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キノコ狩りに行こうよ ~森の恵みを探しに~

食用?毒キノコ?秋の森をにぎわすキノコたち。 swissinfo.ch

霧がよく立つ秋は、森の中もいくらかひんやりして、黄金色に変わった葉もしっとりと目に映ります。そんな秋の森をにぎやかにしているのは、あちこちからニョキニョキと顔を覗かせるキノコたち。そう、スイスでも秋はキノコ狩りのシーズンです。

 ある日のこと、近くの森を散歩していると、自転車に乗ったおばあさんが私を追い越したかと思うとすぐにブレーキをかけ、あっという間に自転車を降りていそいそと雑木林の中に入って行きました。その手にはビニール袋とナイフが・・・。なにごとかと見ていると「キノコを採っているんです」と、おばあさんはまるで悪戯を見つかった子どものようにはにかみ笑いをしながら教えてくれました。

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 よく見ると古い大きな切り株に茶色のキノコがこんもりと生えています。「これはハリマーシェ(Halimasche/ナラタケ)というキノコで、オリーブオイルとニンニクで炒めるととっても美味しいんです。オイル漬けもおすすめです」と、早速おばあさんのキノコ談義が始まります。

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 私はもちろんのこと夫もキノコには疎いのだと話すと、彼女は残念がって「私はイタリアのチロル地方の出身だけど、スイス人もキノコのことはよく知っていますよ。子どもの時から夏は木の実を摘んで、秋はキノコ狩り。何十年間もやっているけど、この通りちゃんと生きているからこのキノコも大丈夫!」と話し、満足気に去っていきました。

 おばあさんのお墨付きだとは思っても、その時はなかなか手が出なかった森のキノコ。後日、キノコ狩り初心者の夫が唯一判別できるという傘のような形をした、その名も「パラソール(Parasol/カラカサタケ)」に遭遇し、家に持ち帰って(恐る恐る)試食することにしました。マッシュルームのような癖のない味ですが、キノコの旨みがぎっしり詰まった濃厚な森の味わいに思わず舌鼓。食料品はお金を出して買うことが当然という生活の中で、ともすると忘れがちな「自然の恵み」という大切な言葉をキノコたちが思い出させてくれた気がします。

 とはいえ、やはり知識のない人にはキノコ狩りは怖いもの。そんな時は市町村が行っている無料のキノコ鑑定サービスを利用することができます。市町村によって期間はまちまちですが、チューリヒ市では8月20日から11月15日まで。また、チューリヒ州ではキノコ保護の目的から毎月1日から10日までの期間のキノコ狩りを禁止、採取量も1日1人あたり1キロまでと決められています。こうした最低限のルールを守りつつ、残り少ない秋を楽しみながら森の恵みを探しに出かけたいものです。

中村クネヒト友紀

2007年にスイスに移住。現在ドイツ人の夫と2歳の長女と共にチューリヒ州に暮らす。職業、翻訳者。趣味は染織、キャンプ、山歩き。近頃は子どもを通じてスイス人と知り合う機会が増えて嬉しいものの、スイスドイツ語には悪戦苦闘中。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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