スイスで1970年代まで、国の児童養護制度により貧しい家などの子供たちが家族から引き離され、引き取られた先の農場や養護施設で過酷な労働を強いられたり、性的虐待を受けたりしていた問題で、連邦政府の補償制度の申請が3月末で締め切られた。司法省によると、8800人が申請した。
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは70年代まで、国の児童養護制度により、貧しい農村部や家庭環境が劣悪であるなどの理由で、子供たちが行政に強制的に「保護」され、養護施設や里親の下に送られた。しかし、引き取られた先の農場や施設で過酷な労働を強いられたり、性的虐待を受けたりしていた。
これらの子供たちはドイツ語で「Verdingkinder(奉公に出された子供たち)」と呼ばれた。欧州人権条約批准後の81年、ようやく制度が廃止された。21世紀に入り、メディアで大々的に取り上げられるようになり、国会議員や国民がさまざまな発議を立ち上げた。
2010年、当時の連邦司法相が内閣を代表し、被害者に初めて公式に謝罪。国は被害者一人当たり最高2万5千フラン(約280万円)の補償金を支払うことを決め、16年9月、連邦政府が総額3億フランに上る補償制度を公表した。連邦司法省によると、生存する被害者は1万2千~1万5千人に上るとみられる。
司法省によると、制度は1981年以前に被害を受けた人が対象で、3月末までに申請手続きを済ませることになっていた。今年5月、高齢者や病気を抱えた申請者から優先的に支払いが始まる予定。
おすすめの記事
おすすめの記事
奪われた幼少期
このコンテンツが公開されたのは、
ベルンの政治フォーラム「ケーフィクトゥルム」にて開催中の展覧会で、25人のポートレート写真が展示されている。スイスの写真家ペーター・クラウンツァーさんは、これらの写真を通じて「捨てられた子供たち」の過去を語るとともに、スイスの暗い歴史の一側面に光を当てる。
もっと読む 奪われた幼少期
swissinfo.ch/fh
おすすめの記事
スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦運輸省民間航空局(BAZL/OFAC)が3日発表した2023年の航空安全報告書によると、民間・小型航空機の事故件数は9995件と、前年から24%増加した。
もっと読む スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
おすすめの記事
「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦裁判所(最高裁)は先月26日、チューリヒ地方裁判所の判事の1人に対し、気候活動家に関する裁判への関与を禁じる判決を下した。この判事が過去の裁判で活動家への団結心を見せたとして、考え方に偏りがあると結論付けた。
もっと読む 「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
おすすめの記事
スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は25日、2023年の名目賃金は1.7%上昇したと発表した。インフレ(年平均2.1%)に相殺され、実質賃金は0.4%低下した。
もっと読む スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
おすすめの記事
製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの大手製薬ノバルティスは22日、2025年で任期満了となるヨルク・ラインハルト取締役会長の後任に、ジョバンニ・カフォリオ氏を選出すると発表した。
もっと読む 製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出
おすすめの記事
スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着
このコンテンツが公開されたのは、
エジプト考古省は21日、約30年前に盗まれ国外に流出したラムセス2世像の頭部破片が同国に到着したと発表した。
もっと読む スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着
おすすめの記事
スイス議会、G7のロシア資産追及チームへの参加を否決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国民議会(下院)は17日、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)の資産を追及する主要7カ国(G7)の国際作業部会には参加しないことを決めた。
もっと読む スイス議会、G7のロシア資産追及チームへの参加を否決
おすすめの記事
米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
このコンテンツが公開されたのは、
米政府高官は14日、イランによるイスラエル攻撃の前後に、米国は利益代表国であるスイスを通じてイランと接触していたと述べた。
もっと読む 米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
おすすめの記事
チューリヒ春祭りの雪男、強風で燃えず 歴史上初
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒの春祭り「セクセロイテン」が15日開かれた。巨大な「雪男」を燃やして夏の天気を占う恒例行事は強風により中止となった。
もっと読む チューリヒ春祭りの雪男、強風で燃えず 歴史上初
おすすめの記事
スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス政府は10日、「大きすぎて潰せない(TBTF)」銀行に関する規制改革案を発表した。UBSと他の「システム上重要な銀行」3行は、破綻時のスイス経済への影響を抑えるためにより厳しい資本要件を課される必要があると述べた。
もっと読む スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ
おすすめの記事
新種のイカの化石、名前は発音が難しいスイスドイツ語に
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州の約2億4200万年前の地層から新種のイカの化石が見つかり、「Chuchichäschtli(クッヒカーシュトリ、スイスドイツ語で『食器棚』)」と名付けられた。
もっと読む 新種のイカの化石、名前は発音が難しいスイスドイツ語に
続きを読む
おすすめの記事
スイスの「官製強制労働」補償制度、6千件の手続き終える
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで1970年代まで、国の児童養護制度により貧しい家などの子供たちが家族から引き離され、引き取られた先の農場や養護施設で過酷な労働を強いられたり、性的虐待を受けたりしていた問題で、連邦司法警察省司法局(FOJ)は、国の補償制度に申請のあった約6千件の手続きを終えた。補償制度には9千件超の申請があり、年内にすべて終了する予定という。
もっと読む スイスの「官製強制労働」補償制度、6千件の手続き終える
おすすめの記事
スイスで最も嫌われている公的機関「児童・成年者保護局」を訪問
このコンテンツが公開されたのは、
2013年に新設された公的機関「児童・成年者保護局(KESB/APEA)」。国内ドイツ語圏のメディアによる否定的な報道が災いし、この後見局は人々の目の敵にされるようになってしまった。実際、同局ではどういった業務が行われているのか。
もっと読む スイスで最も嫌われている公的機関「児童・成年者保護局」を訪問
おすすめの記事
スイスで最も嫌われている公的機関「児童・成年者保護局」
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの公的機関の中で最も批判され、また最も嫌われているのは、2013年に設立された専門機関「児童・成年保護局」だ。一部の市民は同局に異議を唱えるために国民発議に乗り出した。
もっと読む スイスで最も嫌われている公的機関「児童・成年者保護局」
おすすめの記事
幼少時代を奪われた「工場労働の子どもたち」
このコンテンツが公開されたのは、
産業化の時代、スイスの子どもたちは工場で過酷な労働を強いられていた。しかし児童労働がスイスで比較的早く禁止されるようになった背景には、政界の異端児の働きかけがあった。
もっと読む 幼少時代を奪われた「工場労働の子どもたち」
おすすめの記事
スイス下院、「奴隷」にされた子供たちへの補償を可決
このコンテンツが公開されたのは、
被害者たちは、補償を求めたイニシアチブ(国民発議)を立ち上げている。下院は今回、政府が提出した同イニシアチブへの対案を可決した。 イニシアチブでは、5億フラン(約560億円)の補償基金の設立が求められている。一方、政…
もっと読む スイス下院、「奴隷」にされた子供たちへの補償を可決
おすすめの記事
奴隷になった子供たち、背景には社会の貧困も
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは過去に、行政保護措置として強制的に家族から引き離され奉公に出された子どもたちがいた。その過ちを償うため、スイス政府は、賠償手続きを進めている。当時の児童養護制度に関しては、冷酷な行政当局、搾取する里親などを語る被害者からの証言に注目が集まるが、それを生み出した社会的背景である貧困問題が触れられることはほとんどない。
もっと読む 奴隷になった子供たち、背景には社会の貧困も
おすすめの記事
スイスの里親制度 改善の歩みは遅い
このコンテンツが公開されたのは、
「里親に委託される子どもたちは、ネグレクト、空腹、身体的・性的虐待など、ありとあらゆるつらい経験をしてきている。 子どもたちが必要としているのは安心できる環境なのに、今の制度ではそれが保証できない」 これは、子どもの…
もっと読む スイスの里親制度 改善の歩みは遅い
おすすめの記事
児童保護 素人任せにできないと専門家が判断
このコンテンツが公開されたのは、
ここに一つの例がある。警察はあるプール施設で5歳の子どもを保護し、後見担当局に連絡。男の子はもう母親と養父のいる家には帰りたくないと話し、実父と一緒に暮らしたいと訴えた。 その直後、その子の法定代理人(両親が離婚係争…
もっと読む 児童保護 素人任せにできないと専門家が判断
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。