スイス連邦裁判所(最高裁)は10日、法律上の婚姻関係にある夫婦に対する不平等税制の改善を求めた2016年の国民投票について、これを無効とする判決を下した。スイスの直接民主制の歴史で、連邦レベルの国民投票が無効と判断されるのは初めて。
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16年の投票では法律婚の夫婦に課せられる税金が、事実婚よりも重くなる不均衡(通称「結婚罰」)を是正する改正の是非が問われた。キリスト教民主党が提起したイニシアチブ(国民発議)だったが、反対票50.8%の僅差で否決された。
政府は当時、該当する法律婚の夫婦を8万組と説明していた。だが昨年、実は45万4千組の誤りだったと発表。これを受けて、キリスト教民主党は政府が誤った情報に基づいて投票キャンペーンを展開したとして、投票結果の無効を求め提訴した。
連邦裁判所は10日の声明で、連邦政府は有権者が投票行動を決めるために必要な正確な情報を提供しなかったと述べた。
声明では「不完全で透明性に欠ける情報が政府から出されたことによって、投票の自由が侵害された。投票結果が僅差であったこと、著しく不規則な事態だったことを鑑みると、投票結果が異なるものになったという可能性はある」とした。
判決を受け、キリスト教民主党は政府に情報政策の改善を求めたうえで「今日の判決は、スイスの有権者の政治的権利を後押しするものだ」と評価した。
連邦政府は、詳細な判決文が出た段階で今後の対応を検討するとしている。
関係者は、政府と議会が法改正に向けた対案を出し、イニシアチブが結果的に撤回されるのではないかとみている。
史上初
連邦内閣事務局によると、連邦裁判所が投票結果の無効判決を下したのは、スイス近代史上初めてのことだ。
08年に法人税改革をめぐる国民投票の結果取り消しを求める訴えに対して、最高裁は「投票のやり直しは法的な安定性を損なう」として棄却した。
19世紀にさかのぼると、下院が暴力・脅迫を理由に1854年のティチーノ州の選挙を無効と認めた例外部リンクがある。
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