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スイスに進出する意味 王子製紙とイルフォード

40万平方メートルの敷地に季節になると牛が放牧される(写真提供:D.MICHON)

コストが他国より高い。EU非加盟国である。言葉が通じない。そんな難点をもカバーしうる魅力があるスイスの企業もある。日本の王子製紙は2005年7月、インクジェット用紙の高い技術を求めイルフォード・イメージング・スイツァランド(以下イルフォード)を買収した。

高い技術を持ちながら資金難にあったイルフォードを日本の王子製紙がインクジェット用紙関連部門を買収することで、両者の利害が合致した。

 1879年、英国でフィルムメーカーとして創立したイルフォード。130年間の社史上、スイス国内の資本や英国、米国の資本などが参入し、何度かオーナーが交代した。今回は日本から経営陣が直接イルフォード本社(マーリ(Marly)/フリブール州)に赴任し、これまでにはあまり行われなかったという技術交流も進められる。昨年8月に最高経営責任者(CEO)として就任した浦西公義氏(うらにしきみよし/51歳)に聞いた。

swissinfo : イルフォードはその高い技術で世界に認められていますが、十八番であるインクジェット用紙にはどのような特殊技術が必要ですか。

浦西 : 紙にはいろいろな種類がありますが、製紙業界での仕分けで情報用紙という分野の中に液体の染料で印刷するインクジェット用紙や熱に反応して印刷する感熱紙が入ります。インクジェット用紙は、土台となる厚紙の加工の仕方によって2種類に分かれます。原紙の表面を磨き上げただけの汎用のキャストベースと、光沢があるRCベースと呼ばれるものがあります。

RCベースはフォトインクジェットとも言い、写真のプロが主に愛用しています。イルフォードはRCベースのインクジェット用紙の開発では、発色の質において、また、厚紙を加工する際に多層のコーティングを一度に施せるといった高い技術があるのです。

swissinfo : 製紙業では日本最大の王子製紙が買収した大きな理由は、その技術に魅力があったからですね。

浦西 : そうです。RCベースの製品開発に優れていることのほか、イルフォードのブランドとしての価値、製品に競争力があることが主な理由です。技術的なコラボレーションも期待しています。つまり、製紙一筋の王子製紙とフィルムメーカーから出発したイルフォードという違った歴史を持つ2社が、将来、需要が伸びると期待できるインクジェット用紙を共同で作るということです。

swissinfo : スイスは、他国と比較しコスト高であるため、日本企業がスイスへの進出をちゅうちょするといった面があると思います。特に大量生産型の製紙会社は常にコスト削減を強いられているはずですが、スイスでもコスト削減の計画はありますか。

浦西 : 人件費などスイスはコストが高いという心配は、もっともです。王子製紙の基準としてみれば、イルフォードはコストがかかり過ぎていることも確かです。今後、競争に勝つため、最終的にはコスト削減を検討していかなければならないでしょう。

ここには優秀な技術者がいますので、技術開発はここで行うつもりではいますが、別の面でコスト削減の可能性を探っています。たとえば、原紙はスイス国外から購入していますが、将来は王子製紙が作った原紙を調達することも考えられます。

いずれにせよ、今、力を入れようとしているのは、インクジェット用紙の市場を拡大することです。消費者が、デジタルカメラや携帯電話で撮ったイメージをモニターで見せ合うだけではなく、それを手軽にプリントして見るように仕向けるためにスイスからメッセージを発信する必要があります。

swissinfo : スイスがRCベースのインクジェット用紙の技術開発の中心になるということですが、インクジェット用紙にはこれ以上の技術を施す可能性が残っているのでしょうか。

浦西 : 質で見ると今の紙は限りなく理想に近くなってきたと思いますが、まだ向上する余地は少しあります。そのちょっとした差に各社の競争があります。また、紙に機能を持たせることについて言えば、まだ研究開発の余地が十分あります。たとえば、プリントアウトの速度を上げる、いつまで経っても色があせない、消してまた使える紙、画像を拡大しても質が落ちないといった「夢のような紙」です。そういった技術を将来はスイスの技術者と一緒に、開発していければと思います。

swissinfo : 以前、ドイツ、米国などに駐在されていたとのことですが、スイス人と仕事をしていくためのコツはありますか。

浦西 : 昨年8月に赴任したばかりですので、詳しいことは言えませんが、スイスの技術者は自分たちの技術に誇りを持っていると感じます。アイディアには独自性があり、わき目を振らずに特化したものに集中するという姿勢を評価しています。

どこの国で働いても、その国の人と日本人との違いは感じます。しかし、気持ちの持ち方によって、スイス人との関係も違ってくると思います。買収では、王子製紙が資金を出して、イルフォードを救ったという面がありますが、わたしたちは今回、イルフォードの技術を教えてもらいたいと思って来ました。

お互いの優れたところを認め、それに頼ることで、人ははじめて新しい何かにチャレンジできると思うのです。人、部門、子会社、本社同士で頼りあいチャレンジしあうことで、グループとして強くなりたいですね。

swissinfo、聞き手 佐藤夕美(さとうゆうみ) 

補足情報

Ilford Imaging Swizerland GmbH
1879年 Ilfordが英国で創立 
その後ルミエルー(仏)、テクロ(スイス/1935年創立)が参入。
1969年 製薬会社チバが各社を買収しチバ/イルフォードとなる。
1989年 インターナショナルペーパー(米)が一部を買収。
1997年 ダグティ・ハンソン(英)が参入。
1998年 チバ/ノバルティスが撤退。
2005年 インクジェット用紙部門を王子製紙が買収。白黒フィルムはハーマン・テクノロジー(英)が買収。

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キーワード

<イルフォード>
従業員 430人 日本からの派遣社員CEOを含め3人
売上 1億5000万フラン(約136億円)
輸出 98%
<王子製紙>
従業員 1万8634人
連結売上 1兆2350万円(2005年4月〜18年3月末)
世界拠点 33カ所

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