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アフリカ不法移民の本国送還協定批判される

メツラー司法警察相と連邦難民局長がアフリカから戻る Keystone

メツラー司法警察相が連邦難民局長とともにアフリカ諸国を訪問し、ナイジェリア、セネガルと移民を本国へ送り返す協定を結び波紋を投げている。

伝統的に寛容な難民政策をとるスイスも急増する難民・移民への国民の不安が広がっている。

スイスは昨年11月に国民投票で国民党が提案した事実上の「難民拒否」法案が小差で否決された。しかし、この国民の不安に答えて連邦難民局はアフリカ諸国と個別の協定を結ぶ作業を始めた。

協定の内容

セネガルとの協定は二国間だけでなく、難民申請を拒否された西アフリカ周辺諸国出身の身元のはっきりしない者は、まずセネガルへ送り返し、それからそれぞれの出身国へ引き渡すという斬新な内容である。

批判の理由

これを受けて、セネガルの地元新聞は「セネガル、スイスの警察役引き受ける」と報道し、セネガルが近隣諸国から非難されないか危惧している。アムネスティー・インターナショナルなどのNGOも一旦、アフリカへ送り返された移民の人権が守られるかを懸念している。

スイス政府の言い分

連邦難民局長のジェルベール氏は「新しい手順の方が人道的であり、帰した人々の安全が確かめられる」という。多くの西アフリカ諸国はスイスに大使館がなくてもセネガルの首都ダカールにはある。そこで、セネガルでの再入国調査にスイスが協力することで人権も守られるという。

国連高等難民弁務官の反応

広報官のルパート・コルビル氏は本当の難民が強制送還されるようなことばなければ、「難民システムの乱用を防げるかもしれない」という。だが、「この協定は世界でも稀でかつ複雑なのでどう機能するか見てみなければならない。スイスが最後まで責任を負うのはよいことである」と付け加えた。ただ、現在欧州全体で移民や難民に対する風当たりが厳しいのは確かで、他の難民への影響を懸念している。

スイス難民受け入れ状況

連邦難民局の発表によると2002年の難民申請者は2万6千人。近年ユーゴスラビア人が圧倒的に多く全体の14%を占めたが申請は前年度比で26,5%増えている。うち、アフリカ大陸出身者はここ4年間で40%も増えてた。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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