スイスの視点を10言語で

ジュネーブ:平和のための町

ジュネーブ出身の赤十字の創始者アンリ・デュナンのノーベル平和賞受賞100年を記念して、ジュネーブで11月9日まで世界平和展が開催されている。

「ジュネーブ:平和のための町」は、1901年にアンリ・デュナンが第1回ノーベル平和賞を受賞したのを記念し、ジュネーブが世界平和のためにいかに貢献してきたかを検証するイベントだ。「ジュネーブ市民はこのような栄誉ある町の住民であることを誇りに思うべきなのだが、ほとんどの人がこの重要性に気付いていない。世界の他のどこよりも、ここジュネーブで平和と国際協力のコンセプトが発展し、今後もそれが続くだろう。」とジュネーブ大学経済社会科学部長のピエール・アラン教授はいう。

が、このレマン湖の西の端に位置する小さな町が、なぜ世界の人道と平和の中核となってきたのだろうか?今回のイベントを企画したロジャー・デュランドさんは、「それはジュネーブが常に独立を保ってきた小さな町で、スーパーパワーに脅かされたことがないからだ。また、ジュネーブには昔から国際都市としての伝統がある。16世紀カルヴァンがこの地に居を定め、迫害された宗教改革者らを歓迎した時代から、ジュネーブには寛容と救済の伝統がある。」という。ジュネーブの国際平和と人道都市としての位置付けは、赤十字活動が始められ、ジュネーブ条約が締結された事で決定的となる。この条約で、人類史上初めて多くの国が戦時の残虐性を緩和する事に合意したのだった。

イベント開催中の11月9日まで、スイスで2番目に大きいBalexertショッピングセンターでは、平和都市ジュネーブの役割に貢献してきた重要な出来事、人物、組織80件に関するパネルが展示されている。ジュネーブを象徴する世界的なキャラクターといえば、何と言ってもアンリ・デュナンだろうが、他にも国連欧州本部をジュネーブに置くことに貢献した歴史学者ウィリアム・ラッパード、第2回ノーベル平和賞受賞者で国際平和ビューロー総裁エリー・デュコムン、ナチス政権下のドイツからジュネーブに亡命した歴史学者ルートヴィッヒ・クィッデなどがいる。また、国連欧州本部、赤十字国際委員会本部と付属博物館、アンリ・デュナンの生家、国連難民高等弁務官事務所、軍民主管理センター本部など、市内43カ所の歴史スポットを巡る3つの観光コースも設定された。

さらに、アラン・ジュネーブ大教授は、2日間の討論会「正しい平和とは何か?」を企画、パレスチナのエドワード・サイド氏、イスラエルからは元和平交渉団員のヨッシ・ベイリン氏、米国からはスランレー・ホフマン氏らが出席する。

米同時多発テロからアフガニスタンでの戦争が始まり、ジュネーブが危機解決の最前線となるかもしれないとの意識が高まりつつある。「が、一般市民は、ジュネーブの持つ役割を全く認識していない。前回(1986年)の国連加盟を問う国民投票で、ジュネーブ市民の過半数は反対票を投じた。」とデュランドさんは一般市民の認識の低さを憂える。「我々はジュネーブの先人達が果たして来た国際的な使命の後継者だ。我々は我々の責任を果たし、我々の子供達と未来に引き継がなければならない。」とデュランドさんは語った。

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部