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再生可能エネルギーvs化石燃料


エネルギーシフトには税制改革が必要か?




スイスで排出される温室効果ガスは年間約5千万トン、一人当たり6.7トンに上る (Keystone)

スイスで排出される温室効果ガスは年間約5千万トン、一人当たり6.7トンに上る

(Keystone)

スイスでは3月8日、現行の付加価値税(日本の消費税に相当)を「エネルギー税」に置き換えるという提案を巡り国民投票が行われる。提案の目的は化石燃料の消費削減だが、他党からの支持はなく、提案支持派は孤独な戦いを続けている。

 石油、天然ガス、石炭などの化石燃料の使用は、世界中で気候変動や大気汚染といった深刻な問題を引き起こし、未来の世代に大きな負担を残している。

 スイスでは30年ほど前からエネルギー政策の転換をめぐる議論がなされている。現在、スイスのエネルギー需要の66%は化石燃料でまかなわれており、再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオガス)はわずか2%だ。

 2011年の福島原発事故を受け、スイス政府は向こう30年間の新エネルギー政策「エネルギー戦略2050」を策定した。その基本方針は「段階的脱原発」と、省エネ・再生可能エネルギーの拡大による化石燃料の消費削減だ。

 現在、この政策に基づき多くの法案が審議されているが、「スイスは正しい方向に向かってはいるものの、進み方が遅すぎる」と中道派である自由緑の党は主張する。同党はそこで、スイスのエネルギーシフトを加速させる目的で、大幅な税制改革を求めるイニシアチブ(国民発議)を立ち上げた。

 その内容は、今後5年間で現在の付加価値税を撤廃し、その代わりに枯渇性エネルギー(化石燃料やウランなど)の生産または輸入に課税する「エネルギー税」を導入するというものだ。 

 エネルギー税の導入で、暖房やガソリンの価格が上がるため、その結果クリーンなエネルギーの競争力が強まると訴えている。

付加価値税は誤った課税制度?

 「政府のエネルギー新戦略では、数えきれないほどの規制や、税金、助成金の導入が検討されている」と、自由緑の党マルティン・ボイムレ党首は言う。

 「だが、我々の提案する税制では問題を一気に解決できる。付加価値税は(徴収する)政府だけでなく、(納める側である)企業30万社の重荷になっているが、エネルギー税はこうした面倒な税務作業も減らせる」

 ボイムレ党首によると、エネルギー税が導入されれば、外国へのエネルギー依存も減らせるという。

 スイスは外国から年間130億フラン(約1兆6632億円)以上の石油と天然ガスを輸入している。だが、再生可能エネルギーが推進されれば、クリーンテック産業が発展し、スイスの競争力が高まり、また数千人の職も生み出されると主張する。

 「もともと付加価値税は間違った税金だ。企業が生み出す付加価値、つまり、スイス経済の強みでもある『革新』に対する課税だ。遠い国から輸入される化石燃料に課税する方がよっぽど妥当だ」

経済の混乱を招く

 スイス政府は自由緑の党のイニシアチブに反対の立場を示しており、国民投票では否決を呼びかけている。一方で、エネルギー消費量と二酸化炭素(CO2)排出量の削減を実現するには化石燃料の値上げが不可欠だと認めている。

 だが、年間約230億フランの収入をもたらす付加価値税を廃止すれば、その減収を埋め合わせるために化石燃料への課税率をかなり高く設定しなければならない。エヴェリン・ヴィトマー・シュルンプフ財務相は、例えばガソリンは1リットル3フランまで値上げする必要があると指摘している。

 そのため、エネルギー税は付加価値税に比べると、低所得世帯により打撃を与え、またスイスの産業界も国際競争力に大きな影響を受けかねない。

 今回の提案ではその対策として、エネルギー消費量の多い産業セクターを例外的にエネルギー税免除の対象にできるとしている。

 スイス政府は、エネルギー税を導入すれば中長期的に「経済の混乱」を招くと見ており、国の税収の35%を占め、安定した財源となっている付加価値税の撤廃に強く反対している。

 政府はエネルギーシフト推進のため、2021年までに、化石燃料の課税率を引き上げるなどの制度を導入する予定でもある。まだ完全に具体化していないこの政策をめぐっては、議会での政党間のせめぎ合いが予想される。

不安定な資金源

 ところで、議会でエネルギー税導入案を支持しているのは、同じく環境保護派の緑の党1党のみだ。緑の党は、以前に似た内容のイニシアチブを提起したが、01年に77%の反対で否決されている。

 その他の政党は、エネルギー税は実際には適用不可能だと見ている。エネルギー税導入案では化石燃料への課税収入に頼ることになるが、化石燃料は徐々に排除されていく見通しのため長期的に安定した財源を確保できないというのがその理由だ。

 右派や中道派は、エネルギー税は産業界の将来を脅かし、また経済の流動性を妨げると主張する。

 「スイスは京都議定書のCO2削減義務をはるかに超えている」と言うのは、スイス国民党のアルベルト・レシュティ議員。「これ以上スイスだけが先に進むことはできない。ましてや、気候変動に大した影響を与えない上、スイス経済を弱めるだけのエネルギー税を導入するなどあり得ない」

 左派は、エネルギー税による社会的影響を理由に挙げ、付加価値税の維持を支持している。

 社会民主党のエリック・ヌスバウマー議員はこう話す。「新しいエネルギー政策を進めるには、化石燃料の値上げは避けられないだろう。だが、それだけではなく、再生可能エネルギーを奨励するような制度も必要だ。付加価値税のような安定した収入源を国から取り上げるのは危険だ。これは社会保険の貴重な財源でもあるからだ」

エネルギー浪費にペナルティーを課す

 これに対し自由緑の党のボイムレ党首は、「我々は他党の20年先を行っているかもしれないが、今は行動を起こす時だ」と批判を一蹴する。「エネルギー税は、国にとって安定した財源になりうる。化石燃料の消費が減れば、税率を上げさえすればいい。そして100年後に化石燃料が尽きたとしたら、その時は他のエネルギーにも課税すればいい。他のエネルギーも多少は環境に影響を与えているのだ」

 また、エネルギー税を導入すると同時に付加価値税が廃止されるため、企業や一般家庭の負担が増えるわけではないと、ボイムレ党首は主張する。「不利益をこうむるのは化石燃料の大量消費者だけだ」

自由緑の党のエネルギー税導入案

3月8日の国民投票にかけられるエネルギー税導入案の内容は、現行の付加価値税を5年以内に撤廃し、代わりに、枯渇性エネルギー(化石燃料やウランなど)の生産や輸入に対して課税する「エネルギー税」を導入するというもの。

提案では、導入当初は、エネルギー税による収入が付加価値税廃止直前の5年間の平均税収額に相当するよう税率を設定する。その後は、税収が国内総生産(GDP)に対して一定の割合に達するよう再計算する。また、スイスの国際競争力を維持するため、大量にエネルギーを消費する産業部門への税金免除、また、グレーエネルギー(製品の製造や使用時に消費するエネルギー)への課税もできるとする。

さらに、エネルギー税による収入のうち5%が健康保険料軽減などを通して低所得世帯に還元されるとしている。

スイスの環境税

スイスでは、エネルギー政策の目標を達する目的ですでにいくつかの環境税が導入されている。暖房などに使用される化石燃料の生産と輸入に課される「炭素税」は、税収の3分の1が省エネ計画に、3分の2は国民に還元されている。

電力の輸送コストにも課税されており、税収は再生可能エネルギーで作られた電力を送電網に送る際の補助金として使われる。大型車両、鉱物油も課税対象。

数年前よりガソリンなどの運輸用燃料への課税も幾度となく検討されているが、現在まで議会で多数派の中道派と右派によって否決されてきた。


(英語からの翻訳・編集 由比かおり), swissinfo.ch

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