ゴットハート・トンネル閉鎖の影響

火災後のゴットハート・トンネル内、10月31日。 Keystone

アルプスを貫通する欧州南北を結ぶ主要幹線ルートのゴットハート・トンネルは、10月24日のトラック2台の衝突・炎上による火災以来閉鎖されている。トンネル閉鎖の影響は、交通渋滞だけでなく経済から環境汚染にまで及んでいる。

このコンテンツは 2001/11/21 09:56

アルプス山脈を抜けるトンネル道路といえば、スイスのゴットハート・トンネルと仏・伊間のモンブラン・トンネルだった。が、モンブラン・トンネルが91年のトンネル火災以来閉鎖されているのに続きゴットハート・トンネルも通行止めとなってしまい、ドライバーらはより狭くカーブの多いサン=ベルナルディーノ峠街道(グラウビュンデン州とティチーノ州間)でのアルプス越えを強いられている。サン=ベルナルディーノ峠街道では、ゴットハートの代替ルートにあてられた当日、慣れないドライバーが事故を続発、こちらも一時通行止めになったため、今ではグラウビュンデン州警察が時間制で一方通行にしている。さらに19日から、道路交通当局が事故防止措置として、サン=ベルナルディーノを通行するトラックは車間距離150mを厳守する規制を設けたため、サン=ベルナルディーノ・トンネルの入口には何百台ものトラックが列を作って待っているという凄まじい光景になっている。

狭いトンネル
定期的にスイスの北部から南部へゴットハート・トンネルを通って食品を輸送していたスイスの運送会社プランザーのトラック運転手ティモシー・ジェンキンスさんは、トンネルでの事故は当然のことと次のように語った。「ゴットハートに入って行く時は、いつも恐怖を感じていた。長距離ドライバーは誰でも恐怖を感じていた。片側一車線の二車線対抗トンネルなんて、大型の運転手にとって恐くないはずがないでしょう。」。が、ゴットハート・トンネルが閉鎖された今、代替ルートのサン=ベルナルディーノは、もっと条件が悪い。こちらのトンネルも片側一車線の上、ゴットハートのような緊急避難路がない。それでも他に選択肢がないため、通常サン=ベルナルディーノのトラック通行量は一日500台程度だったのが、今では4000台以上になっている。

超過費用は価格に上乗せ
サン=ベルナルディーノ峠街道はゴットハート峠街道より長い。そのため、ガソリン代と運転手の時給が余計にかかる。このしわ寄せは、消費者に行く。スイス運輸協会ASTAGは、超過費用を顧客に負担させるようアドバイスしているからだ。「過去のケースでは、運送会社が超過費用を負担していた。が、今回は運送会社を利用する顧客に負担してもらう。1回の輸送につき約200スイスフランだ。」とASTAGのカイザー・スポークスマンはいう。カイザーさんは、さらに「長期的にはアルプスを越えて運ばれた物、特に果物、野菜は値上がりすることになるだろう。」と述べた。

大気汚染
ゴットハート・トンネル閉鎖は、経済的な影響だけにとどまらない。グラウビュンデン州当局によると、トラックの通行量が激増したことにより大気汚染が著しく悪化、特に大気中のばい煙が激増しているという。人体への影響は必至だが、州当局もゴットハートの通行が再開されるまでは為す術が無いとしている。大気汚染に関しては、ゴットハート周辺の住民から汚染防止のため鉄道への振り替えを望む声が上がっている。が、事はそれほど簡単には進まないのが現状だ。

鉄道への振り替え
1992年の国民投票で、国内を通過するトラックを全部鉄道に乗せる案を可決された。これは、トラックの積み荷を電車に積み換えるというのではない。トラックごと列車に乗るトラック積載車輌のことだ。現在、ゴットハート鉄道トンネル路線とベルン州とヴァリス州を結ぶレッチュベルク・トンネル、ダボス付近にも1カ所、トラック用のものと一般車輌用のものがある。が、この構想は実現にはほど遠く、国内のトラックの80%、国外からのもの20%以上が従来通り道路を使用しているのが現状だ。

国連のInternational Road Unionのガイ・ウィリス報道官は、計画が進まないのは欧州に問題があるとしている。ウィリス報道官は「少なくともスイスはトンネル掘りを開始した。が、独や伊など他の欧州諸国は工事する場所すらない。また、鉄道会社は伝統的に旅客用の車輌開発に集中してきて、貨物列車の開発は怠って来た。そのため、欧州の貨物列車は平均時速18キロだ。」という。したがって、前述のジェンキンスさんのようなドライバーにとっては、トンネルの入口で延々と待ったとしても、道路を通った方が速いわけだ。さらに現場の声として、ジェンキンスさんは「スイスの鉄道トンネルは低すぎてトラックで入れない。」と証言する。そして、「もしもドイツかイタリア、オランダにトラック積載車輌の駅があり、通常のスピードが出る列車なら、トラック運転手は皆利用するだろう。」と述べた。

ベルギーに司法協力要請
一方、ティチーノ州は10月24日のトンネル火災で最初に衝突し炎上したベルギーの運送会社のトラック運転手の遺体からアルコールが検出されたため、ベルギーに司法協力を要請した。

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