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ぼくの目標

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チューリヒ連邦工科大学を卒業後、執筆した電力業界の自由化についての論文は専門家や一般向けのマスコミからも注目され、素晴らしい将来を約束するスイスの大手発電会社にも就職した。しかし、スイスでの生活を一旦中断し、日本企業に自分のキャリアを掛けた若いスイス人がいる。

このコンテンツは 2008/07/15 12:01

研修生として日本の伝統ある家電・産業機器コンツェルンで1年間働く間に、日本の企業の良さを知ったというイヴ・コロディさん ( 28歳 ) は8月中旬、まずは3年の予定で再び日本に渡ることにした。

swissinfo : 尼崎の会社で研修生としての研究成果を発表した時、あなたの上司はとても驚いたと聞いています。

コロディ : 高圧変圧器から出る磁場についての研究成果を発表しました。チューリヒ連邦工科大学 ( ETHZ ) で学んできたことの延長線上にある研究です。それを発表したので、周囲はびっくりしたのでしょう。研究成果もさることながら、わたしが同僚との対話を求め、良い関係を築こうとしたことが特に驚かれたのだと思います。ヨーロッパの研究者にありがちな、外部との関係を閉ざし孤立して仕事をしなかったことが良かったのでしょう。

ETHZでは勉強ばかりでした。同期の学生270人のうち、専門課程に進めるのはたった70人です。何を学んだかが評価されるのではなく、ほかの人より成績が良いことが評価される制度です。わたしが見る限りですが、日本の大学生はいろいろなことに時間があるようですね。会社に入ってから、再び職業教育を受けているようです。スイスでは新入社員でも即戦力としてある程度の期待をもたれますから。

swissinfo : スイスに戻ってから研修した日本の会社との長いやり取りがあって、今回の就職が決まったそうですね。

コロディ : 決定まで時間がかかったのは確かです。日本の会社としても外国人を雇うことは一種のリスクです。一方、わたしの希望ははっきりしていました。博士号をとることです。会社で研究をしながら論文をいくつか書き、日本の教授にそれを提出し、最終的に博士論文を書き上げ博士号を取る。それを3年間で終えることです。

swissinfo : 博士号を取るためにわざわざ日本の企業に働く必要はなかったのでは?

コロディ : 実はETHZで博士論文を書くより、あちらの方が環境条件は良いのです。研修生だった時の経験ですが、日本では同僚や上司にいろいろなことを教えてもらいました。わたしが理解することを周囲も望んでいて、忍耐強く教えてくれました。こうした環境は非常に良いと思います。グループで成果を出そうとしているので、お互いが対抗することはありませんでした。

確かに、年収は4割ほど少なくなります。いや、この点についても、会社もわたしの希望に大きく譲歩してくれたと思っていますし、日本では普通の生活をするに十分でしょう。

そもそも、仕事に大きな目標を持つことが自分にとっては一番大切だと思っています。研究の成果がもたらされ、会社の名前と自分の名前で論文が発表されれば、両者にとって有意義です。論文を書き上げること、経済面での基盤があること、日本の大学の教授に紹介してもらえることという3つの希望を満たしてくれるのが今回の職場だと思ったのです。

swissinfo : 研修生として働いた同じ職場で、契約が1年ごとの更新という条件はありますが、社員として働くことになったわけですね。

コロディ : 研修での体験ですが、組織としての規則が厳しい会社です。研修時でも、直属の上司を飛び越えて話をすることはありませんでしたし、座る席の順番さえも、部長が向こう側にいて、その隣にその下の人が座るといった具合。ぼくは、その列から外れて座っていましたが。会社の寮でも厳しさは同じで、例えば外泊する場合は報告しなければならないなど、決まりが多くありました。わたしはこれが悪いといっているのではありません。こうした日本の企業の組織や従業員の関係は、会社と従業員の両者にとって持続的であり、良いことだと思います。

ヨーロッパでは効率と結果が重視され、成果がないと解雇の圧力がかかります。一方日本では、理解するのに時間が必要な人にはある程度時間が与えられるという印象を持ちました。ゆっくりの人も受け入れるのは社会主義的ともいえるので、良し悪しですが。

swissinfo : 日本のサラリーマンは働き者だと評判です。そんな中で働くことに不安はありませんか?

コロディ : 残業は、研修生のときは要求されなかったことですが、今回はどれほど要求されるでしょうか。欧州では仕事と生活のバランスということがよく言われます。仕事の効果を上げるため休暇を取るという考え方です。わたしが日本でヨーロッパのように休暇を取ったら、効率のためだと考えてくれるかは疑問です。この点については、日本の会社にとって問題になるかもしれないですね。

現在働くスイスの企業は、将来を約束する職場です。高給ですし福利厚生も手厚い。しかし、今回就職が決まった日本の会社は、国際的に業務を展開し、エリートが働いているという点で魅力的です。

swissinfo : 日本での仕事や研究が将来にどのような役割を果たすと思いますか?

コロディ : 仕事面では、わたしの目標である博士論文が書けるという魅力があります。プライベートでは「バブル効果」があると思います。常に新しいことを学んでいくので、日常が楽しくなるはずです。例えば1度だけの経験ですが茶道や武道にも興味があります。神社仏閣で埋まっている京都や、神戸も大好きです。こうした3年間を経れば、万が一論文が完成しなくとも、今後のキャリアアップにつながります。

日本の会社の従業員は、会社の商品は自分たちが作った商品だという意識があり、当然のことながらその商品を深く理解しています。本当の意味でのプロの集団です。そういう環境の中へ外部から入ってくるわたしのような者も受け入れ、一丸となって商品をよりよくしていこうとする環境はベストです。そうなれば理想だという意味も含めて。

いずれにせよ今回は、わたしが関わって開発したという記録が残れば十分です。これがあれば、将来、条件の良い就職口も期待されます。スイスの企業も一度こうした経験をした人を外国に派遣してきました。わたしが日本で3年間働く時期は、わたしの人生のあるひとこまとして見たいと思います。

swissinfo、聞き手 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

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