースから、①台湾巡る中国の主張には「欠陥あり」②日本が破綻しないのはなぜ? フランスとの違い③日本国債利回りが急上昇 どう備えるか、の3件を要約して紹介します。

先週号で、日中関係の緊迫についてスイスメディアの報道は比較的バランスが取れている、との私見を述べましたが、今週は中国の言い分にかなり批判的な論考がNZZに掲載されました。紙版では文芸面1ページを割いての大論考。外部識者の寄稿とはいえ、これがドイツ語圏の高級紙に掲載されたインパクトは大きいかもしれません。

「スイスのメディアが報じた日本のニュース」ニュースレター登録はこちら

台湾巡る中国の主張には「欠陥あり」

高市早苗首相の台湾有事をめぐる国会答弁以来、中国は経済・外交などあらゆる手段を通じて攻勢を強めています。ドイツ語圏の大手紙NZZに掲載された中国在住歴のあるスイス人社会学者、マティアス・メスマー氏による大型論考は、「中国の歴史的主張には欠陥がある」と分析しています。

メスマー氏は「中国の脅迫やボイコットよりもさらに深刻なのは、日本との対立のなかで既存の国際法を自国の目的に合うように作り変えようとする中国政府の試みだ」と解説します。在日本中国大使館は今月2日、高市氏が台湾の法的地位に関して言及したサンフランシスコ平和条約は「不法かつ無効」とX(旧ツイッター)に投稿しました。またメスマー氏は、中国が1943年のカイロ宣言や1945年のポツダム宣言を根拠に、台湾が中華人民共和国に返還されたと主張していると説明します。

そのうえでメスマー氏は「中国政府の主張はこの時点で揺らいでいる」と指摘。中華人民共和国が建国されたのは宣言や日本降伏の後の1947年であり、「国際法上、自動的に中華民国の法的後継国となるわけではない」。宣言に署名したのは毛沢東や共産党ではなく、中華民国総統の蒋介石だったと指摘します。「共産党員が自らの利益を実現するために長年かつての敵国と自身を同一視してきたという事実は、中国が歴史的事実を歪曲し国際法を道具化していることを如実に示している」

メスマー氏によると、中国メディアはさらに「ポツダム宣言によれば、沖縄を含む琉球諸島は国際法上の地位が『未確定』」という「虚偽の主張」を流布しています。同氏は、こうした中国の偽情報政策は「感情に訴えかけることと多義性に依拠し、中国の新帝国主義的かつ拡張主義的な野望に対する世界の無知を糧にしている」と描きました。

最後にメスマー氏は、中国が日米同盟の分断も狙っていると指摘します。そしてドナルド・トランプ米大統領が台湾独立に対して曖昧な姿勢にとっていることが、中国のこの目論見を増幅していると言います。「東アジアでは権力闘争が繰り広げられており、その掛け金は極めて大きい」(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

日本が破綻しないのはなぜ? フランスとの違い

フランス下院は9日、2026年度の社会保障予算案を僅差で可決。予算成立に道筋がついたものの、財政赤字の削減という目標からは遠のきました。スイスを代表する経済学者の1人であるチューリヒ大学のトビアス・シュトラウマン教授はNZZ日曜版で、フランスより多くの政府債務を抱える日本がなぜ財政破綻しないのかについて解説しています。

対国内総生産(GDP)比約230%の政府債務を抱える日本が破綻していないことを考えれば、同120%のフランスはまだ安心――そんな楽観論に対し、シュトラウマン氏は「日本との比較は非常に誤解を招きやすく、決して安心材料にはならない」と警告します。その根拠として同氏が挙げるのは次の5つです。

  • 日本は巨額債務国であるだけでなく、巨額債権国でもある」。債務総額から債権額を差し引いた純債務でみるとGDP比78%。フランスは純債務も約100%と高い
  • 日本は資産と負債を巧みに最適化する銀行のような仕組み」。貸借対照表上、負債は主に銀行準備金や国債など低金利の金融商品である一方、資産は国内外の株式や外債など高利回り商品として保有されている
  • 低コストでの借り換え」。日本は負債を過去30年の低金利時代に積極的に借り換えしたため、利払い費が小さい(対GDP比1.5%)。フランスも低金利時代に借り換えたが、その期間は日本の半分しかなかった
  • 債務返済の半分が『閉じたループ』の中で行われている」。発行済み国債の約半分は日銀が保有しているため、政府は日銀に利息を払うが、その大部分は日銀から還元される。フランスの場合、欧州中央銀行 (ECB)が保有するフランス国債の割合は低い
  • 自国通貨である円で借り入れができる」。緊急事態においては日銀が無制限に市場介入できる。一方、フランスで流通するユーロはECBに管轄されており、行動範囲は限られるため「経済的には外国通貨」

シュトラウマン氏はこれらの点を理由に、日本への投資家は安眠できるが、フランスの投資家はベッドサイドに睡眠薬を常備したほうがよいと勧めました。「そうすることでしか、真夜中に汗だくで目覚めてしまうことを避けられないだろう」(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

日本国債利回りが急上昇 どう備えるか

ドイツ語圏のニュースメディアgmx.chは、日本の財政問題に悲観的な記事が掲載されました。ドイツの金融メディアBörse am Sonntag外部リンクからの転載で、日本国債の利回り上昇に警戒を促しています。またスイス・ドイツ語圏の金融メディア、フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト(FuW)も、金利上昇に伴う市場の不安を指摘しています。

gmxの記事は20~30年など超長期債を中心に日本の国債利回りが歴史的水準に上昇していることを紹介。そのうえで「現在の状況において重要なのは、絶対的な水準だけでなく、ここ数カ月の上昇ペースだ」と強調します。これは「額の債務を抱える日本政府の借り換えコストがこれだけ悪化している」ことを示すからです。

さらに問題なのは「この流れに終わりが見えていない」ことだと言います。日本は巨額債務を抱えているにもかかわらず、さらに国債発行をせざるを得ない状況にあります。一方で不安定な金融情勢を背景に投資家需要は低く、世界的に多くの国債が発行されていることから、日本はより高いリスクプレミアムを提示しなければなりません。シュトラウマン氏の理論とは反対に「日本が長期的に非常に低い金利で債務返済を続けられるのか、それともさらに高い利回りを提示せざるを得なくなるのかという疑問を生じさせる」と警告しています。

日本の利回り上昇は世界の金融市場を揺るがしかねません。低金利の円を借りて高金利商品に投資する「円キャリー取引」が立ち行かなくなるからです。投資家が株・債券売りに走れば、金融市場の変動が大きくなります。そうした場合には中銀の介入も予想されるものの、「日本銀行は、事実上手遅れになってからしか行動しないことで知られている」。

記事は、こうした動揺が起きる可能性を測るのは難しく、不安を煽るのが本意ではないと念押ししつつ、「投資家は日本の状況とその潜在的な悪影響を認識する必要がある」と強調します。ただ具体的な予防策には言及せず、「利回り上昇が続く場合は、自らのリスクとポジション(持ち高)を管理・調整する機会ととらえるべき」との忠告にとどめました。

FuWは日銀の植田和男総裁が今月19日の金融政策決定会合での利上げを示唆したことを報じたうえで、それが「早めのクリスマスプレゼントというよりは脅威となった」と書きました。各種国債利回りが上昇したほか、円相場は高市首相による財政出動や日中関係の緊迫ともあいまって「主要通貨のなかで最もパフォーマンスが悪い通貨になった」と説明します。

しかしこうした懸念をよそに、日本株式相場は好調です。デフレマインドからの脱却や高市氏の積極財政、企業収益の改善、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化を背景に、EUなど外国人投資家も日本株投資への関心を高めているといいます。

ただ日本円が低金利通貨から脱却するなか、キャリー取引として魅力があるのはスイスフランだけになりました。日銀が利上げすればさらに円高・フラン安へと急転する可能性も。このため記事は「スイスの投資家は常に通貨リスクを意識しなければならない」と注記しています。(出典:gmx外部リンクFuW外部リンク/ドイツ語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

日米が共同飛行訓練外部リンク(12/11)
日本沖でまた地震外部リンク(12/12)
スマートウォッチに記録されたクマ襲撃外部リンク(12/12)
推しと結婚したベルギーの夢女子外部リンク(12/13)
上野のパンダ返還へ 50年ぶり不在に外部リンク(12/15)
ファミマ靴下が観光客に大人気外部リンク(12/15)
世界首位から無名リーグへ 女子サッカーの凋落外部リンク(12/16)

話題になったスイスのニュース

スイス人の親を持つエクアドル人女性、ガブリエラ・プルチェルトさん(36)。スイスの大学で学び資格も取りましたが、スイス国籍がないために国外退去を命じられています。

スイスのルール通りエクアドルに帰るしかないのか、事情を汲んで滞在を許可されるべきなのか。各言語で大きな反響を呼んだ記事は、日本語でも多く読まれました。

おすすめの記事
ガブリエラ・プルチェルトさんは親戚たちよりも長くスイスで暮らしてきたにもかかわらず、この国を去るよう求められている

おすすめの記事

在外スイス人

スイス人の親を持つ女性が国外退去の危機に

このコンテンツが公開されたのは、 スイス人の親を持つガブリエラ・プルチェルトさんはエクアドルで育った。そのころから、スイスの価値観やスイスのチーズに憧れ、いつかスイスで勉強したいと思っていた。そして、16年間スイスで過ごした今、国外退去を命じられている。スイスの「赤いパスポート」を持っていないからだ。

もっと読む スイス人の親を持つ女性が国外退去の危機に

週刊「スイスメディアが報じた日本のニュース」に関する簡単なアンケートにご協力をお願いします。

いただいたご意見はコンテンツの改善に活用します。所要時間は5分未満です。すべて匿名で回答いただけます。

≫アンケートに回答する外部リンク

次回の「スイスメディアが報じた日本のニュース」は12月24日(水)に掲載予定です。

ニュースレターの登録はこちらから(無料)校閲:大野瑠衣子

人気の記事

世界の読者と意見交換

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部