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イギリス人はほろ酔い気分でゲレンデへ?

「アルプスを訪れるイギリスの若者は、アルコールと標高の高さと寒さが重なったときの怖さを知らない」とイギリス領事館 Keystone

「ハッピーアワー」を楽しむイギリスの若者と油断禁物のアルプスをミックスすると、危険なカクテルができあがる。こんなスローガンを掲げた安全キャンペーンをイギリス政府が繰り広げている。

このコンテンツは 2010/02/05 15:25

現在、ジュネーブ空港やスイスの各スキーリゾートには「死を移されないように! ( Don’t catch your death ) 」と大きく書かれたポスターが貼られている。

若者が集まる場所へ

これらのポスターは、スキー休暇でスイスへやって来るイギリスの若者に暴飲のリスクへの注意を喚起するためのもの。だが、当のリゾート地ではアルコール消費はあまり問題視されていない。

「酔っ払いを探すのではなく、山の上で大量に飲酒したときのリスクをもっと人々に知ってもらいたいと思っているのです」
と言うのは在ジュネーブ、イギリス領事館の副領事だ。

このキャンペーンは昨年、クリスマス休暇が始まる直前に、スイス、フランス、イタリアで同時にスタートした。この冬、アルプスで休暇を過ごすイギリス人は3カ国合わせて100万人に上る。

スイスでは、ヴァレー/ヴァリス州ヴェルビェ ( Verbier ) の村でイギリスのツアー代理店が所有運営する休暇用シャレーやホテルにポスターが貼られた。また、ベルン州のヴェンゲン ( Wengen ) やグリンデルワルト、ミュレン ( Mürren ) などユングフラウ地域のロープウェーやスキーリフトの乗り場のほか、ジュネーブ空港に降り立った客も数多くのポスターに出迎えられている。

副領事は
「正確に地域を特定することは重要ではありません。予防が目的であり、気温が低いとどのような影響が出るのか、標高の高い場所で飲酒すると体がどんな風に反応するのか、ということをあまりよく理解していなさそうなイギリスの若者がたくさん集まる場所をターゲットにしています」
と説明する。

このキャンペーンはもともとフランスの在リヨン ( Lyon ) イギリス領事館が考え出したもの。それをスイスとフランスの警察、各観光局、イギリスのツアー代理店、ジュネーブ空港、フランスのサヴォワ ( Savoie ) とオートサヴォワ ( Haute Savoie ) 、イゼール ( Isère ) およびRhône ( ローヌ ) にある各空港が支援している形だ。

事件が連発

キャンペーン実施のきっかけは、暴飲による死亡事件や大きな事故が発生したことだという。イギリス領事館によると、昨年アルプス地域で事故に遭ったイギリス人は30人以上に上り、うち半数は25歳以下だった。死者の数も多く、その理由は高所での飲酒のリスクを過小評価していたためだと考えられている。

イギリス外務省が2005年に公表した調査結果では、25歳以下のスキーヤーおよびスノーボーダーの3分の1が、標高の高さとアドレナリンとアルコールがミックスされたときのトラブルを国外で経験している。

このキャンペーンには、2009年1月、学校の休暇中にフランスのリゾート地バルディゼール ( Val d’Isère ) で事故死したイギリスの学生レイチェル・ウォードさんの事件が大きくかかわっている。ダラム大学に通っていた20歳のウォードさんは帰宅途中で道に迷い、浅い川に落ちたあと体が冷え切って凍死した。

その後スイスでも、クリスマス前に23歳のイギリス人観光客マイルズ・ロビンソンさんがヴェンゲンの山で事故死する事件が起こった。遺体を解剖した結果、100メートルの絶壁を転落したとき、ロビンソンさんはかなりの量のアルコールを消費していたことが明らかになった。

また、1月下旬にはフランスのスキーリゾート地モルジヌ ( Morzine ) で、夜に外出した16歳の少女の行方が午前4時以降わからなくなり、村人が総動員で捜索したこともあったと前出の副領事は語る。

高所での飲酒は通常よりアルコールの回りが速く、酔うとますますアルプスの環境に対応できなくなり、気温が零下になると特に危険が増すという。副領事は
「スイスの人々は山での行動の仕方を知っていますが、イギリス人は寒さに関する知識がなく、また標高の高い場所で体がどのように反応するかということも知りません」
と説明する。

問題なし

だが、スイスの有名リゾート地のほとんどは、イギリス人観光客が飲酒問題を抱えているとは考えていない。ユングフラウ地域をカバーしているのはラウターブルンネン ( Lauterbrunnen ) のベルン州警察だが、広報担当官ユルク・モジマン氏は
「わたしが知る限り、暴飲はここでは問題になっていません」
と言う。

「警戒は必要ですが、さほど大きな問題ではありません」
と同調するのは、ユングフラウ地域観光局のウルズラ・ミュラーマン副局長だ。
「もちろん、バーが閉まったあとに路上にたむろしている人もいます。でも、それは普通でしょう。また、休暇中にはビールも普段より1本多く飲んでしまうもの。ですが、極端というわけではありません」

ヴェルビェでも同じような意見が聞かれた。あるバーの経営者は
「イギリス人は確かに飲兵衛だという評判が立っていますが、度を越しているわけではないと思います。それに、今は換算レートが悪く、イギリス人にとって『ハッピーアワー』というわけではなさそうです」
と語る。

ヴェルビェ観光局のピエール・イヴ・ドゥレーズ副局長は、町中にポスターを貼ることをあまり快く思っていない。それでも、休暇シャレーやホテル用にとイギリスのツアー代理店にポスター100枚を配った。
「いかにもヴェルビェが問題を抱えていると言いたげなこのポスターをいたるところに貼りたくないのです。問題などないのですから。これはよく分からないキャンペーンですよ。『家政婦国家 ( 過保護な福祉を行っている国家 ) 』はこうやってすべてをコントロールし、保護したがるのでしょうか」

サイモン・ブラッドレー 、swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、小山千早 )

アルコールをめぐるスイスの状況

15歳から75歳のスイス人のうち、推定26万人が定期的に過度の飲酒をしている。

約30万人がアルコール依存症、もしくはその危険性があるグループに属している。

1日平均5人がアルコールに関わる問題で入院しており、そのほとんどが若者。

交通死亡事故の6件に1件は飲酒運転が原因。

連邦内務省保健局 ( BAG/OFSP ) によると、アルコールに起因する疾患の医療費は年間65億フラン ( 約5600億円 ) に上る。

2006年の公式データによると、イギリスの男性は1週間に平均18.7ユニット ( ビール9パイント・約5ℓ ) を消費。女性は9ユニット ( ワイン1本 ) 。
*ユニット:アルコール飲料の単位。1単位はアルコール8gを含む。1ユニットはビールなら小ジョッキ弱、ワインでグラス1杯弱。

16歳から24歳のイギリス人の約3人に1人が週に最低1回は「無茶飲み」をしている。

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スキーと飲酒 イギリスの世論調査より

最近イギリスで行われた調査によると、イギリスのスキーヤーの4分の1近くが、知らず知らずのうちに前夜の飲酒のアルコールが抜けないままスキーをしている。

旅行保険会社「モア・ザン ( More Than ) 」の調査によると、イギリスのウインタースポーツファンの23%は、朝、7ユニットのアルコールがまだ血液中に残ったままスキーをし始める。

この数字は、飲酒運転と認められる最低ラインのほぼ倍に相当する。朝、このコンディションで滑り出したスキーヤーの血中アルコールが4ユニットにまで下がるのは早くて午前11時。

1072人のスキーヤーとスノーボーダーを対象に行った調査では、74%が前夜の暴飲は翌日のスキーにまったく影響しないと感じている。

45%がウインター休暇中には毎晩お酒を飲むと計画しており、前夜の暴飲が原因でスキー中に大きな事故を起こしても、保険の支払いには関係がないと思っている人が31%に上る。だが、これは間違い。

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